2017-10

うたかた(二の舞)




1.優雅な生活が最高の復讐である(Living Well is the Best Revenge)



☆ 1980年代の前半。何処からともなくこの言葉が聞こえてきた。ひとつ確実に覚えているのは村上春樹で,彼がスコット・フィッツジェラルドについて書いた何かに「それ」はあった。最近読む機会があったので村上春樹の本をいろいろ読んでいたら,フィッツジェラルドの『夜はやさし』の中に出てくるようだ。ただそれとは別に幾つかの方向からこの言葉は響いていた。あやしいのは「本の雑誌」か「(ニュー)ミュージック・マガジン」あたりなのだが,意外に「GORO」あたりからだったかもしれない。

☆ バブルのベースになったことはボブ・ディランの歌ではないが「時代は変わる」ということだったと思う。80年代の初めにはコンピューターは現在の姿に向けて変身しつつあった。それはアルビン・トフラーが『第三の波』で想定した通りだし,日本電気(NEC)などは早くもコンピューターとコミュニケーション(C&C)をキャッチフレーズにしていた。何かが変わるという点で冷戦構造もデタント(緩和)と緊張(レーガン政権)の狭間にあったことは,アンディ・パートリッジが1980年に「Living through another Cuba」で「我々は真ん中にいる子豚チャンだ」と吠えたとおりだった。

☆ そういえばバブル時代を経ていまだに「日本の上下」に誤解されている本がある。

2.ジャパン・アズ・ナンバーワン(ナンバーワン国家として(仮定法)の日本)



☆ エズラ.F.ヴィーゲルの『ジャパン・アズ・ナンバーワン』はちょうど大学に入った頃,教養課程の某教授に夏休みの課題図書として読むことを指示された(レポートも書いて出したはず)。読んだ時の第一印象は「これは日本礼賛本ではないぞ」ということだった。日本の社会構造がアメリカのそれとどう違っていて,対米でどういう点が強みになっているかという分析が本の主題だったからである。ところがそれから40年近く,最近になっても,最上段の本や別の人々(多数の企業経営者・学者・官僚・政治家などを含む)のあちこちでこの本を日本礼賛本であるかのように受け止め,それを暗黙の前提として話を進めている文章を飽きるほど見ている。

☆ あのねえ。ヴォーゲル教授がやったことは「ストラテジック・アナリシス(戦略的分析)」以外の何でもないの。だから今世紀に入って教授が中国に関して同様の分析を試みているのも当然のこと。この人はアメリカの国益を考えてそういう本を著しているのであって,媚日派とか知日派とかいうのはトンデモナイ誤解だよ。ただこの「誤解」がバブルの動力になったのは確かだ。喩えが悪いが,どこかの偉い人に連れて行ってもらった夜のお店で,日ごろ絶対に相手にされないような綺麗なお姐さん達にチヤホヤされて舞い上がった夜郎自大みたいなもので,字義通りに言い換えれば,夜郎国の王様が中国の皇帝の使者(単に通過するだけの人)に向かって「その中国という国は儂の国と同じくらい大きいのか?」と尋ねるようなもので,綺麗なお姐さんだか合衆国だかは知らないけれど内心「なにこのダサオヤジ」と思っていてもハイハイとやり過ごすくらいの器量は持っている。たまにやり過ぎと思えば,産業スパイ事件や対共産圏輸出規制違反などという口実で思い切り叩く,そうすればいいやと思っているわけだ。

☆ でも夜郎国の王様みたいな日本国の勘違いな人達は,産業の高度化の重要性や社会保障拡大に対する適正な負担(分かっていたのは田中角栄と大平正芳の二人だけだったようだが=分かっていても出来なかった宮澤喜一は論外),「今日が良ければそれで良し」政策を弥縫的に(付け焼刃で)進めていくしかなかった。そんなこと考える前にまだイデオロギーに固執していればよかった人達はそれにすら劣ることになる。

☆ そこで世の中はどう言い出したか? 「これからは感性の時代だ」。この「感性」というヤツがバブルの最高のカタリスト(触媒)だったのである。(以下「三の舞」に続くが,どこまで舞うつもりだ?)

Missing You (John Waite 1984年6月)


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「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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