2018-05

「Ball And Chain」 (XTC 1982年2月26日)


初出:2012年1月30日
イングリッシュ・セトゥルメントイングリッシュ・セトゥルメント
(2011/06/08)
XTC

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☆ XTCのシングルをいちばん買っていたのは『Black Sea』から『English Settlement』の頃だから,1980~82年だった。今でも7インチと12インチの輸入盤が残っている。この曲は『English Settlement』からのセカンド・シングルで Colin Mouldingの作品。どっちかというと『Black Sea』の余韻が残る重低音ポップだが親しみやすい曲だ。

Ball And Chain (Colin Moulding)

Save us from the ball and chain,
我らをこの足枷から救い給え
Save us from the ball and chain,
Save us from the ball and chain,
oh yeah,
ああ,
The diggers and the tower cranes,
この掘削機どもやタワークレーンどもから
The diggers and the tower cranes.

Don't want demolition,
打ち壊しをやめよ
Don't want your compensation,
補償金で形をつけようとするな
It's not just bricks and mortar,
ただの漆喰仕立ての煉瓦の家じゃないんだぞ
We are lambs to slaughter.
我々は屠畜場の「か弱き子羊」だ

Save us from the ball and chain,
我らをこの足枷から救い給え
Save us from the ball and chain,
Save us from the ball and chain,
oh yeah,
The diggers and the tower cranes,
この掘削機どもやタワークレーンどもから
The diggers and the tower cranes.

Must we live in fear,
我々は恐れ戦(おのの)きながら生きていけねばならぬのか
From those who shed no tears?
この血も涙もない連中どもに
Our one and only shelter,
我々のたった一つの逃げ場所は
Your games, your helter skelter.
おまえが仕組んだ混沌の遊び場だというのか

Motorways and office blocks,
高速道路やオフィス街で
They're standing on the spot
こいつらはその現場に屹立していやがる
Where stood a home,
そこには我らの家があったところ
Crushing on the memories of people,
人々の生活の記憶や思い出をぶち壊し
Who have since turned to stone.
思い出を石に変えてしまうのだ

(Ahh)
They've turned to stone,
思い出を石に変えてしまう
(Ahh)
They've turned to stone.

Save us from the ball and chain,
我らをこの足枷から救い給え
Save us from the ball and chain,
Save us from the ball and chain,
oh yeah,
The diggers and the tower cranes,
この掘削機どもやタワークレーンどもから
The diggers and the tower cranes.

☆ Ball and chainというのは,囚人が逃げ出さないように足を鎖で繋がれて,その鎖の先が重い鉄の玉になっているという「あれ」のこと。

2017年10月27日付記(訳詩含む)
☆ Wikipedia(英語版)で『English Settlement』の項目を見ると,アルバム(1982年2月12日リリース)は,全英5位(全米48位,カナダ15位),先行シングル「Sences Working Overtime」(1982年1月8日リリース)は全英最高位10位,このシングルは同58位とある。アルバムが2枚組LPであったことを考えてもかなり大きな成功を収めている。アルバムジャケットに描かれているのは「ヒルフィギュア(英語: hill figure)」=イギリスの石灰岩の丘陵地帯に画かれた地上絵」の一つ「アフィントンの白馬(Uffington White Horse/Uffington Horse)」である(詳しくはWikipediaの「ヒルフィギュア」の項参照)。

☆ この曲の歌詩は,数年先の我が国の不動産バブル全盛期を歌っているような感じがする(あるいは1990年代後半以降の中国のそれかもしれぬ)。ロンドン市の再開発の歴史をWikipediaの記事で見ると「ドックランズ(東部、テムズ川沿岸にあるウォーターフロント再開発地域)」という項目があって,こんな記述があった。

> (前略)1960年代から1980年代までにかけてすべてのドックは営業を停止し、ロンドン都心の真横に21平方kmの廃墟が誕生した。ロンドン東部イーストエンドには失業や、それに伴う諸問題が頻発した。
> ドック閉鎖に伴い、再開発が急務となったが、計画を完成させるのに10年、実行に移すのにさらに10年がかかった。1970年代から作業は始まったが、当該地域の地主がグレーター・ロンドン・カウンシル、ロンドン港湾局、電気、ガス、鉄道、5つの区などにわたり問題が複雑になっていた。
> そこで1981年、イギリス環境省によってロンドン・ドックランズ再開発公社(the London Docklands Development Corporation 、LDDC)が設立された。これは政府によって作られた会社であり、ドックランズの土地取得と整地の強大な権限を有していた。もう一つの重要な政策は1982年策定のエンタープライズ・ゾーンであり、該当地域内のビジネス活動には不動産税が免除されるほかさまざまな土地開発の簡略化などインセンティブが与えられた。これによってドックランズ内での開発は企業をひきつけ、一種のブームを起こした。LDDCの政策は、大企業やその勤務者向けの上質なビジネスセンター開発に偏り、手ごろな住宅の開発などを怠っているとの批判を生み、もとからの下町住民には自分たちのニーズは無視されているとの不満を呼んだが、LDDCの開発は(さまざまな異論が残るものの)ドックランズを大胆に変貌させた。1998年、ドックランズの管理が地元の区に戻り、LDDCの活動は終わった。

☆ どうも,このことを歌っている感じがする。そう考えると,この曲の「重低音」は地域住民の意向など一切考えず,ひたすら小奇麗なビジネス街(そこは当然お金を生み出すし,実際にそういう場所になっている。)をパースどおりに仕上げていこうというエリート様の御威光を御旗に,煉瓦と漆喰のちっぽけな家を押しつぶしていく開発という名の怪獣の足音のようにも聞こえてくるから不思議だ。

☆ 1960年代の前半の都会に生まれた人が知っていて,1980年代前半に同じ場所生まれた人が知らないもののひとつに「空(あき)地」があるのではないかと思う。いや勿論1980年代に生まれた人も空地は知っているだろう。でもその「空地」はたいてい駐車場になっていてトラロープを張った枠の中に小型乗用車が平日はズラリと鎮座ましましていたのではないか。

☆ 資本主義の本質はこの「空いているもの」を「埋めていく」ことにあるような気がする。国が豊かになり人々の所得が増えると,例えば自動車を持つ人が増え,駐車場のスペースに空地が侵食されていく。あるいは相続などをきっかけに空地が転売され建物が建つようになる。そうやって空地で草野球などということがだんだん出来なくなっていく。

☆ 物理的な空間を埋めていくと,次に資本主義は時間を埋めていく。機械化は確かに人々の肉体的な負荷を減らしたし,コンピューターは脳の負担を減らした。その一方で減らした分を埋めていくことが求められ「生産性向上」ということが言われるようになってきた。それすら面倒になったのか,人間が考えること自体を機械に任せようとしてシンギュラリティなどと言い始めた。

☆ 気が付けば我々は何ものかに追い立てられながら,同時に暇を持て余すようになっていった。その結果が「正しさ」を巡る果てしない不毛な論争やそこからの跳躍としてのポピュリズム,ナショナリズム,宗教的エンスージアズムだったのではないか。コリン・モールディングが歌った以上に,我々の足枷は重くなってしまったような気がするのである。

今日のカラオケコーナー(YouTube posted by Jim Schreiber)


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