2017-05

「Oliver's Army」 (Elvis Costello and the Attractions 1979年1月5日) その2



エルビスコステロ詩集エルビスコステロ詩集
(1998/12/10)
エルヴィス コステロ

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☆ 前回「おまけ」のように載せた昔(2012年確認)のYou Tubeコメントを再掲する。

> I always took it to be about the British army's long tradition of sending Irish soldiers across the globe to die for the glory of England.
> この歌を聴くと,僕は大英帝国の軍隊がアイルランド出身兵を世界各地に送り込んで大英帝国の栄光のための踏み台(犠牲)にしてきたということに思い当たる。
> Costello's family was Irish.
> エルヴィスコステロの先祖はアイルランドの出身だ。
> Oliver's Army is a reference to Oliver Cromwell, who subjugated Ireland in the 17th century and confiscated large amounts of land.
> 「オリヴァーズ・アーミー」は17世紀にアイルランドを支配しその大半を征服したオリヴァー・クロムウエルについて言及した作品である。
> Despite the Irish resentment of the English and the fact that they were treated like dirt and called "white niggers", many Irish were poor and the army was the only opportunity open to them.
> アイルランド人のイングランド人への憤激は,イングランド人たちが彼等アイルランド人を不潔なものとして扱い「白ンぼの黒人」と呼んだことにある。それはイングランドの支配下に入ったアイルランド人達にとって軍隊が唯一の彼等に残された出世の機会であったからだ。

This comment posted by BlonkyLaRue

☆ 世界史(事実上の欧州史)における近代の幕開けは17世紀にある。それは大陸欧州では30年戦争とウエストファリア(ヴェストファーレン)体制の成立であり,ブリテン島では護国卿オリヴァー・クロムウエルによる清教徒革命であった。エルヴィス・コステロがこの曲を発表した1979年には北アイルランドはIRAが独立闘争(爆弾テロ)を繰り返し,この年(1979年)の8月27日に第2次世界大戦の英雄であったルイス・マウントバッテン卿を爆殺している。IRAの名前は言うまでもなくセックス・ピストルズの「アナーキー・イン・ザ・UK」(1976年11月26日)の中に歌われているが,1994年に暫定的な休戦に入っている。

Oliver's Army (Elvis Costello)



Don't start me talking
オレに声を掛けない方がいいぞ
I could talk all night
一晩中でも喋り続けるから
My mind goes sleepwalking
俺の心は夢遊病のように彷徨っている
While I'm putting the world to right
物事が収まるべきところに収まるのを見届けるまでは

Called careers information
ハローワークにでも電話すれば
Have you got yourself an occupation?
何かお探しの職種はありますか?ってなものさ

(Chorus)
Oliver's army is here to stay
オリヴァーの兵隊が駐留中さ
Oliver's army are on their way
オリヴァーの兵隊が行動開始だ
And I would rather be anywhere else
オレと来たら,どこでもいいから出発したいのさ
But here today
ここでウダウダしているのは,もうゴメンなんだよ

There was a checkpoint Charlie
検問所にはチャーリーが陣取ってる
He didn't crack a smile
冗談のひと言も言いそうもないヤツさ
But it's no laughing party
もっとも楽しい催しなんてどこにも無いのさ
When you've been on the murder mile
おまえがスケジュールに忙殺されている間はね

Only takes one itchy trigger
チョッとばかり銃爪(ひきがね)を引いてやれば
One more widow, one less white nigger
また一人未亡人が増えて,また一人白ンぼの黒人が減っていく

(Chorus)
Oliver's army is here to stay
オリヴァーの兵隊が駐留中さ
Oliver's army are on their way
オリヴァーの兵隊が行動開始だ
And I would rather be anywhere else
オレと来たら,どこでもいいから出発したいのさ
But here today
ここでウダウダしているのは,もうゴメンなんだよ

Hong Kong is up for grabs
香港では一事が万事,早い者勝ちで
London is full of Arabs
ロンドンにはアラブの金持ちが溢れている
We could be in Palestine
俺たちゃパレスチナにいるかもしれないし
Overrun by a Chinese line
中国の国境を踏み越えているかもしれないし
With the boys from the Mersey and the Thames and the Tyne
そういう時にはマージーとかテムズとかタインあたりからやって来た野郎どもと一緒さ

But there's no danger
だけど別にヤバイ事じゃないぜ
It's a professional career
これがプロのお仕事っていうものさ
Though it could be arranged
たとえその話が
With just a word in Mr. Churchill's ear
チャーチル殿の耳に入ったほんの一言が原因で準備されたとしてもね
If you're out of luck or out of work
もしもあんたが身の不運を嘆いたり仕事からあぶれて困っていたとすれば
We could send you to Johannesburg
俺たちが喜んでヨハネスブルグにお届けしてやるから

(Chorus)
Oliver's army is here to stay
オリヴァーの兵隊が駐留中さ
Oliver's army are on their way
オリヴァーの兵隊が行動開始だ
And I would rather be anywhere else
オレと来たら,どこでもいいから出発したいのさ
But here today
ここでウダウダしているのは,もうゴメンなんだよ

☆ Wikipedia(英国版)の解説を見ると,1645年に清教徒革命による英国内戦の中でクロムウエルが組織した「New Model Army」が英国軍の母体になったとある。「オリヴァーズ・アーミー」はそのことを指しているが,もちろん英国の「歴史的事実」を歌っているのではなく,先に書いた1979年の「現実」を歌っている。たとえば

Hong Kong is up for grabs
香港では一事が万事,早い者勝ちで ⇒香港の中国返還まであと18年
London is full of Arabs
ロンドンにはアラブの金持ちが溢れている ⇒アラブ諸国の「オイルマネー」最盛期
We could be in Palestine
俺たちゃパレスチナにいるかもしれないし ⇒イスラエルとエジプトのキャンプデービッド合意は1978年3月
Overrun by a Chinese line
中国の国境を踏み越えているかもしれないし
⇒中越戦争が起きたのはこの年の2月17日(ただし国境を越えていったのは中国軍)

こんな感じだ。

☆ その一方,Wikipediaの英国版ではこういう指摘もある。

> A reference in the lyrics to "a word in Mister Churchill's ear" suggests, however, that the Oliver in question is Oliver Lyttelton, Churchill's President of the Board of Trade in the early stages of the Second World War.

☆ 「チャーチル卿の耳に一言入れた」という歌詩の部分で第2次世界大戦時に英国枢密院で "President of the Board of Trade" などの職にあったOliver Lytteltonという人物に言及がある。彼は初代シャンドス子爵(1st Viscount Chandos)でもあるそうだが。この辺は全く読み切れていないことを認めざるを得ない。結局ポピュラーソングは,その国が持つ「背景」を理解していないと分からない部分がある。英国の場合であればグレートブリテン島とアイルランド島の関係であり,身分制度でありそれらを背景とした人間関係である。

さらに

If you're out of luck or out of work
もしもあんたが身の不運を嘆いたり仕事からあぶれて困っていたとすれば
We could send you to Johannesburg
俺たちが喜んでヨハネスブルグにお届けしてやるから

☆ ローデシア紛争は最終盤にさしかかっていた(ジンバブエ・ローデシアの成立はこの年の6月1日,ローデシアとしての独立は1980年4月17日)が,南アフリカはアンゴラへの介入や自国が統治していたナミビアの独立問題(1990年3月21日独立)など様々な問題を抱えていた。ヨハナスブルグはその象徴的な都市でもある。もちろん南アフリカ共和国の成立にはボーア戦争があり英国が大きな役割を果たしていることお考えておかないといけない。

☆ パンクロックが政治的であったのは,政治的な時代背景(イギリスの場合は内政・外交の両面で)もあるし,その当時は誰も予期していなかったが冷戦末期に向かう過程であり,現在に至る中東情勢の決定的な要素となったソ連(当時)のアフガニスタン介入があったからだ。ピストルズやクラッシュは内政問題としての政治をその視座に置いた。ストラングラーズはもう少し広い視点があった。エルヴィス・コステロのこの曲もその視座に近い。

☆ この曲は彼の全英チャート最高位(第2位)を記録した作品でもある。この曲の解説では当時のコステロは売り出し中のパンク・ミュージシャンであり,活動はフル回転であったため一種の躁状態になって書かれたのがこの作品であるという話があるが,あるいはそうかもしれない。ただパンクががなり立てるだけの音楽ではなく,ニュー・ウエイブ(としてのパワー・ポップ)であることを強く意識させた作品でもあり,それはやはりこの時期のコステロをプロデュースしたニック・ロウの手腕によるのだろうとも思う。

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「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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