2017-05

「1984年の歌謡曲」考(その1 P.78まで)




☆ 最初に断らなければいけないことがある。この本は偶然知って購入したので著者の前著である『1979年の歌謡曲』を読んでいない。この本を読んだ方が『1984年の歌謡曲』に対するクリアーな評価ができる気はしているのだが,今からでは間に合わないので(だって今書きたい=モノ申したいんだもん(´∀`*))とりあえずそのまま書くことにする(=∀=)。

その1
#1 安全地帯 「ワインレッドの心」
☆ 本のコンセプトから外れるが,この曲の作詩をした井上陽水の解釈を比較してみると良い。陽水の『9.5カラット』のボツタイトルは『俺の方が上手い』だったらしいが(笑=だから9曲に自分が上手いというプラス0.5で9.5カラットになった=),この曲の歌い方でもそれは現れている。それは『9.5カラット』よりもライブ盤の『クラムチャウダー』の方がより良く分かるだろう。作詩家の目では歌の主役である「彼女」の脆(もろ)さ・儚(はかな)さを歌うには,情熱的に歌い上げるのではなく,静かに少しだけ距離をもって歌うことが似合っているのだ。

#2 わらべ 「もしも明日が」
☆ 言っていることは分かるが評価基準が意味不明である。この曲自体の持つ力を素直に評価してもこうなると思うが。

#3 中森明菜 「北ウイング」
☆ 明菜のシングルは「サザン・ウインド」までは買った(笑。ちなみに聖子は「ハートのイアリング」くらいまで)。ここに示された新たな事実も興味深いが,中森明菜は「どうやって自分をプロデュースしていくか」を考えた一人だったと思う。その事情はたぶん小泉今日子と五十歩百歩だったと思う(スタッフが貧弱)が,小泉が自分をアイコンとするという戦略を見つけていったのに対して,中森はあくまで「歌手・中森明菜」はどうあるべきかということが原点にあったのだろう。

#4 アルフィー 「星空のディスタンス」
☆ 著者の意見にほぼ同感である。アルフィーのベタなフォーク(「無言劇」とか)を知っているので,「メリー・アン」を聴くと「セパレイト・ウエイズ」(ジャーニー)が頭に浮かぶぼくもチョッとキツめのこの評価は良く分かる(笑)。

#5 テレサ・テン 「つぐない」
☆ この評価は今見ると?である。確かに当時,日本歌謡界に復帰した時期の鄧麗君は相当アンダーレイテッドだった。これをひっくり返したのはカラオケスナックでの長~い経験による(爆)。それにしても著者の取り上げている後期麗君の綺羅星のような歌謡曲群のきっかけはこの曲であり,もう少し「位置付け」を評価すべきではないのかと思う。それにしても「愛人歌謡」とはよく言ったものだ。それが60年代からずう~と続くある種の歌謡曲(=夜のお姐さん世界作品)のラインに位置付けるべきである。愛人歌謡というなら島津ゆたかの曲とかそういうのを挙げるべきだろう。

#6 チェッカーズ・ザ 「涙のリクエスト」
☆ 福岡の音楽シーンは市内,北九,久留米に大別される。チェッカーズはプロとして上京する前は久留米のシーンで活動していた。著者の取り上げ方はビートルズの下手なもじりだが,案外,図星の部分もある。あと「ギザギザハートの子守唄」の「退屈退治」のコピーに触れたのは秀逸(関西でもやっていたのか,(ミュートマ)JAPAN?)。

#7 杉山清貴&オメガトライブ 「君のハートはマリンブルー」
☆ 彼等が所属していたのは日テレの資本が入っていたVapだったから,最初の曲(「サマー・サスピション」)ではザ・トップテンにも出ていたし,それなりにタイアップは揃っていた。この曲での著者の「康珍化の歌詩」の特徴分析は非常に優れている。

特別編Ⅰ 1984年までの沢田研二
☆ ノーコメント。この時代の渡辺プロダクションについては基本的に話したくない。

#8 松田聖子「Rock'n Rouge」
☆ 間違っているかもしれないが,「(アイドル)歌手=化粧品デーモデル」の第1号ではなかったか?この後は小泉今日子とか国生さゆりとか80年代には豊富で90年代は吉田美和までチャレンジした(爆)。著者の指摘はほぼ正しい。ただし「Sweet Memories」は最初からの両A面曲ではない。最初は「ガラスの林檎」のB面だった(初期盤シングル所有)。その後サントリーがペンギンのアニメーションCMを使いその曲が「Sweet Memories」だったから両A面にして出し直したのである(後期盤シングル所有)。結果として大村雅朗の代表曲にもなり,彼が早世した直後に松田聖子がトリビュートとしてライブでこの曲を披露したのは有名はエピソードである。しかしこの話はこの本の主題からは外れている(´∀`*;)ゞ。

#9 吉川晃司 「モニカ」
☆ この曲(パロディ)を紹介する「ひょうきんベストテン」で司会役のS(現在一般人のため当時の芸名をイニシャル化)が歌詩の一部を使って下ネタをしきりと言っていたことでも有名な曲(自爆)。というより,Nobodyをノーボディ(無名人)から有名にした曲。確かに著者の指摘のようにこの曲から「憎まれそうなNewフェイス(麻生祐未!)」までのキッコーは佐野元春のコピー的なノリはあったと思う。それだけなら不快に感じるところ,この評価はその辺の細かいところまで触れており,なかなか良い内容だった。

#10 郷ひろみ 「2億4千万の瞳」
☆ 井上大輔(その後井上忠夫に戻した)についての記述で「ネグレスコ・ホテル」(BORO)に触れてないのは残念過ぎる。歌詩についての分析はほぼ同感。

#11 小泉今日子 「渚のはいから人魚」
☆ これは小泉が可哀想だ。確かに秋元康だったら「なんてったってアイドル」だろうし,いまだにそれで食っているのだから感想も感慨の欠片もないが,小泉がその氏名も含めて康珍化を当初物凄く嫌っていた(ヘアスタイルぶつ切り事件)のは良く知られた話だ。「そういう曲」で人気を確立した過程はダイアナ・ロス(譜面をもらってガッカリした「愛はどこに行ったの」が全米No.1になってスプリームス(シュープリームス)の快進撃が始まった)に似ている。半笑いは著者の独創だろうが,自作の言葉に溺れてないか?

#12 しぶガキ隊 「喝!」
☆ ノーコメント。これは聴いてないので。

#13 中原めいこ 「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。」
☆ カネボウ化粧品のCMコピーに関する分析はさすがだと思ったが,少し穿ち過ぎの感もあった。つまり曲の分析ではなくギョーカイ分析に終始していることだ。中原めいこについて書くならせめて川島なお美に提供した「GEMINI」あたりから書き起こすのがシンガー・ソングライターに対する礼儀だろう。

#14 中森明菜 「サザン・ウインド」
☆ 先に書いたようにこの曲が明菜のシングル個人的買い納めの作(自爆)。イエスの「ロンリーハート」は曲は知っているが,そんなところまでは気付きもしなかった。イエスというバンドにもバグルスやZTTレーベルの曲調にも興味が持てなかったからだ。それにしても明菜は相当色んな音を聴きこんでいたのだと思った(誰かが平岡正明に教えてあげればよかったのに)。

#15 小林麻美 「雨音はショパンの調べ」
☆ この曲のレビューは世代の違いもあるが全く承服できない(爆笑)。確かにガゼボの曲は名曲の類ではないし,こうした原曲を離れた日本語翻案というのも80年代には古めかしくもあったかもしれない。しかしそれをティセ(セイコーの女性向けウォッチ)のCMと無理やり結びつけて一面的な評価をされても,ああこの人は当時CBSソニーが20代の若いサラリーマンをターゲットに早朝の時間帯にこの曲だとか浜田省吾の「Money」だとかのスポットを売ったいたことも知らなければ,小林麻美のPV(時々YouTubeで見かけるがいつも削除されている)のエロティズムも全然知らずに,90年代後半の古内東子とかを評する感覚でこれを書いているなというのが見えてしまうからである。
☆ ついでに言えば「雨音はショパンの調べ」のシングルジャケットのイラストを表紙にした(もう少し下の方まで描いていた)彼女のエッセイ集『あの頃,ショパン』なんてのがあったことも多分知らないだろうな。

#16 岡田有希子 「ファースト・デイト」
☆ ユッコのデビュー曲である。この曲もミュートマJAPANで何度も見た。竹内まりやの作品として低い評価だが,それはないだろう。竹内がユッコが亡くなった後で1992年に出した『Quiet Life』の中でわざわざ献辞を付けて彼女への提供曲「ロンサム・シーズン」をセルフカヴァーしたのはなぜか?そういうことも考えずに軽々しく書くべきではないと思う(確かに広末涼子のアイドルデビュー曲は指摘の通りだと思うが^^;)。
☆ それから86年の事に関しても写真週刊誌の話なんか書いてほしくなかった。あの頃はそういう「配慮のない」時代だった。だからこそ久米宏が「ニュースステーション」で「若い人たちにお願いする。決して死んではいけない。」と呼びかけたのだ。個々の時代にはその時代特有の背景があり,後生がそれを評価するときはそういう時代周りのことには留意すべきであり,まして「くちびるNetwork」ではなく「ファースト・デイト」を評するのにその話ばかり持ち出すのは下種の勘繰り以外の何でもなく,もはや批評の名にも値しない。著者がショウビズやそこから生まれるものを対象にモノを書いて食っていくつもりならこのことを一生肝に銘ずるべきであると,ぼくは考える。


↑ 7位の曲に注目

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「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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