2017-06

「Definitive Gaze」 (Magazine 1978年6月=アルバムリリース)



リアル・ライフ(紙ジャケット仕様)リアル・ライフ(紙ジャケット仕様)
(2007/06/27)
マガジン

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2009年3月19日
☆ マガジンという試みは,パンクの初期衝動とは無縁のものである。ハワード・ディヴォートはピート・シェリーと喧嘩別れしたわけではなく,ピートがピストルズのギグを見て脳天をかち割られたことを反復することを望まなかっただけのことだと思う。

☆ マガジンのセカンド・アルバムは当時のプレスに酷評された。曰く「労働者階級のピンク・フロイド」だとか。そのピンク・フロイドは「ウイッシュ・ユーワー・ヒア」から「アニマルズ」を経て「ウォール」に向かいつつあった。両者の比較には意味は無い。ただマガジンを結成するに当たってディヴォートの描いた音のありようは確かに「プログレッシヴ・ロック」の方向性を持っていた。

☆ ブリティシュ・ロックの歴史におけるマガジンの功績はパンクとニュー・ロマンティックスを結ぶ線上にある。前者は衝動的・反抗的・原始的であり,後者は商業的・耽美的そしてポップである。そこには「窯変」が必要であり,それを果たした原動力が,このアルバムであり,アルバムタイトルを歌詞に含むオープニング曲,つまりこの曲である。

2009年5月4日
☆ 3月に記事を書きかけて一時中断していたのだが,その前月に再結成ツアーが英国で行われていたようで,You Tubeにたくさん投稿がありビックリしている。オリジナルアルバムが出て31年経っているのだが,いまだにこの時代の最も重要な作品の一つだと確信している。そこで前回書きかけに戻り,レビューを行うことにする。

☆ マガジンという試みは,パンクの初期衝動とは無縁のものである。ハワード・ディヴォートはピート・シェリーと喧嘩別れしたわけではなく,ピートがピストルズのギグを見て脳天をかち割られたことを反復することを望まなかっただけのことだと思う。

☆ マガジンのセカンド・アルバムは当時のプレスに酷評された。曰く「労働者階級のピンク・フロイド」だとか。そのピンク・フロイドは「ウイッシュ・ユーワー・ヒア」から「アニマルズ」を経て「ウォール」に向かいつつあった。両者の比較には意味は無い。ただマガジンを結成するに当たってデヴォートの描いた音のありようは確かに「プログレッシヴ・ロック」の方向性を持っていた。

☆ ブリティシュ・ロックの歴史におけるマガジンの功績はパンクとニュー・ロマンティックスを結ぶ線上にある。前者は衝動的・反抗的・原始的であり,後者は商業的・耽美的そしてポップである。そこには「窯変」が必要であり,それを果たした原動力が,このアルバムであり,アルバムタイトルを歌詞に含むオープニング曲,つまりこの曲である。

☆ マガジンのデビュー曲「Shot By Both Sides」は,バズコックス時代のアウトテイクと言って良い作品だが,そこで聴かれるものは当時の米「Rolling Stone」誌が「この年発表されたロックンロールの最高作品」に選ぶだけの価値はある。この一曲でマガジンはポスト・パンクの方向性を示した。

☆ しかし,彼らが進めた「音楽」は,このシングルさえ凌駕する。それはパンクとプログレとの直接的な結合であり,アメリカン・ハード・プログレに対するオルタナティヴとしての「新しい波(New Wave)」であった。

2009年5月5日

☆ 英国で1980年のシーンをリードするのは,オルタナティヴとヘヴィ・メタルだ。この両翼の間にコマーシャルなムーブメント(例えばニューロマンティックス→ストック・エイトキン・ウォーターマン/ユーロビート)やインディーズ(例えばヴァージン,スティッフ,チズウィック,ラフ・トレード,ファクトリー,2トーン,クレプスキュールなど)が百花繚乱となった。

☆ マガジンには「弾倉」という意味があるが,パンク的な直線から歪んだキーボードとかき鳴らすギター,それを黙々と支えるベースとドラムス,そして個性の塊のようなヴォーカルが渾然一体となり,平坦な初期衝動の壁紙を打ち破って新たな地平を示した。この作品の価値はまさに1969年のキング・クリムゾンの登場と対を成すものである。



2009年5月6日

☆ アルバムヴァージョンはメッセージを簡略化するため,ギターとキーボードの作り出す渾沌は控えめになっている。ギターは時にバックでリズムを刻むかと思えば,いきなり正面に出てきてフレーズを弾く。キーボードはイントロでテンションを高めた後,一気に華やかに展開する。それをしっかり支えるベースと正確なドラムスが否が応でも散漫に成りそうなキーボードを引き締める。この1分余りの長いイントロに曲の世界が凝縮され,そこに抽象的な歌詞が短く添えられる。

Definitive Gaze(Howard Devoto, John McGeoch)




I've got this bird's eye view
and it's in my brain
clarity has reared
its ugly head again
so this is real life
you're telling me
and everything
is where it ought to be

I like your nerve
I like watching you
but I don't watch what I'm doing
got better things to do
so this is real life
you're telling me
now I'm lost in shock
your face fits perfectly

☆ 音楽の手法としては,パンク由来の極めてタイトな部分とプログレ由来の長く複雑な部分が絶妙にブレンドされている。間奏の展開が長く続いてもそれに続く歌詞は最早存在せず,そのままコーダへとなだれ込んでいく。それは「再現性のある音楽」としてのロック的な手法を駆使しながら,極めてデザイン的でもある。この音楽はパンクの領域から離れ,プログレッシヴ・ロックよりも同時代的で「モダーンな音楽」の態様を示し出した稀有な作品なのである。

☆ 2009年に「再生産」されたマガジンのステージを「YouTube」で見ることが出来たのは僥倖である(なにせ一度も来日しなかったから)。たぶんその半分はノスタルジイの類であっただろう。でも,30年経ってこの音楽がちっとも古びていないことを自分は確認できた。

2017年2月8日付記(英国版Wikipedia)
> Having toured much of the album through 1977 and early 1978, the group's then lineup of Devoto (vocals), McGeoch (guitar and saxophone), Adamson (bass), Formula (keyboards) and Martin Jackson (drums) recorded the album in sessions using the Virgin Mobile and at Abbey Road Studios between March and April 1978. The album was produced and engineered by John Leckie.

1977年から78年初めにかけて,ツアーを行いながらディヴォート(ヴォーカル),マッギオーク(ギター及びサクソフォン),アダムソン(ベース),フォーミュラ(キーボード)とマーティン・ジャクソン(ドラムス)のラインナップとなったグループは,78年の3月と4月にかけてファースト・アルバム制作のためのセッションをヴァージンの移動式スタジオやアビイ・ロード・スタジオを使いながら始めた。アルバムのプロデュースとエンジニアリングはジョン・レッキーが行った。

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「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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