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2018-10

「ネグレスコ・ホテル」 (BORO 1983年1月1日)




☆ 井上大輔(忠夫)は,1960年代を代表する名曲「ブルー・シャトウ」(ジャッキー吉川とブルーコメッツ 1967年3月15日)の作者として我が国のポピュラー音楽の歴史に名を刻む人である。でもぼくは個人的に彼の作・編曲の頂点にこの曲を推したい。イントロから示される荒涼感は,和モノAORを軽く突き抜けている。それはBOROの書いた詩ともシンクロして,映画的な情景を容易に浮かばせる「力」を持っている。「ブルー・シャトウ」に聴ける哀愁感は確かに日本人のメンタリティに強くアピールして(Wikipediaのブルーコメッツの解説が指摘するように)GSの日本化(=歌謡曲化)を招いたのは事実である。だがしかし,同じアメリカのロックンロールやリズム&ブルーズを母体としても英国に行けば英国流になるし,豪州や北欧に行けばやはりその風土の影響を受けて音楽のフレーム自体が変わっていく。ヨナ抜き音階だけが和風な作品でないのと同じように,ジャズやロックだって和モノに変化するのが音楽の本質だ。なぜなら,それがその時代にその場所で生きている人々が「聞いている」音楽というポピュラー音楽の特性であるからだ。

☆ 日本の風土と日本語。それをひとつの制約として捉えたとして,そこからいかに離れていくかが70年代の日本のポピュラー音楽の抱えた問題であった。最も大きな問題としては言語にあり,別の問題としては音楽の取り込み方があった。日本語という制約から自由になるために日本語を捨てるという選択もあったが,そこに踏みとどまり「日本語でロックを語ること」から日本の70年代ロックの進歩が始まった。たぶん同じことは75/57調という言語的制約を飛び越えようとした90年代以降の日本のラップ/ヒップホップのミュージシャン達にもあったのだと思う。

☆ そういう制約から離れて楽曲至上主義的なアプローチを目指したミュージシャンも多かった。90年代半ばくらいまでの山下達郎はその典型だと思う。井上大輔のこの曲にもそうしたアプローチを感じる。曲のタイトルに採られた「オテル・ネグレスコ」は南仏ニースのリヴィエラ海岸にある著名な5つ星ホテルで,BOROの詩の描くアメリカ西部の情景とはかなり違うのだが,そういう感慨に有無を言わせないのがこの曲であり,アレンジである。

「ネグレスコ・ホテル」 (作詩:BORO / 作・編曲:井上大輔)



☆ おそらくこの「荒涼(荒寥)感」はBOROの感情を溢れさせたヴォーカルが招く部分が大きいのだと思う(実はこの曲が大好きでカラオケでたま~に歌うのだが,そのたびに自爆してしまう=笑=)。ヴォーカルの持つ熱量の高さを確(しっか)りと受け止め,余韻さえ残させる端正なアレンジは上質の洋酒のようにほろ苦く,薫り立つ。ノーブルと言っても良いくらいだ。この曲はそのヒットの大きさと関係なく,1980年代を代表する曲の一つに挙げられるべき作品であると思う。

NOTES (削除された別のYouTube投稿者の記載による)
「シンビーノ」CMソング 
アルバム「A LITTLE BEST SONGS」収録 
アルバムのミュージシャンクレジットはこちら↓
【Guitars】 速水清司・今剛【Bass】上阪さとる・美久月千春 
【Keyboards】深町栄・難波正司・山田秀俊 
【Percussion】成田昭彦・浜口茂外也 
【Drums】鈴木二朗・林立夫 森本尚幸




☆ そういえばこの曲が(それなりに)ヒットしていた頃に,BOROがCX「夜のヒットスタジオ」に出たことがあって,他の出演者のセットが全て終わった後に,なんとなく別セットで歌い始めるまで「出演ないのかな?」と訝しく思ったことを思い出す。あれだったら「ミュージック・フェア」の方が良かったかもしれない(笑)。
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「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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