2017-06

Funk is (e) music !アース・ウインド・アンド・ファイアー「シャイニング・スター」



暗黒への挑戦/アース・ウインド&ファイアー
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☆ これを書くために調べてみたが,アース・ウインド・アンド・ファイアー(以下「アース」と略す。)の唯一の全米No.1シングルが「シャイニング・スター」だということは改めて興味深かった。アースを日本でCBSソニーが強力にプッシュし始めたのは1976年の『魂(Spirit)』あたりからで,その頃はディスコ文化が日本でも浸透し始めていた。1970年半ばに「浸透し始める」というのは,東京圏、大阪圏で流行し始めているという意味にほぼ等しい。札幌や名古屋や福岡はそれぞれの地域文化があり,東京・大阪のレーダー的な店はあったが,メインコースでないから面白い店という感じだったと思う。結局どこの街でもダイレクトに米英のポップ/ロック/ソウルが一番と思っている若者は山ほどいて,そういう人達が勝手に楽しんでいたのである。そして「浸透する」のは,そういうヒップな連中(そうでない筆者のようなのも多くいたが^^;)の友人・交際関係で少しずつ流行が広がっていくことを指している。

☆ 日本でアースを有名にしたのは長岡秀星だと思う。長岡の手による『All 'N All (太陽神)』以降のジャケットは,スピリチュアル大好きな人達の注目も浴びたと思う。ただそこから80年代初めまでのDISCO時代は確かにチャート上もアースにとって黄金時代だったと思うが,どういう訳かNo.1がない(ちなみにフィリップ・ベイリーとフィル・コリンズの「Easy Lover」ですらNo.1はキャッシュ・ボックスだけ)。No.1という地位は「はずみで届く」ものであることが良く分かる。だから逆にアースにしては「もろファンク」な「シャイニング・スター」が唯一のビルボードHot100 No.1曲という事実が興味深く思えるのだ。

Shining Star (M. White/P. Bailey/L. Dunn)



☆ ファンクという音楽ジャンルはジェームス・ブラウン⇒Pファンク⇒スライ&ファミリー・ストーンと進んでいったことはウィキペディアにも書いてある通りだ。あまりにも正確なので引用する。

> ファンク・ミュージックの大きな特徴は、バックビート(裏拍)を意識した16ビートのリズムとフレーズの反復を多用した曲構成である。ダンス・ミュージックとしての色彩も強いため、とりわけリズムはファンクを位置づける大きな要素となっており、分厚くうねるベースライン、鋭いリズムギター、強いリズムのホーンセクションなど、演奏楽器のすべてがファンクビートを形成していると言える。ベースにはスラッピング、ギターにはカッティングという奏法技術が多用される。そのためポップスなどでもこの技術が使われているだけでファンクという印象を与えるほど影響が大きい。バンドや楽曲ごとにさまざまな特徴があるが、1980年代以降はドラムマシーンによる機械的なビート、アフリカやラテン系のリズム、ラテンやロック、レゲエの要素を取り入れるなど、ジャンルを超えた発展を続けている。

☆ 「分厚くうねるベースライン、鋭いリズムギター、強いリズムのホーンセクション」。これそのまま「シャイニング・スター」という曲を構成する主要な要素で,そこに力強く匂い立つようなヴォーカル(まさにファンクという言葉の「原意」のひとつである)を降り注ぐとこの曲がほぼ出来上がる。そしてここに1970年代という時代の特徴の一端が見える。60年代が(第二次世界大)戦後世代による、前世代との対立・反抗・異議申し立ての時代であったとすれば,70年代は前時代(世代ではない)が提示した問題を解決していく時代であった。

☆ 70年代に起きていたこと。黒人の主張,ウイメンズ・リブ,メディア権力と芸能の大衆化,大量消費社会と公害,資源ナショナリズムと民族意識の再覚醒。2010年代の今から見れば「多様化(ダイヴァーシティ)」のひと言で片付きそうな感じもするが,そういったものが一斉に放たれていったというべきであろう。(アメリカの)黒人問題はその先頭に立っていた。先ほどからわざとブラック・ピープルと書いているのだが,それが70年代だったからで,相対的に見ても1970年代は20世紀の百年間の中でもっともリベラリズムが力を持った時代であったようにも思われる。自由という概念が「○○からの自由(もしくは解放)」という形を取った時代だったのではないか。「シャイニング・スター」で幕を開けるアースのアルバム『That's the Way of the World』にしても,その時代背景を持つ黒人(アフリカン・アメリカン)としての自覚がモーリス・ホワイトをして制作に走らせたのだろうから,邦題の『暗黒への挑戦』は少し贔屓の引き倒しの感はあるが,彼等への共感なしにこの邦題にはならないのである。

☆ ところでポピュラー音楽がポピュラー音楽たる由縁は,その作品が「強い時代性」を持つことにあるが,それだけでは時代を経ることで「使い古しのフォーマット」になってしまう。ある作品が時代を超越するためには,その作品に「何か」が必要になる。その「何か」こそがポピュラー音楽の秘密であるのだが,DISCO時代の覇者たるアースではない,この力強く匂い立つ音楽の中に,存外その秘密が隠されているのかもしれない。

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「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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