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2019-12

【再掲】 全曲解説 「松原みき ベストコレクション」


初稿:2008年8月30日(閉鎖サイトのリンク消去済)

松原みきベスト・コレクション松原みきベスト・コレクション
(2008/07/16)
松原みき

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1. あいつのブラウンシューズ
2. It's So Creamy
3. Jazzy Night
4. 真夜中のドア/Stay With Me
5. SEE-SAW LOVE(シーソー・ラブ)
6. 愛はエネルギー
7. 三人で踊らない
8. Howa Howa Shuwa Shuwa -宇宙ネコの舌ざわり-
9. 夕焼けの時間です
10. WASH(ウオッシュ)
11. -CUPID-
12. Bay City Romance
13. 恋にお招ばれ
14. Caribbean Night
15. Love for Sale
16. ニートな午後3時
17. ハロー・トゥデイ(Hello Today)

☆ 松原 みき(まつばら みき、1959年11月28日 - 2004年10月7日)は歌手、作詞家、作曲家。 これはウィキペディアの書き出し。彼女が故人となって久しいが,初期の二枚を除いてオリジナルアルバムは再CD化されておらず,同時代の多くのミュージシャンやアイドルシンガー達が次々に「復活」しているのとは対照的にずっと忘れられた存在だった。同世代人でもあるあたしは,偶然彼女がデビューした頃から知っていたのでその事を長く残念に思っていた。まして彼女が所属していたシー・ソーというレーベルのディストリビュータでもあったポニー・キャニオンは「ぼくらのBEST」シリーズでこうした再評価の先頭に立ってきた会社だったから,その思いは特に強かった。今回,曲がりなりにも全期間から選曲されたBEST盤が登場したので,1曲ずつ思うところを書いてみようと思う。ベストが出ても本人がプロモートに登場することは永遠にない。だからこそ,この場所で思いのたけを少し語っても,天国の彼女が微笑んでくれるならそれで良いと思っている(いまさら迷惑だとは思って欲しくない^^;)。

=以下はウィキと最後に載せるサイトの記述を参考にしながら自分の記憶を加えて書いた=

1. あいつのブラウンシューズ
☆ セカンドアルバムに先行して発表された4枚目のシングル。杉真理の手による,ちょっとカントリー風味のあるポップな作品。amazonのレビュアー氏も指摘しているが,シングルヴァージョンだろうと思われる(アルバムは別ヴァージョン)。

2. It's So Creamy
☆ デビューアルバム『Pocket Park』(ちなみにこれは彼女が当時所属していた事務所の名前である)からの選曲。「真夜中のドア」に続くA面2曲目がこの曲だった。最初の曲のインパクトが強いのでそれを和らげるスムーズィな作品。

3. Jazzy Night
☆ セカンド・アルバム『who are you?』(小文字で書くのはThe Who1978年の偉大なる同名アルバムと区別するため^^)のA面最後(5曲目)に入っていた曲で,後に1981年に前後の脈略なくシングル・カットされた。ジャズィというコンセプトが彼女のバックグラウンドを見た三浦徳子(作詞家)のイメージであることは明らか。

4. 真夜中のドア/Stay With Me
☆ 作詞:三浦徳子,作・編曲林哲司というヒット・メイカーのペンによる,記念すべき彼女のデビュー曲。1979年,レコーディングの時は20歳そこそこの新人歌手だったのだが,とてもそうと思えない素晴らしいヴォーカルだ。この曲については稿を改めた方が良いので詳しくは書かないが,バッキングのパーソネルくらい(たぶんギターソロは松原正樹,ベースは後藤次利)書いて欲しかった。パラシュートのバッキングで一番有名な作品は松田聖子のデビューアルバム『SQUALL』だが(実際,新人歌手の松田にヴォーカルを取らせたパラシュートのアルバムという観がある=笑=),この作品の松原はバックに負けてない。どころか,伸びやかに歌い切っている。色々言うヤツがいるが,林哲司の作・編曲がキマッているのは事実だ。文句無く1979年の新人歌手のトップに立つべき作品だった。

5. SEE-SAW LOVE(シーソー・ラブ)
☆ 81年春のタイアップが不発に終わり,彼女にとって迷路に入る時期に発表された通算8枚目のシングル。4枚目のアルバム『myself』にも収録。最初に書いたようにシー・ソーは彼女が所属していたレーベルの名前。偶然だろうがちょっと冗談めかしている。このアルバム,実はAORファンには必聴盤の一枚である。なぜかと言えばL.A.の名うての手だれであるドクター・ストラット(Dr.Strut)が全面的にバックを買って出ているからだ。そのことは彼らが全曲に編曲家としてクレジットされていることからもわかる。こうした当時のAORやフュージョン的なサウンドは松原みきという歌手にはとても居心地の良いものだったのではないかと思う。この曲での彼女のヴォーカルは水を得た魚のように跳ねているから。

6. 愛はエネルギー
☆ 彼女のセカンド・シングルで,もちろんデビューアルバムにも収録(B面2曲目)。このシングルは後年,先ほどの「Jazzy Night」とカップリングで再発された。余談だが,この(オリジナルの)シングルジャケットは,当時WPB誌に彼女が初お目見えした時のグラビアショットのアウトテイクと思われる(衣装が同じだから)。デビュー曲と同じ作詞・作・編曲で,デビューの翌月に早くも発売されたが,これはごく普通の「ニュー・ミュージック風」作品。

7. 三人で踊らない
☆ これも4枚目のアルバム『myself』にも収録された曲。こんなスムーズな曲でも彼女のヴォーカルは滑らかで輝いている。松原みきという歌手はどちらかと言えばハスキィでスモーキィなヴォーカルが魅力だが,こんなシルキィなヴォーカルを取ったこともあることは特筆したい。

8. Howa Howa Shuwa Shuwa -宇宙ネコの舌ざわり-
☆ セカンド・アルバム『who are you?』はちょっと変な手触りがある。大真面目なA面に比べておもしろおかしい世界が展開されている(その中に彼女自身がペンを取った曲が入り,後半の作家としての活動の起点でもある)。お遊びとして軽く流すもよし。でもこのコンピレーションアルバム中,最長の作品なので,評価が分かれるかもしれない。

9. 夕焼けの時間です
☆ これもセカンド・アルバム『who are you?』B面からの選曲。amazonのレビュアーの不満点にCD化された音源からの重複が多いというのがあったが,逆に言えば今までCD化されていない音源が1曲だけCD化されることはまさか無いだろうと期待を持ってしまう。そんな意味でこの作品が意外に健闘すれば「ぼくらのBEST」の中に入ってくれるかもしれない。でもこの曲の彼女のシルキィ・ヴォイスは結構気に入っている。

10. WASH(ウオッシュ)
☆ これは初CD化された音源かもしれない。 「SEE-SAW LOVE」のカップリング曲。これも『myself』のセッションで収録された1曲なので,A.O.R.っぽさに溢れる作品だが,当時のシーンが「フュージョン」と呼ばれたように,ポップ・ロック・ブラックミュージック・ジャズといったいろんな音楽が交差(クロスオーヴァー)して,松原みきというヴォーカリストを触媒にしながら融合(フュージョン)していることがわかる。とても素直でチャーミングなヴォーカル。初CD化なら嬉しい限りである。

11. -CUPID-
☆ 3枚目のアルバム『CUPID』のタイトル曲で,B面のトップにあった曲。このアルバムはA面はDr.Strutを擁し初のL.A.録音。ただし全体のプロデュースはアレンジャーの大村雅朗氏が受け持っているようで,全曲のアレンジにクレジットされている。個人的にはこの曲の松原みきのヴォーカルは好きだ。この囁くようなコケティッシュでシルキィでありながらスモーキィでもある千変万化のヴォーカルは,そこいらの歌自慢のジャズ方面のお姐さま方を遥かに凌駕していた。

12. Bay City Romance
☆ 5枚目のアルバム『彩』からの作品。当時のイメージだとザ・ホテル・ヨコハマから見える氷川丸を思い出させる。前の曲もそうだが,こういう曲を歌わせた時の松原みきのヴォーカルは別人のようにうまい。Aメロからサビに入る短いブリッジの歌い方など凡庸な歌手ならさらっと歌い流してしまうところを,感情を細かく詰めながら小さく丁寧に畳み込んでいく。だから,サビになると押し詰めた感情が解放され,伸びやかに聴こえるのだ。それがサビの最後の切れを良くする。テクニックというより持って生まれた感性の鋭さ,天賦の才能というしかない。そしてこのヴォーカルをもう二度とリアルに耳にすることが出来ないのだ。そのことは限りなく寂しい。

13. 恋にお招ばれ
☆ キャニオン時代の最後のアルバム『LADY BOUNCE』(オリジナルとしては9枚目)からの作品。カシオペアの向谷実がアレンジを担当し野呂一生や和泉常寛の名前も見える。アルバム自体がちょっと毛色の変わった作品であり,ファンの評価も分かれている。ただしジャケットはこれが一番というの(デビュー盤の裏ジャケットもなかなかよかった)が通り相場のようである。ちょっと悪戯っぽくキャプキャピした感じが彼女のイメージにはミスマッチだ。本当は結構こんな感じの女性だったのかもしれない。

14. Caribbean Night
☆ 帯についていたコピーが「お・ま・た・せ!」だった『COOL CUT』(オリジナルとしては7枚目のアルバム)からの選曲。彼女はミュージシャンのアイドル的なところがあるのか,色々なミュージシャンがプロデュースを手掛けている。このアルバムは元四人囃子の森園勝敏がプロデュースしている。ちょっと異国情緒なのは「Bay City Romance」にも通じているが,こちらはもっと「熱帯」ふう。こういう曲ではクールでハスキィでなくスウィートでちょっとウエッティなヴォーカルが聴けるのも楽しい。

15. Love for Sale
☆ 今回ようやく音源が登場した8枚目のオリジナルにして初の全曲カヴァーアルバム『Blue Eyes』の冒頭を飾るコール・ポーターの名曲。彼女がジャズ畑の秘蔵っ子的な存在であったことを改めて思い起こされるこの『Blue Eyes』は,彼女のディスコグラフィー上も単なる「企画物」として流されてしまうが,とんでもない。これこそ再発が一番に待たれる作品だと思う。その証拠にこのアルバムをプロデュースしたのは他ならぬ前田憲男氏であるからだ。他の歌手が「ミュージック・フェア」や「サウンド・イン・S」に出て来てスタンダードを歌っても「ゲスト」に過ぎない。でもこのアルバムの松原みきは,たとえ「サウンド・イン・S」でEVEやタイム・ファイブを従えても楽々と歌い切ってしまうだろう。それくらいの力はあるということを明瞭に示している。一日も早い,再発を望む。若いジャズを志す女性歌手の卵達のためにも。

16. ニートな午後3時
☆ 5枚目のシングル。「資生堂 '81春のキャンペーンソング」としてヒットが期待されたが,カネボウの矢野顕子(「春先小紅」)に惨敗を喫し,恐らく彼女のその後のキャリアに暗い影を落とすきっかけとなってしまった曲。悪い曲ではない。三浦徳子の描く女性は,80年代に入ったばかりのこの時代の女性に相応しい「自立した女」であった。結局こういう女性が80年代をリードしていき,朝日新聞あたりが「元気印」などとヨイショしながらバブル崩壊を招いていくのだが(女性にも朝日新聞にも何の罪も無い)。小田裕一郎の曲もエッジが効いていて悪くない。あえて言えば矢野顕子という「相手」と彼女が関わっていたYMOの盛時で時期も悪かった。そういう事に過ぎない。

☆ そして玄田なんたらとか言う「学者のオッサン」が英国から「NEET」なんて「クズな略号」を仕入れては「学業」と称して「喧伝した」ばかりに,この曲,そして松原みきの名前までが地に堕された事には,腹立たしさを超えて殺気を覚える。だからこの曲についてはレビューは書けないし,書かない。
【2019年12月5日付記 その後別稿にてこの曲についても記載しています。】

17. ハロー・トゥデイ(Hello Today)
☆ これもシングルだけの曲。1980年4月に発表されたサード・シングルで,B面の「街はいつもパーティね」は大村雅朗のペンであるが思い切りマンハッタン・トランスファーしている(笑)。そのせいか,その後のツアーではこの曲(「街はいつもパーティね」)ではなく「トワイライト・ゾーン」をしっかり歌っていた(それも良かった)。少し前に「夜スタ」と思われる「You Tube」を見つけたので紹介したことがある。

☆ アルバムの選曲としては『REVUE』(オリジナルとしては6枚目)とビクター移籍後唯一のアルバム(歌手としてのキャリア上も最後のオリジナルアルバム)『Wink』が抜けているのが不満。また「倖せにボンソワール」や「Paradise Beach」が抜けているのは残念に思う。

☆ でもこうして本当に久しぶりに松原みきの音源を聴いていると,彼女が歌手として遺して来たもののほんの一部でも世の中に出る機会を得たことを嬉しく思う。歌手として,後年は作家として才能の全てを開花させる機会を得られないまま,若くして病で亡くなった彼女のことを思うと,この作品集がきっかけになって,少しでも多くの人に彼女のミュージシャンとしてのメッセージが届けばいいと思う。もう二度と花束をステージの上にいる彼女に手渡すことは出来ないのだから。。。

2019年12月5日付記
「愛はエネルギー」 (1979年12月5日 作詩:三浦徳子 / 作曲:林哲司)



☆ 奇しくもリリースから40年経ちました。まあそう意味では懐メロですね。
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テーマ:Musically_Adrift - ジャンル:音楽

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Author:deaconblue
「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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