2009-11

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70年代末のストーンズ=2=

☆ 本稿は下記初出に色々付け加えて作成している。

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☆ 『Sticky Fingers』から『Exile On Main Street』を経て『It"s Only Rock"n"Roll』に至るストーンズは極めてアーシーでいわば暑苦しいロックをやっていた。この暑苦しさは米南部やジャマイカの泥臭さをストーンズなりに解釈したものであり,毀誉褒貶あるがキースのジャマイカは60年代半ばのジョージ・ハリソンのインドのようなものであったような気がする。

☆ ミック・テイラーは居場所がなくなったというより,こうしたフロントマン本位のストーンズのあり方に嫌気が差したのだろう。最近ユーチューブでテイラーがスライドを弾く「ブラウン・シュガー」のヴァージョンを幾つか聴いたが,ストーンズがこの泥臭さを纏わり過ぎたあたりからテイラーはグループを離れる気になったのではないか。彼がストーンズに残した最後の傑作は『It"s Only〜』収録の「Time waits for no one」の美し過ぎるソロであるが,この曲のクレジットが取れなかったことが恐らく最後の引き金になって彼はグループを抜けたのだと思う。

☆ ロン・ウッドはミック・テイラーよりは控え目で,良く考えると在籍期間の長さではブライアン・ジョーンズやミック・テイラーの数倍になった時にもまだ「新加入」扱いされてもそつなくいなしていた。これは彼がミュージシャンエゴのない人だからではなく,彼自身の人となりなのだろうと思う。とはいえ『It"s Only〜』のタイトルは彼にインスパイアされたことでもわかるように,ストーンズ(の音楽)との相性はもともと良かったのかもしれない。

=続く=

テーマ:Musical_Adrift - ジャンル:音楽

70年代末のストーンズ=1=

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☆ 『Black and Blue』の重さ,『Some Girls』の軽やかさ,『Emotional Rescue』の軽さ。この三作(最初二作の間に『Love You Live』を挟むが)を経てストーンズは凄い勢いでシェイプアップしていったのだと思う。

☆ 70年代のストーンズは,キースを中心としてミック・テイラーの脱退などのスキャンダル的要素を別にすれば,『ベガーズ・バンケット』を基点とするよりブルージィな重いロックの路線を走って来た。ロックという音楽が一ミュージシャンやバンドによって切り開かれる時代はビートルズの解散とキング・クリムゾンの登場で幕を閉じ,その音楽自体が持つ多様性が開花する10年となった。80年代以降の一部のロック評論が捉え損なっているのはこの「多様性」の評価であり,ロケンロールの本家帰り的な「グラムロック」や「パンクロック」もまた表現の多様性という現代音楽共通の特質(ロックだけでなくジャズを見ればもっと明白)と軌を一にする。

☆ ストーンズにとっての「本家帰り」は,かつてジャガーとリチャーズが出会った時のような黒人音楽(のトレンド)回帰であり,猥雑でレイシズムをあからさまにして(それはいうまでもなく「黒人差別」が罷り通っていたあの時代のアメリカへの痛烈な皮肉でもある。それを誤解して無益な論争を引き起こす者は退場を推奨する)物議を醸し,最終的にストーンズを「自立」させた『Sticky Fingers』以降の70年代は黒人音楽との「距離感」をテーマとしたものだった。

=続く=

テーマ:Musical_Adrift - ジャンル:音楽

弔意なんかない,ただ思うだけだ。

☆ マイケル・ジャクソンの訃報は,午前7時に飛び込んだ。NHKのニュースだった。その時点で彼の死亡を確認したわけではなかったが,ぼくは確信した。これは訃報なんだと。

☆ これから便乗商売や著名人無名人音楽ファン業界人芸能人そのほかのコメントが花束代わりに手向けられることだろう。日本のどこかに献花台ができるかもしれない。それはそういうことだから仕方ない。彼はマイケル・ジャクソンとして生まれ,親の引いた(強いた)スター・システムに乗っかり,やがて独立し有能なプロデューサーと組み「世界を一時制した」。その代償として,彼は人生を奪われ,人格と私生活を奪われ,レゾン・デートルを奪われた。

☆ マイケル・ジャクソンが「マイケル・ジャクソンに所属する全てのもの」から,自分自身を遠ざけさせていたことは,ありがちなスター・システムの悲劇として類型化されるだろう。かつてフランキー・ライモンが辿ったように,あるいはジミ・ヘンドリックスやジム・モリソンやジャニス・ジョップリンやエルヴィス・プレスリーが辿ったように。そしてお決まりの「悲劇の伝説」が偶像化を極大させるだろう。

☆ そんなことではない。と叫ぶのは簡単だ。だが反面,等身大の彼など彼自身が捨て去ろうともがいていたものを探し回って穿(ほじく)り出しても,そこには風すら吹かないだろう。骨もなければ乾燥した砂粒すらないだろう。

☆ ぼくはただ思うことしかできない。彼はもうここにいない。それが彼にとって夢だったのか夢から覚めたことだったのか,ぼくには遂に分からないだろうが。

☆ あとはほかの人が勝手に騒いでいても,背を丸め,その脇をすり抜けていくだけのことだ。やがて次の「ニュース」が持ち込まれるまでの間。。。。。

テーマ:Musical_Adrift - ジャンル:音楽

「Definitive Gaze」 (Magazine 1978年)=3=

リアル・ライフ(紙ジャケット仕様)リアル・ライフ(紙ジャケット仕様)
(2007/06/27)
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☆ アルバムヴァージョンはメッセージを簡略化するため,ギターとキーボードの作り出す渾沌は控えめになっている。ギターは時にバックでリズムを刻むかと思えば,いきなり正面に出てきてフレーズを弾く。キーボードはイントロでテンションを高めた後,一気に華やかに展開する。それをしっかり支えるベースと正確なドラムスが否が応でも散漫に成りそうなキーボードを引き締める。この1分余りの長いイントロに曲の世界が凝縮され,そこに抽象的な歌詞が短く添えられる。



I've got this bird's eye view
and it's in my brain
clarity has reared
its ugly head again
so this is real life
you're telling me
and everything
is where it ought to be

I like your nerve
I like watching you
but I don't watch what I'm doing
got better things to do
so this is real life
you're telling me
now I'm lost in shock
your face fits perfectly

☆ 音楽の手法としては,パンク由来の極めてタイトな部分とプログレ由来の長く複雑な部分が絶妙にブレンドされている。間奏の展開が長く続いてもそれに続く歌詞は最早存在せず,そのままコーダへとなだれ込んでいく。それは「再現性のある音楽」としてのロック的な手法を駆使しながら,極めてデザイン的でもある。この音楽はパンクの領域から離れ,プログレッシヴ・ロックよりも同時代的で「モダーンな音楽」の態様を示し出した稀有な作品なのである。

☆ 2009年に「再生産」されたマガジンのステージを「YouTube」で見ることが出来たのは僥倖である(なにせ一度も来日しなかったから)。たぶんその半分はノスタルジイの類であっただろう。でも,30年経ってこの音楽がちっとも古びていないことを自分は確認できた。それは良い事の少なかったこの連休の数少ない慰めになったような気がする。

テーマ:Review_Premiere - ジャンル:音楽

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