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2018-08

「I Can't Help Myself (Sugar Pie Honey Bunch)」 (The Four Tops 1965年4月23日)



☆ 1960年代の前半をリードしたのはロックとソウルだ。この若い音楽は若い表現者,若い製作者,若く野心的な経営者に支えられそれまで大人が独占し大人が差配(つまりエルヴィスのように大人が認めたら一人前=クリスマス・アルバムが出せる=になる)する世界だった。マルクス主義をかじった人なら直ぐに「搾取」という言葉に辿り着くだろう。70年代半ばに本邦のフォークソングから同じムーブメントが立ち上がったわけだが,アメリカの黒人たちはドゥー・ワップの時代にそれを見つけた。それをポピュライズした成功者がベリー・ゴーディーであり,彼のレーベルタムラ/モータウンである。

I Can't Help Myself (Sugar Pie Honey Bunch)
(Brian Holland / Lamont Dozier)


☆ この曲は1965年6月19日から7月3日まで3週間全米No.1になった。直前のNo.1曲はスプリームス(シュープリームス)「Back in My Arms Again」その前はビーチ・ボーイズの「Help Me, Rhonda」もうひとつ前はビートルズの「Ticket to Ride(涙の乗車券)」。逆に直後のNo.1曲はバーズの「Mr. Tambourine Man」(オリジナルはボブ・ディランの作品)で,その次がローリング・ストーンズの「(I Can't Get No) Satisfaction」でその次がハーマンズ・ハーミッツの「I'm Henery the Eighth, I Am(ヘンリーⅧ世君)」だ。

☆ チャートから分かることはブリティッシュ・インヴェンジョンとモータウンが四つに組んで,そこにブライアン・ウイルソンとマイク・ラブが率いるビーチ・ボーイズがその地位を保つべく頑張っているという構図である。つまりハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラスやフランク・シナトラに代表される大人の音楽が入り込む余地が,No.1曲に関しては無くなっているということだ。

☆ ところでこの歌詩。初期ビートルズの曲のように若々しい。ひと言でいえば「自分のアイドルを見つけた男の子の心の弾み」をそのまま曲にしている。ドゥー・ワップの時代にペンギンズの「Earth Angel(アース・エンジェル)」という,まるで「橋本環奈の"天使過ぎる"画像を偶然見つけたヲタ」のような(爆)名曲(1954年10月)があるが,歌詩の背景はまるでその世界である。でも笑ってはいけない。同じような「男の子のときめく」世界は,つい2年前にビートルズが「抱きしめたい」で表現しているのだ。

☆ モータウン・ビートとはホランド=ドジャー=ホランドの作品に聞かれるもので,タイプは二つある。この曲のようなビートがひとつで,もうひとつはスプリームスの「恋はあせらず(You Can't Hurry Love)」で使っているものだ。フォー・トップスはリード・ヴォーカルのリーバイ・スタッブスがいわゆる「剛速球投手型」のぐんぐん押してくるヴォーカルなので,必然的に前者のビートに代表曲が揃っている。

PERSONEL
Lead vocals by Levi Stubbs
Background Vocals by Abdul "Duke" Fakir, Renaldo "Obie" Benson, Lawrence Payton,
and The Andantes: Jackie Hicks, Marlene Barrow, and Louvain Demps
Instrumentation by The Funk Brothers and the Detroit Symphony Orchestra (strings)
Written by Brian Holland, Lamont Dozier, and Edward Holland, Jr.
Produced by Brian Holland and Lamont Dozier

☆ このモータウンの「サウンド・プロダクション」はその後も長期にわたってブラック・ミュージックの枠を超えポピュラー音楽制作の模範となった。今のExile(米国チャートマニアのために敢えて識別して「本邦グループの」と付けておく)ファミリーもまた,その範に倣(なら)っていることは明白である。それほど有効で効果的なサウンド・プロダクションであり,ビートルズに代表されるバンドがロックンロールをロックに引き上げた「革命」だったとすれば,モータウンの音作りはリズム&ブルースをポピュラー音楽に格上げした「革命」だったとも言えるのではないかと思う。
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「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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