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2017-10

「破れたハートを売り物に」 (甲斐バンド 1981年9月21日)



☆ 甲斐よしひろは本質的なロマンチストである。甲斐が書いてきた卓越した作品(「翼あるもの」,「Lady」,「安奈」,「Season」など)には共通のヒロインがいて,それは甲斐よしひろが作り出した(実在しない)ひとつのイデーである。イデー(イデア)はプラトンの言葉で大辞林にはこう書いてある「プラトン哲学の中心概念。個々の事物をそのものたらしめている根拠である真の実在」。

「破れたハートを売り物に」(作詩・作曲:甲斐よしひろ)
※「(マイナス)シングル・コレクションVol.2 (1990年12月19日)」ヴァージョン



☆ 良く知られた「シンセ・ドラムが躍動し過ぎる」シングル・ヴァージョンから肝心のシンセ・ドラムを差し引いたヴァージョンで,メッセージ性はこちらの方が高い。この曲のヒロインも実在しない。いまだに「ひとりぼっち」の主人公の心の中に密やかに棲んでいるだけの存在である。甲斐よしひろは当時この曲について「ひとりぼっちは嫌だ」がキーワードだというようなことを話しているが,それはこの曲の主人公の存在自身であり,彼を取り巻いている関係性のない「世間」との対比でもある。

☆ 近代に個人主義が確立することで,多くの(若い)人は地縁や血縁の軛(くびき)から自由になった。しかし「自由になる」ということは,同時に「すべての物事に自分で責任を持つ」ということでなければならない。そこに「孤独な群衆(デヴィッド・リースマン)」が発生する理由があり,その「孤独」の中からいかに新しい「関係性」を他者との間で取り結んでいくのかという課題が,この時代の主力テーマになっていくのである。

☆ ポピュラー音楽の世界はそうしたセンシティヴな要素が一番表面に出てくる世界であり,甲斐やほぼ同世代である浜田省吾や山下達郎にも同じようなテーマが歌(歌詩)づくりのバックグラウンドになっている(歌詩の現れ方に差はあるが,松山千春なども同じ指向を持っている)。

☆ この曲の主人公は,つかこうへいの言う「傷つくことだけ上手になって」いる存在で,彼がが引き摺るものは甲斐が採取したプレスリーの曲名(ただし曲名のみ)「One Broken Heart for Sale」である。で,これを書くとまたぞろ「剽窃ですか」と言い出す手合いが出てくるのだが,じゃあその「売り物」は誰に対して「売り物にしているのか?」と問いたい。あのね。この主人公は「マッチ売りの少女」と同じなのだよ。そのハートは(さしあたって,もしかすると少女と同じように死ぬまで)自分にしか「売れない」のだよ。だからこの曲は「One」が入らない。むしろ「Every Broken Heart for Sale」なのである。ひとりの問題なんじゃない。群衆ひとりひとりの問題を(不肖^^;)甲斐よしひろが代表して歌っているのだ。

☆ そのメッセージは「漂泊者(アウトロー)」の「誰か俺に愛をくれ」「ひとりぼっちじゃ生きられないさ」と双子をなす。それは「どこにもいない=どこかにいる」,「おまえ」を「見つけ出して」,「二人で」「越えていく」ことを夢見て「さまよう」という図式である。これがロマンチズムでなくて何だというのか。

Live Act Against AIDS '93 (Unplugged Version)


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「Crazy Mama」 (The Rolling Stones 1976年4月26日=B面)


RollStones-Single1976_FoolToCry.jpg



☆ 『ブラック・アンド・ブルー』(1976年4月23日)は,初めて新譜としてリアルタイムに聴いた(と言ってもラジオで聞いただけだし,それもアルバム全曲でもなかった)ストーンズのアルバムだった。数年後に廉価盤になった頃にようやく買って(米国盤の輸入盤バーゲン叩き売りの常連だったのでかえって買う気が無くなっていた)聴いてみた感想は「重い○| ̄|_」。もっともアルバムタイトルではないが,聴けば聴くほどこの「重さ」が馴染んでいくというところはあった(所詮はミー(ハー)ファンの悲しさよ^^;)。

Crazy Mama (Jagger/Richards)


Well you're crazy Mama
ホント,ママ,あんたはイカレてるぜ
With your ball and chain
わけのわからない足枷引き摺って
And your sawn off shotgun
ソードオフ・ショットガンなんか持ち出して
Blown out brains, yeah
どタマぶち抜こうって腹なのかい,おい

300px-Lupara.jpg

You can scandalize me
まったくあんたにゃ呆れ返るばかりだよ
Scorn my name
俺(おい)らも街中の笑い者だ
You can steal my money
あんたに出来るのは俺らの金をふんだくること
And that don't mean a doggone thing
そいつは恨めしいことじゃないんだってな

Cause if you really think you can push it
もし本気で思ってるのなら,マジでやってみな
I'm going to bust your knees with a bullet
こちらも超本気でお返しの弾丸(たま)をお見舞いするぜ
Your crazy mama, ah yeah
たくイカれたママだぜ,ああもう

Well your old time religion
さてお宅の古式ゆかしい信仰では
Is just a superstition
ほんの迷信かもしれないが
You going to pay high prices
お宅が大枚叩(はた)こうってブツは
For your sacrificises
お宅の生贄(いけにえ)でもするのかね

Well your blood and thunder
でお宅らの暴力沙汰は
Sure can't faze me none
ホンのチョッとだって俺らをビビらせちゃいねえよ
If your going to keep on coming
お宅らがそのままやってやろうって腹なら
I'm gonna take it all head on
やれるもんならやってみんさいってこったよ

If you don't believe I'm going to do it
俺が本気にならないことをあてにしてるんだったら
Just wait till you get hit by that bullet
一発食らうまでそこでじっとしてるんだね

Don't think I ain't thought about it
俺がそんなことしないなんて思わない方がいいぜ
But it sure makes my shackles rise
だってこっちはもう足枷なんぞ解いているんだから
And cold blood murder
殺ってやるって凍った血が
Make me want to draw the line
早く一線を越えろって俺らに言ってるんだから

Well your crazy mama
さあてイカれたママさんよ
With your ball and chain
とんだ足枷を引き摺ってきた
Plain psychotic
全くイカれちまった
Plain insane
ホンモノのキ印さんよ
If you don't think I'm gonna do it
もしも俺が何も手を出さないとでも思っているんなら
Just wait for the thud of the bullet
最初の一発を食らうまでそこでじっとしてることだね

☆ 『ブラック・アンド・ブルー』は最初の2曲(「Hot Stuff」と「Hand of Fate」)がレッド・ゼップのⅣみたいに対になっていて,レゲェのカヴァー(エリック・ドナルドソンの「Cherry Oh Baby」。後年「俺達の方がもっと上手だ」とUB40に再カヴァーされてしまった=爆=)とかやたら長い曲(「Memory Motel」ストーンズ最長曲7:07)など結構いろんなアイディアが詰め込まれている。で,最後の2曲がアルバムとほぼ同時にシングルカットされた「Fool to Cry(愚か者の涙)/Crazy Mama」が,これもミックの語りで進行するA面はストーンズらしいロックを期待した(ぼくのようなミーハー)ファンには「あれ?」という曲だった。そしてアルバム最後がこの曲である。何だか重い荷物を背負ってトボトボ歩くような感じがしなくもなかった(苦笑)。



☆ そんなあたりをパンクスなどから嗤われ(でも,よく考えなくてもルー・リードみたいにストーンズも昔からケチョンケチョンに言っていたミュージシャンは結構存在したけど),その反動が『Some Girls(女たち 1978年6月9日)』になっていく。

The Rolling Stones - Crazy Mama LIVE 1997


☆ ロニー,ユル過ぎ(爆)。

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「Ball And Chain」 (XTC 1982年2月26日)


初出:2012年1月30日
イングリッシュ・セトゥルメントイングリッシュ・セトゥルメント
(2011/06/08)
XTC

商品詳細を見る


☆ XTCのシングルをいちばん買っていたのは『Black Sea』から『English Settlement』の頃だから,1980~82年だった。今でも7インチと12インチの輸入盤が残っている。この曲は『English Settlement』からのセカンド・シングルで Colin Mouldingの作品。どっちかというと『Black Sea』の余韻が残る重低音ポップだが親しみやすい曲だ。

Ball And Chain (Colin Moulding)

Save us from the ball and chain,
我らをこの足枷から救い給え
Save us from the ball and chain,
Save us from the ball and chain,
oh yeah,
ああ,
The diggers and the tower cranes,
この掘削機どもやタワークレーンどもから
The diggers and the tower cranes.

Don't want demolition,
打ち壊しをやめよ
Don't want your compensation,
補償金で形をつけようとするな
It's not just bricks and mortar,
ただの漆喰仕立ての煉瓦の家じゃないんだぞ
We are lambs to slaughter.
我々は屠畜場の「か弱き子羊」だ

Save us from the ball and chain,
我らをこの足枷から救い給え
Save us from the ball and chain,
Save us from the ball and chain,
oh yeah,
The diggers and the tower cranes,
この掘削機どもやタワークレーンどもから
The diggers and the tower cranes.

Must we live in fear,
我々は恐れ戦(おのの)きながら生きていけねばならぬのか
From those who shed no tears?
この血も涙もない連中どもに
Our one and only shelter,
我々のたった一つの逃げ場所は
Your games, your helter skelter.
おまえが仕組んだ混沌の遊び場だというのか

Motorways and office blocks,
高速道路やオフィス街で
They're standing on the spot
こいつらはその現場に屹立していやがる
Where stood a home,
そこには我らの家があったところ
Crushing on the memories of people,
人々の生活の記憶や思い出をぶち壊し
Who have since turned to stone.
思い出を石に変えてしまうのだ

(Ahh)
They've turned to stone,
思い出を石に変えてしまう
(Ahh)
They've turned to stone.

Save us from the ball and chain,
我らをこの足枷から救い給え
Save us from the ball and chain,
Save us from the ball and chain,
oh yeah,
The diggers and the tower cranes,
この掘削機どもやタワークレーンどもから
The diggers and the tower cranes.

☆ Ball and chainというのは,囚人が逃げ出さないように足を鎖で繋がれて,その鎖の先が重い鉄の玉になっているという「あれ」のこと。

2017年10月27日付記(訳詩含む)
☆ Wikipedia(英語版)で『English Settlement』の項目を見ると,アルバム(1982年2月12日リリース)は,全英5位(全米48位,カナダ15位),先行シングル「Sences Working Overtime」(1982年1月8日リリース)は全英最高位10位,このシングルは同58位とある。アルバムが2枚組LPであったことを考えてもかなり大きな成功を収めている。アルバムジャケットに描かれているのは「ヒルフィギュア(英語: hill figure)」=イギリスの石灰岩の丘陵地帯に画かれた地上絵」の一つ「アフィントンの白馬(Uffington White Horse/Uffington Horse)」である(詳しくはWikipediaの「ヒルフィギュア」の項参照)。

☆ この曲の歌詩は,数年先の我が国の不動産バブル全盛期を歌っているような感じがする(あるいは1990年代後半以降の中国のそれかもしれぬ)。ロンドン市の再開発の歴史をWikipediaの記事で見ると「ドックランズ(東部、テムズ川沿岸にあるウォーターフロント再開発地域)」という項目があって,こんな記述があった。

> (前略)1960年代から1980年代までにかけてすべてのドックは営業を停止し、ロンドン都心の真横に21平方kmの廃墟が誕生した。ロンドン東部イーストエンドには失業や、それに伴う諸問題が頻発した。
> ドック閉鎖に伴い、再開発が急務となったが、計画を完成させるのに10年、実行に移すのにさらに10年がかかった。1970年代から作業は始まったが、当該地域の地主がグレーター・ロンドン・カウンシル、ロンドン港湾局、電気、ガス、鉄道、5つの区などにわたり問題が複雑になっていた。
> そこで1981年、イギリス環境省によってロンドン・ドックランズ再開発公社(the London Docklands Development Corporation 、LDDC)が設立された。これは政府によって作られた会社であり、ドックランズの土地取得と整地の強大な権限を有していた。もう一つの重要な政策は1982年策定のエンタープライズ・ゾーンであり、該当地域内のビジネス活動には不動産税が免除されるほかさまざまな土地開発の簡略化などインセンティブが与えられた。これによってドックランズ内での開発は企業をひきつけ、一種のブームを起こした。LDDCの政策は、大企業やその勤務者向けの上質なビジネスセンター開発に偏り、手ごろな住宅の開発などを怠っているとの批判を生み、もとからの下町住民には自分たちのニーズは無視されているとの不満を呼んだが、LDDCの開発は(さまざまな異論が残るものの)ドックランズを大胆に変貌させた。1998年、ドックランズの管理が地元の区に戻り、LDDCの活動は終わった。

☆ どうも,このことを歌っている感じがする。そう考えると,この曲の「重低音」は地域住民の意向など一切考えず,ひたすら小奇麗なビジネス街(そこは当然お金を生み出すし,実際にそういう場所になっている。)をパースどおりに仕上げていこうというエリート様の御威光を御旗に,煉瓦と漆喰のちっぽけな家を押しつぶしていく開発という名の怪獣の足音のようにも聞こえてくるから不思議だ。

☆ 1960年代の前半の都会に生まれた人が知っていて,1980年代前半に同じ場所生まれた人が知らないもののひとつに「空(あき)地」があるのではないかと思う。いや勿論1980年代に生まれた人も空地は知っているだろう。でもその「空地」はたいてい駐車場になっていてトラロープを張った枠の中に小型乗用車が平日はズラリと鎮座ましましていたのではないか。

☆ 資本主義の本質はこの「空いているもの」を「埋めていく」ことにあるような気がする。国が豊かになり人々の所得が増えると,例えば自動車を持つ人が増え,駐車場のスペースに空地が侵食されていく。あるいは相続などをきっかけに空地が転売され建物が建つようになる。そうやって空地で草野球などということがだんだん出来なくなっていく。

☆ 物理的な空間を埋めていくと,次に資本主義は時間を埋めていく。機械化は確かに人々の肉体的な負荷を減らしたし,コンピューターは脳の負担を減らした。その一方で減らした分を埋めていくことが求められ「生産性向上」ということが言われるようになってきた。それすら面倒になったのか,人間が考えること自体を機械に任せようとしてシンギュラリティなどと言い始めた。

☆ 気が付けば我々は何ものかに追い立てられながら,同時に暇を持て余すようになっていった。その結果が「正しさ」を巡る果てしない不毛な論争やそこからの跳躍としてのポピュリズム,ナショナリズム,宗教的エンスージアズムだったのではないか。コリン・モールディングが歌った以上に,我々の足枷は重くなってしまったような気がするのである。

今日のカラオケコーナー(YouTube posted by Jim Schreiber)


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「心のラヴ・ソング(Silly Love Songs)」 (ウイングス 1976年4月1日=米、同30日=英)



Silly Love Songs (Paul & Linda McCartney)


You'd think that people would have had enough of silly love songs
きみは世の中の人がつまらない恋の歌にうんざりしてると思っているんだね
But I look around me
だけど,ぼくがつらつら考えてみるに
And I see it isn't so
そうとばかりも言えないんじゃないのかな
Some people want to fill the world
確かに世の中を平凡な恋の歌で
With silly love songs
満たしたいと思っている人も中にはいるさ
And what's wrong with that?
それが何か不都合なことなの?
I'd like to know
教えてもらいたいのだけれど
Cos here I go again
だってぼくもその一人として続けていきたいのだから

I love you, I love you
きみのことが大好きだよ
I love you, I love you

Ah, I can't explain
でもまあ,どう表現すればいいんだろうね
The feeling's plain to me
この感じ,ぼくには良く分かるんだけれど
Now can't you see?
でも,君には分かって貰えないのかな?
Ah, she gave me more
ああ,彼女はその感覚を
She gave it all to me
たくさん,皆まで,僕に呉れるのだけれど
Now can't you see?
やっぱり,君には分かって貰えないのかな?
What's wrong with that?
それって,なにかマズいことがあるのかな?
I need to know
ぼくはその辺が知りたいんだ
Cos here I go again
だってぼくも同じようにやっていきたいからね

I love you, I love you
きみのことが大好きだよ

Love doesn't come in a minute
愛はすぐにやって来るものじゃない
Sometimes it doesn't come at all
もしかしたら全然その姿を現さないかもしれない
I only know that when I'm in it
ぼくに分かることと言えば,もし僕が誰かを好きになったら
It isn't silly, no, it isn't silly
それは馬鹿げたことじゃないってこと,ああ,つまらないことなんかじゃない
Love isn't silly at all
人を愛することは無意味なことなんかじゃ決してないんだ

How can I tell you about my loved one?
ぼくはどうすればきみにぼくが好きになった人のことを話せばいいんだろう?
How can I tell you about my loved one?
How can I tell you about my loved one?
How can I tell you about my loved one?

I love you, I love you
きみのことが大好きだよ
I love you, I love you

Ah, I can't explain
ああ,うまく言えないよ
The feeling's plain to me
ぼくを満たしているこの想いを
Say, can't you see?
ねえ,分からないのかな,きみには?

Ah, he gave me more
ああ,彼はその感覚を
He gave it all to me
皆まで,わたしに呉れるのだけれど
Say, can't you see?
ねえ,あなたは気付いてくれないの?

Ah, I can't explain
The feeling's plain to me
Say, can't you see?

Ah, he gave me more
He gave it all to me
Say, can't you see?

Ah, I can't explain
The feeling's plain to me
Say, can't you see?

Ah, he gave me more
He gave it all to me
Say, can't you see?

You'd think that people would have had enough of silly love songs
きみは世の中の人がつまらない恋の歌にうんざりしてると思っているんだね
But I look around me and I see it isn't so, oh no,
だけど,ぼくがつらつら考えてみるに,そうとばかりも言えないんじゃないのかな,うん,そうだ
Some people want to fill the world
確かに世の中を平凡な恋の歌で
With silly love songs
満たしたいと思っている人も中にはいるさ
And what's wrong with that?
それが何か不都合なことなのかい?

2012年10月24日記

☆ ここでのSillyという言葉は「馬鹿げた」というより「詰んない」とか「ださい」に近い。あるいは「平凡な」とか「ありふれた」というニュアンスもあるだろう。でもこの作品は70年代を代表するポピュラー(ロック)のシングル作品であり,とても非凡な作品だと思う。

☆ もう一つ言えば74年にストーンズが「イッツ・オンリー・ロックンロール(バット・アイ・ライク・イット)」と言った(歌った)のと実に同じ気分が,この曲の中にも流れていると思う。音楽家にとっての音楽とは,そういうものなのだろう。

2017年10月25日付記(英語版Wikipedia)
> But over the years people have said, "Aw, he sings love songs, he writes love songs, he's so soppy at times." I thought, Well, I know what they mean, but, people have been doing love songs forever. I like 'em, other people like 'em, and there's a lot of people I love -- I'm lucky enough to have that in my life. So the idea was that "you" may call them silly, but what's wrong with that?

> The song was, in a way, to answer people who just accuse me of being soppy. The nice payoff now is that a lot of the people I meet who are at the age where they've just got a couple of kids and have grown up a bit, settling down, they'll say to me, "I thought you were really soppy for years, but I get it now! I see what you were doing!"

> By the way, "Silly Love Songs" also had a good bassline and worked well live.

— Paul McCartney, Billboard


☆ 個人的な感想を言えば,この曲は1970年代を最も代表するシングル曲であると思っているし(もちろん「アメリカン・パイ」を筆頭にそれに迫る名曲は星のように存在する),同じ年に山口百恵が歌った「横須賀ストーリー」は日本の1970年代のポピュラーソングの頂点に立っていると思う。そういう意味で(他にも米国の洋楽だけでもイーグルス,スティーヴィー,ピーター・フランプトン,ボストン,フォリナーなどを挙げるべきだし,英国ならピストルズを挙げねばなるないが)1976年は70年代の頂点にある年だったかもしれない。


☆ ウイングスの話題でなくて申し訳ないのだが,遠藤賢司が亡くなった。ぼくは彼のフォーク時代には間に合わず「ハードフォーク」後の作品(『東京ワッショイ』や『宇宙防衛軍』)がリアルタイマーだった。浦沢直樹もこの辺りの彼を知っているから「20世紀少年」(このタイトルじたいがT-REXだ)の主人公にその名を冠したのだろう(ぼくは二人の対談も読んでおり,これが事実であることを知っている)。「哀愁の東京タワー」の平山みきは実見見事なデュエットだったなんて余計なことを考えつつ,「不滅の男」エンケンのご冥福をお祈りいたします。

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「Street Life」 (The Crusaders featuring Randy Crawford 1979年)


初出:2014年7月7日
Ultimate CollectionUltimate Collection
(2005/12/26)
Randy Crawford

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☆ その曲のクレジットとヴォーカルとがしっくりこないという曲がある。それらはインストゥルメンタルのミュージシャンやグループがゲストヴォーカリストを招いてシングルを出しているからだ。この曲も元々クルセイダーズのアルバムのタイトル曲としてランディ・クロフォードがヴォーカルを取ったものである。

ストリート・ライフストリート・ライフ
(2014/06/18)
クルセイダーズ

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☆ クルセイダーズの名義で出されたシングルはブラック17位,ポップ36位という小ヒット(Top40ヒット)に終わったが,ランディはこれがきっかけになり英国で注目を浴びた。この曲は全英5位。その後も「One Day I'll Fly Away」(80年)が全英2位,「Almaz(邦題「スウィート・ラブ」)」(86年)が全英4位と英国で評価され,米本国では「Knocking on Heaven's Door」(言うまでもなくボブ・ディランの「天国の扉」)のカヴァー(エリック・クラプトン,デヴィッド・サンボーンとの共同クレジット)が最高位4位。これが彼女の唯一のTop10ヒットである。

Street Life (Will Jennings / Joe Sample)
※このヴァージョンはランディのソロ作品。



フィーリング・グッドフィーリング・グッド
(2012/09/26)
ジョー・サンプル&ランディ・クロフォード

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2017年10月23日追記
Street Life (Will Jennings / Joe Sample)

I still hang around
Neither lost nor found
Hear the lonely sound
Of music in the night
Nights are always bright
That's all that's left for me, yeah

I play the street life because there's no place I can go
Street life, it's the only life I know
Street life and there's a thousand cards to play
Street life, until you play your life away

You let the people see
Just who you wanna be
And every night you sang
Just like a superstar
The type of life that's played
A temptin' masquerade
You dress and walk and talk
You're who you think you are

Street life, you can run away from time
Street life, for a nickel, for a dime
Street life, but you better not get old
Street life, or you're gonna feel the cold

There's always love for sale
A grown up fairy tale
Prince charming always smiles
Behind a silver spoon
And if you keep it young
Your song is always sung
Your love will pay your way
Beneath the silver moon

Street life
Street life
Street life
Oh, street life

I play the street life because there's no place I can go
Street life, it's the only life I know
Street life and there's a thousand cards to play
Street life, until you play your life away

You let the people see
Just who you wanna be
And every night you sang
Just like a superstar
The type of life that's played
A temptin' masquerade
You dress and walk and talk
You're who you think you are

Street life, you can run away from time
Street life, for a nickel, for a dime
Street life, but you better not get old
Street life, or you're gonna feel the cold

There's always love for sale
A grown up fairy tale
Prince charming always smiles
Behind a silver spoon
And if you keep it young
Your song is always sung
Your love will pay your way
Beneath the silver moon

Street life
Street life
Street life
Oh, street life
Oh, street life
Yeah, street life
Street life
Oh, street life

☆ この時期のクルセイダーズはクロスオーヴァーそのものだったと思う。ハッキリ言って90年代にスムーズとかクワイエット・ストームとか言っていた音の原型はここにもある。それはジャズであって,ソウルであって,AORであって,何よりこの時代における極上のポピュラー音楽であった。ランディの流麗なヴォーカルはミュージシャンという商売の「業」みたいなことも歌っているのに,あくまでも華やかで美しい。ラメの光沢と言えばよいのだろうか。そういえばこの時代のアイドルさんが「ラメ色のデカメロン」という曲を歌っていたが,この曲こそ実にラメ色の十日物語じゃないか(爆)。

You let the people see
あなたは皆に気付かせるの
Just who you wanna be
あなたがどういうものになりたいかってことを
And every night you sang
あなたが歌う夜はいつだって
Just like a superstar
スーパースターのように振舞ってたの

☆ シビれるなぁ...

全米最高位
Single
Hot100 Singles 36位,Black Singles 17位,
Club Play Singles 75位
Album
Hot100 Albums 18位,Jazz Albums 1位,
Black Albums 3位

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「Brown Sugar」 (The Rolling Stones 1971年4月16日=英,5月7日=米)


stones_brown_sugar_single.png


スティッキー・フィンガーズ
スティッキー・フィンガーズ
(2010/12/22)
ザ・ローリング・ストーンズ

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初出:2012年5月16日
☆ 1970年から73年ごろのストーンズは実に泥臭いバンドだったと思う。それから最も黒っぽくなった時期を経て,バンドにとって真の激動期である80年代に突入していく(と思っている)。

「Brown Sugar」 (Jagger/Richards)


☆ 『スティッキー・フィインガーズ』と『エグザイル・オン・メイン・ストリート』はストーンズの最も猥雑な部分がモロ出しになった傑作だと思う。ちなみに自分の知っている限り最悪のこの曲のカバーは,数年前にテレビ●●で放映された「ガ●●の●明け」の中で●山●彦が歌っていたヴァージョンである(爆)。転石は会計系エスタブのあんたには,全然似合わない(lol)と思う。

「Brown Sugar」 (The Rolling Stones ALTERNATE VERSION FEAT. ERIC CLAPTON)


2017年10月21日追記



「Brown Sugar」 (Jagger/Richards)

Gold coast slave ship bound for cotton fields
黄金海岸から出航した奴隷船は一路綿花地帯に向かって進む
Sold in a market down in New Orleans
ニューオリンズの人買い市場で売り捌くため
Scarred old slaver knows he's doing alright
傷痕も悍(おぞ)ましい買い主のジジイは真っ当な商いだと言い張るが
Hear him whip the women just around midnight
あいつが欲望に任せて哀れな奴隷女達を鞭打つ音が真夜中に響き渡る

Brown sugar how come you taste so good?
でもブラウン・シュガー,おまえってどうしてこんなにイイカンジなのさ?
Brown sugar just like a young girl should
そうさブラウン・シュガー,若い娘だったらそうあるべきって事かい

Drums beating, cold English blood runs hot
太鼓の響きは冷たい英国人の血まで熱くする
Lady of the house wonderin' where it's gonna stop
その娼館の女主人は,どうやって指名を行き渡らせるかお悩み中
House boy knows that he's doing alright
使いっ走りの小僧も抜かりはないようで
You shoulda heard him just around midnight
それが聞こえりゃ,真夜中にあいつがどんな格好してるまでわかっちまう

Brown sugar how come you taste so good, now?
Brown sugar just like a young girl should, now

Ah, get along, brown sugar how come you taste so good, baby?
Ah, got me feelin' now, brown sugar just like a black girl should

I bet your mama was a tent show queen
おまえのママが見世物小屋のヒロインだってことに賭けてもいいぜ
And all her boyfriends were sweet sixteen
そいでもって,その友達は皆若さも甘い16歳が勢揃いだってのもな
I'm no schoolboy but I know what I like
俺(おい)らはチェリーな厨房じゃないけど,好みってのはあらあな
You shoulda heard me just around midnight
まあ真夜中になってどんな具合だか聞こえりゃ分かるだろ

Brown sugar how come you taste so good, baby?
Ah, brown sugar just like a young girl should, yeah

I said yeah, yeah, yeah, woo
How come you... how come you taste so good?
Yeah, yeah, yeah, woo
Just like a... just like a black girl should
Yeah, yeah, yeah, woo

☆ 2017年にはなかなか表に出せない歌詩だなあ(核爆)。まあ歌ってる本人が「生涯現役」っぽいんで,許されるのか...




☆ そういえば喫茶店にブラウン・シュガー(本物のお砂糖のほう)が置かれだしたのは,1970年代半ばだったな(それまでは岡本おさみが「襟裳岬」の歌詩で書いていた角砂糖を置いている喫茶店がお洒落な店だった)。で,当然ブラウン・シュガーのスラングとしての意味(これが70年代いっぱいキース・リチャーズを苦しめたのを知ったのはもう少し後のこと)を知っていて,調子こいて2,3個落としていたのも懐かしい(自爆)。

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「やわらかい雨」 (彩恵津子 1986年10月=アルバムリリース)


PASSIOPASSIO
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☆ Wikipediaのカテゴリすら「廃線の遺構」状態で,数年前に出たベストだけが唯一の頼りという極めて残念な状態になっている彩恵津子の第4作『PASSIO』の掉尾を飾る隠れ名曲。このアルバムは2007年1月28日にレビューしているが,その時の参考資料のリンク先も今はなくなってしまったようで,アルバムからのシングル曲ではないが「悲しくないのに涙が出てくる」。少しだけそのレビューからこの曲の部分を引用。

> ☆ 10曲目「やわらかい雨」。アルバムを締める曲で,正直言うと彩恵津子のすべての曲の中でいちばん好きな曲。淡々と続くリズムは,降り止まないか細い10月の雨音のようで哀しい。2CV(ドゥ・シー・ヴォー:シトロエンが誇る「坂道を登れない」43馬力の名車^^;)がさりげなく出て来るのも好きだ。この曲のエンディングで,もう一度先ほど触れたインタールードがコーダとしてアルバムに幕を引く。それは雨の中に消えていく車とそれを見送るしかない残された女(ひと)の哀しみのようで美しくも儚い。

☆ 上記で触れている「インタールード(間奏曲)」は3曲目と4曲目の間に挟まれている短いインタールードのことで,このアルバムのひとつのテーマとなっている。このインタールードをモチーフにした8曲目からの3曲が小さな組曲の形を成していて,10曲目のこの曲がアルバム全体を締めくくるものとなっている。

「やわらかい雨」 (作詩・作曲:彩恵津子 / 編曲:鳥山雄司)



☆ 今では活躍著しい鳥山雄司の名前を初めて目にしたのがこの作品(全ての編曲を手掛け,プロデュースもしている)。作品として残ったものを見れば,良い出会いだったのだと思う。しかし,どんな佳作も目や耳に触れたり入ったりしなければ,永遠のNobody(無名作)であるので,いつの日にか陽が当たることを(つまりある種の奇蹟を)待ち望む外,我々にはなす術もないのである。

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「Breaking Us in Two(危険な関係)」 (Joe Jackson 1982年)




Breaking Us in Two (Joe Jackson)


Don't you feel like trying something new
ねえ,ぼく達のこの関係をどうにかしたいって気にならないか
Don't you feel like breaking out
このまま二人の関係が破綻して
Or breaking us in two
元のひとりとひとりに戻りたいのかい
You don't do the things that I do
きみはぼくがすることをしてくれない
You want to do things I can't do
きみが望むのは,ぼくにはできないこと
Always something breaking us in two
いつだって何かがぼく達を二つに引き裂こうとするのさ

You and I could never live alone
きみとぼくとは別々に暮らすことができなかった
But don't you feel like breaking out
でもきみはそれを崩して
Just one day on your own
きみひとりの暮らしを始めたいとは思っていないのかな
Why does what I'm saying hurt you
なぜぼくの言葉にきみは傷つくの
I didn't say that we were through
ぼく達はもう終わってしまったなんて口にもしてないのに
Always something breaking us in two
いつだって何かがぼく達を二つに引き裂こうとするのさ

They say two hearts should beat as one for us
ふたつの心がふたりのために一つに響き合う時もある
We'll fight it out to see it through
ぼく達はそれを分かろうとするために努力している
I say that won't be too much fun for us
それはふたりにとって必ずしも楽しいことではない
Though it's oh so nice to get advice
でもそれを成すことが困難であるほど
It's oh so hard to do
その助言を得ることがふたりにとっては好ましいことなんだ

Could we be much closer if we tried
ぼく達はお互いに歩み寄る努力をしなければいけない
We could stay at home and stare
ぼく達は家にいる時はもっと互いの姿を見なければいけない
Into each other's eyes
お互いの瞳の中に
Maybe we could last an hour
たぶんそれは1時間でも続けられるだろうし
Maybe then we'd see right through
たぶんぼく達はお互いのことをしっかり見つめられるのだろう
Always something breaking us in two
いつだって何かがぼく達を二つに引き裂こうとするから



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「LOVE IS IN MY SIGHT」 (The SQUARE 1986年3月5日=アルバムリリース)


S・P・O・R・T・SS・P・O・R・T・S
1,572円
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☆ 80年代半ばスクエアは絶頂期に向かっていた。『脚線美の誘惑』で見出した基本的な方向を維持しつつ,2年に3作という信じられないペースでアルバムを送り出し(当たり外れは確かに多少あった),あっという間にカシオペアと並び立つ人気者になっていた。どちらも若く,その割に手練れの演奏技術を持ち,コンセプトの明確なアルバムを発表することで,自らの音楽の方向性を明示しつつそれに見合ったポピュラリティを獲得していた。まあ羨ましい限りである(笑)。

☆ こうしたフュージョンの若手グループが当時目指したのは,当時のF1/M1層のターゲットであった「西海岸」的なもの(これは本当のカリフォルニアではなく,ホットドッグプレスやFineのような雑誌のカラー)をインストゥルメンタルに置き換えることだった。これは彼らの音楽的指向ともたぶん合っていたので「流行に媚を売る」イメージを与えることなく,時代の流れをリードするという非常に都合のよいポジションを確保したことになる。

「LOVE IS IN MY SIGHT」 (作曲:安藤まさひろ)



☆ アルバムジャケットはメンバーがプールで泳ぐ姿だが,この曲のイメージは球技,それもテニスやスカッシュのような速い球速を持つ対抗競技である。相手のコートだとか壁に向かってスマッシュを打ち込む時の,あのフィーリングがある。それは一に爽快感だが,演奏からも窺えるように,むしろ集中力と瞬発力それから飛び散る汗というイメージがある。

☆ こうした肉感ともいえるものが音楽のディジタル化が進むにつれて失われてきたように思うのは,若い時分に汗を飛び散らせる音楽を好んで聴いてきたからだろうか。

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「(I Can't Get No) Satisfaction」 (The Rolling Stones 1965年6月6日=米、8月20日=英)


220px-Satisfaction-us.jpg

初出:2012年5月9日
アウト・オブ・アワ・ヘッズ(紙ジャケット仕様)アウト・オブ・アワ・ヘッズ(紙ジャケット仕様)
(2008/12/24)
ザ・ローリング・ストーンズ

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☆ シンプルな音にシンプルなメッセージを載せることが最も効果的な音楽的煽りであると思う。それは1960年代に入った「まだ若かった」ロックンロール(の担い手)が見つけたことだった。絵空事の恋愛でなく「リアルな日常」を描くことでメッセージとしてのロックンロールは進化した。ビートルズが「抱きしめたい」と歌い,フーが「年寄りになる前に死んでしまいたい」と歌ったように,ローリング・ストーンズは「何ひとつ満足なんかしてないぜ」と言い捨てて世の中を揺さぶった(Rock the world)。

(I Can't Get No) Satisfaction (Jagger/Richards)


☆ 1974年ごろにジェフ・ベックが言ったとされるように(笑),ローリング・ストーンズはスリー・コードの曲を延々と演奏し続けるバンドで,それは彼らがお手本としたリズム&ブルースやそれ以前のブルースの伝統だからだ。そこにはシンプルなものをシンプルに表現することで数多の雄弁を沈黙させるというロックン・ロールの本質がある。

2017年10月14日付記
☆ この曲がリリースされた50年以上前の時代は,この程度の異議申し立てでもオトナ達は目くじらを立てた。こんな「(現状に)満足なんて出来ねえぜ!」って連中は,それこそホモ・サピエンスの歴史とともに存在し,「近ごろの若い者は」の出典も,ぼくが学生の頃は古代ギリシアとか言われていたが,今じゃ古代バビロニアまで遡れるようで,そのうち古代中国と古代エジプトが何らかの証拠を片手にこの記録を更新することが見込まれていそうだ(爆)。

☆ この曲だとか「黒く塗れ」だとか「夜をぶっ飛ばせ」などはどうしても性的なニュアンスで解釈され(これに対して前回の「イッツ・オンリー・ロックンロール」は薬物のニュアンスで放送規制が掛かった気配がする。)いずれにせよ「やんちゃ」とか「ヤバい(本来の意味の)」がこのバンドに付きまとうきっかけになったことは確かだ(反面,ザ・フーには「反抗的」とか「暴力的」というニュアンスがたっぷり振りかけられた。もっともザ・フーの場合は実践者が数名いたのも事実であるが(爆))。

☆ これをソフィスティケイテッドな現代に持ち込めば,自己実現の欲求だとか(アブラハム・マズローですな),自分探しだとかそういった自己啓発系のネタ元にされそうな気配もあるが,ヤバい人と自己啓発系が結びつくと「闇金ウシジマくん」のエピソードのような方向になるので更に拙いかもしれない(沈黙)。

☆ この「満足できないぜ」は同時期のボブ・ディランが歌った「どんな気持ちかい?」と同じくらいの効果を世間に与えた。あいつら(若者)はヤバい。その懸念が現実化するのは3年後の1968年である。いかにも「まだ若かったロックンロール」(浜田省吾「BLOOD LINE (フェンスの向こうの星条旗)」)の時代のことだった。

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「Come On Eileen」 (Dexys Midnight Runners 1982年6月25日)~Too Rye Ayeの謎が解ける




☆ アメリカのチャートにしか興味のない人には,80年代を代表する "OHW" の1曲なんだろうが(大ッ嫌いなコトバなので,略称しか書かない),デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズの「カモン・アイリーン」は不思議なテイストを持った作品だった。ケヴィン・ローランドが2トーン・ムーヴメントの掉尾にデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズを率いて英国シーンに登場した時,1960年代の英国北部で好まれたノーザン・ソウルの継承者(New Soul Vision)として彼は名乗りを上げ,ほどなくプレス(音楽紙業界)と徹底的に対立する。2トーン・ムーヴメントもThe (English) BeatとUB40の登場で音楽的段階を進めていたし,スペシャルズは分裂し,マッドネスは我が道を歩み始めた(そういえばそのどさくさの中から出てきたのがバナナラマだったりするのだが)。こうしたムーヴメントの変化と関係ないところで「トランペットがプレイするバンド」(マーク・ノップラー:ダイアー・ストレイツ「悲しきサルタン」の歌詩)が新たなムーヴメントを作り出すのに成功し,天才ケヴィン・ローランドはそれに飽き足らずバンドの方向を勝手に変えてしまう。称して「ケルティック・ソウル」。

Come On Eileen
(Kevin Rowland / Jim Paterson / Billy Adams)



☆ アイルランドにルーツを持つミュージシャンは多い。ジョン・レノンもそうだし,数年前の夏に「Oliver's Army」を解析したエルヴィス・コステロもそうだ。ケヴィン・ローランドもそうしたミュージシャンのひとりとして誰も見たことも聴いたこともない「ケルティック・ソウル」を勝手に創り出してしまった。そのアルバムのタイトルが『Too Rye Aye(女の泪はワザモンだ!!)』という滅茶苦茶な邦題がついたセカンド・アルバムである。この原題,長いこと意味が分からなかったのだが,この間偶然読んだ本にその答えらしきものが載っていた。それもデキシーズとは何の関係もないところに。。。


同書P.101より引用(これは19世紀以降の米国の船乗りの歌について書かれた部分である)
> (前略部分には船上では出身や肌の色による差別は陸上ほどないということが書かれてある) また,多人種間で優秀と認められていたのがハワイ人だった。ハワイ人は現地語でハワイ人を意味する「カナカ」を姓にして歌に登場することが多く,「ジョン・カナカ」といえばハワイ人の水夫のことである。「船長の声が聞こえた気がしたぞ / ジョンカナカナカ / トゥーレイアイ / 仕事はあした 今日は休み / ジョンカナカナカ / トゥーレイアイ」(「トゥーレイアイ」はアイルランドの歌にある合いの手で,特に意味はない)。

☆ これだ。確かに「カモン・アイリーン」の中でもこの言葉は合いの手のように使われているし,意味もない。だとしたら,変な邦題付ける前に素直に『トゥー・レイ・アイ』で邦盤リリースしとけばよかったのだろうけど,それじゃあ誰も意味が分からないことになるのか。この記述を見てピンと来たのは,このアルバムが前作の「ノーザン・ソウル・リヴァイヴァル」から "アイリッシュ海を越え" 「ケルティック・ソウル」と展開を遂げたことだ。つまり
> 「トゥーレイアイ」はアイルランドの歌にある合いの手
だということ。

Notes(Wikipedia英語版より)
最高位(週間)
No.1:全米(ビルボード/キャッシュボックスとも),豪州,ベルギー,アイルランド,ニュージーランド,南アフリカ,スイス,全英
第2位:カナダ、第4位:オランダ、第5位:フランス、第6位:西独 
(年間=1982年)
No.1:全英、第5位:ニュージーランド、第8位:ベルギー、12位:豪州、28位:オランダ、32位:カナダ
(1983年)12位=全米(ビルボード)、13位(キャッシュボックス)
> The song reached number one in the United States on the Billboard Hot 100 charts during the week ending 23 April 1983.
この曲は1983年4月23日付ビルボードHot100の第1位となった。
"Come on Eileen" prevented Michael Jackson from having back-to-back number one hits in the US: "Billie Jean" was the number one single the previous week, while "Beat It" was the number one song the following week.
「カモン・アイリーン」は,マイケル・ジャクソンの二つのナンバーワン・ソング(「ビリー・ジーン」と「今夜はビート・イット」)に挟まれる形でナンバーワンになっている。

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「Tell Her No」 (The Zombies 米:1964年12月、英:1965年1月)



初出:2012年5月12日

Singles A's & B'sSingles A's & B's
(2002/07/23)
Zombies

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☆ ゾンビーズは1960年代のブリティッシュ・インヴェンジョンの中でも特異な存在で,本国の英国ではTop10ヒットが1曲も無い(英語版 Wikipediaの記述によると,米国での三大ヒット曲のチャートアクションを比較すると「She's Not There」(米国:2位,英国:12位)「Tell Her No」(米国:6位,英国:42位)「Time Of The Season」(米国:3位,英国:チャート圏外)という結果)。更に日本では「I Love You」(英国のみシングルカットするも圏外)をグループサウンズのザ・カーナビーツが「好きさ 好きさ 好きさ」のタイトルで大ヒットさせているので,ゾンビーズの最もコアなファンはもしかすると日本に多かったかもしれない。

☆ ゾンビーズはロッド・アージェントとクリス・ホワイトという二人の優れたソングライターとコリン・ブランストーンという1960年代の英国を代表してもおかしくない才能溢れるシンガーを擁していた。ブリティッシュ・インヴェンジョンのグループサウンズ的な魅力もあったが,そのサウンドの特徴は際立ったクールさで,他のR&Bを母体とする熱いグループとは一線を画していた。それが彼らの人気がいま一つ盛り上がらない理由だったかもしれないが,少なくとも先に挙げた三つの米国でのヒット曲を始めとして,タイムレスなスタンダードたりうる作品群を残している。彼らの60年代最後の作品集『オデッセイ&オラクル』は確かにサイケデリック・ロックの影響を受けた作品であるが,アルバムジャケットほど音はサイケでなく,このアルバムを以てゾンビーズをサイケデリック・ロックの範疇に入れることには同意しかねる。

2017年10月11日追記

ZombiesZombies
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☆ ゾンビーズはブリティッシュ・インヴェンジョンの系譜に属しながら非常に特異なバンドだと思う。バンドには三つの個性(二人のライター=ロッド・アージェントとクリス・ホワイト、一人の卓越したヴォーカリスト=コリン・ブランストーン)があり,三者のバランスが取れればもっと大々的な成功を得られたと思われるが,むしろこの曲,「シーズ・ノット・ゼア」,「タイム・オブ・ザ・シーズン(二人のシーズン)」そして『オデッセイ・アンド・オラクル』と音楽的方向性が見えないまま消えてしまったバンドになってしまった。

☆ Wikipedia英語版の解説では,この曲を書いたクリス・ホワイトは「バート・バカラックとハル・デヴィッドの音楽に影響を受けた」と述べているが,確かにこの曲の個性的なリズム・パターンはバカラックの香りがする。当時は確かジャズ・ロックなんて言われ方をしたのではないかと思う(ただしこの言葉を聞いたのは曲がヒットして10年以上経った頃の話だが)。

Tell Her No (Rod Argent)


☆ この曲でコリン・ブランストーンは "No" という言葉を63回言っているそうだ。こんな名曲だがロックンロール・ベースのヒット曲の全盛期には目立ったヒットになることもなく,英国では65年2月に最高位42位を記録したに留まっている。

☆ 1983年にジュース・ニュートン(当時人気のあったアメリカの若手カントリー・ポップ・シンガー)が「不用意に」この曲をカヴァーしTOP40ヒットになったものの,某山下達郎にケチョンケチョンにされていたのを彼の番組で聞いた記憶がある(爆)。そういえばあまり音楽的に合いそうもない山下と南佳孝の二人が(別々に聴いたのだが)揃ってこの曲を60年代の名曲に挙げていたことは当時の記憶に残っている。

☆ 「ポップ・ソングは3分間の芸術」とはよく聞いた言葉だったが,2分7秒のこれはその基準で言えばたぶんネ申曲なんだろう。

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「The Working Hour」 (ティアーズ・フォー・フィアーズ 1985年2月25日=アルバムリリース)


初出:2014年8月8日
シャウト+7シャウト+7
(2011/11/09)
ティアーズ・フォー・フィアーズ

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The Working Hour
( Roland Orzabal, Ian Stanley, Manny Elias)



These things
ぼくがずっと
That I've
言ってきたこと
Been told
それらすべて
Can rearrange
整理し直すことができる

My world
ぼくの考えのすべて
My doubt
ぼくの抱く疑問のすべて
In time
早晩
But inside out
それも徹底的に

This is the working hour
これが執務時間
We are paid by those
ぼくらは自分達のしくじりで
who learn by our mistake
学んでいる人に養われている

This is the working hour
これが執務時間
We are paid by those
ぼくらは自分達のしくじりで
who learn by our mistake
学んでいる人に養われている

This day
この日
And age
そしてこの時代
For all
全てのものに
And not for one
しかもひとつもなく

All lies
全ての嘘
And secrets
そして機密たち
Put on
進めて
Put on and on
そのままずっと

This is the working hour
これが執務時間
We are paid by those
ぼくらは自分達のしくじりで
who learn by our mistake
学んでいる人に養われている

This is the working hour
これが執務時間
We are paid by those
ぼくらは自分達のしくじりで
who learn by our mistake
学んでいる人に養われている

And fear is such a vicious thing
そしてぼくらの恐れはそんなに酷いものなのか
It wraps me up in chains
それはぼくの身体をぐるぐる巻きにしてしまう

Find out
見つけるんだ
Find out
見つけ出せ
What this fear is about
何がこの恐れの正体なのか

Find out
見つけるんだ
Find out
見つけ出せ
What this fear is about
何がこの恐れの正体なのか

Find out
見つけるんだ
Find out
見つけ出せ
What this fear is about
何がこの恐れの正体なのか



2017年10月9日付記
☆ ティアーズ・フォー・フィアーズに世界的な名声を与えた彼らの第2作『Songs from the Big Chair(シャウト)』の2曲目の作品。The Big Chairの由来は上に示した『失われた私』(フローラ・リータ・シュライバー著 1973年)及び同著の映画化『Sybil』である。このノンフィクションの主人公は16の人格を持つ解離性同一性障害だったという。作品としての「The Big Chair」は「Shout」のB面に収録されたが,LPには収録されず,CDになった後ボーナス・トラックとして加えられた。



☆ ここに示された主題は別の読み解き方もあるけれど,当時の米ソ軍拡競争や核戦争(米レーガン政権は宇宙防衛構想まで考えていた)に対する嫌悪や抵抗(当時は反核運動(=No Nukes)と言われていたもその通奏低音の一つとしてあると思う。反核運動は80年代前半がピークでイギリスのニューウエイブバンドは様々なリアクションを示している。またそれをきっかけとする反戦ソングとしてネーナ「99ルフトバルーン」やポール・ハードキャッスル「19」なども良く知られている。

☆ 反戦と読み解かなくてもジョージ・オーウェルが示唆した独裁の年『1984』を過ぎて,明らかにそういう形での「支配」に対する「警戒」もこのアルバムには溢れている。そしてそのように裏読みもできる曲「Everybody Wants to Rule the World」が彼等を全米No.1に押し上げたのは何かの皮肉なのだろうか?



☆ 矢部宏治が繋いだピース(Piece)は白井聡の提起した問題に対する回答にもなり得ると思う。矢部の手法は典型的なオシント(OSINT:Open source intelligence)であり,烏賀陽弘道も正当に評価するだろうと思う。


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「It's Only Rock 'n Roll (But I Like It)」 (The Rolling Stones 1974年7月26日)


初出:2012年5月2日
イッツ・オンリー・ロックン・ロールイッツ・オンリー・ロックン・ロール
(2011/10/12)
ザ・ローリング・ストーンズ

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☆ 本格的にストーンズを聴き始めた時のリアルタイマーがこのアルバムだった。ストーンズの裏話が面白おかしく吹聴され,肝心のバンドはモスクワでさえ(当時は社会主義ソ連邦の首都)コンサートが出来たのに来日は拒否され「ローリング・ストーンズは来なかった」なんて曲まで出て来る有様だった。この辺は(ポールの失点があったとはいえ)ウイングスも似たり寄ったりで,日本の洋楽・ロックファンにはストレスの溜まる時期だった。
It's Only Rock 'n Roll (But I Like It) (Jagger/Richards)


☆ この曲がどうというより,ストーンズに対して最初に思ったのは,ダルい格好良さだった。なんか遠くの方からドカドカとやって来て,大音量でかったるいロックンロールを響かせて,その歌詩が「たかがロックンロールだって分かっちゃいるが,俺は好きだね」だってさ!そういう感じ。この何とも猥雑な感じがストーンズのロックンロールだと思った。曲のコーダだってそうで,いったん緩みかけた曲を締めあげて,またドカドカっと去っていく。これが良かった。


☆ この曲について書かれた色んなこと。これはプレスを揶揄した曲だとか,そうではなくて聴き手に挑んでいるだとか。まあそれはそれで一面を衝いているかもしれないが,この曲と入れ替わるようにストーンズ自体もミック・テイラーが抜け(この作品タイトルのインスピレーションを与えたという)ロン・ウッドが入ってくるし,ロック自体も60年代ロックの方向性が出尽くした頃にパンク/ニューウエーブが燎原の火のように燃え上がる。その寸前の世界にあってこの曲が存在したというのは興味深い。70年代のクスリ漬けでかったるいストーンズが,そのかったるさを行き着く所まで行き着かせたのがこの曲(とこのアルバム)だったような気がしないでもない。じゃあその次のもっと真っ黒なアルバムはどうなのかというのは,また別の話。

2017年10月7日付記
☆ 日本版Wikipediaの解説より引用。
> 作者クレジットはジャガー/リチャーズとなっているが、曲の原型はウッドが作ったという。このため、クレジットには"Inspiration by Ronnie Wood"と注釈がつけられることがある。「たかがロックンロール、でもそれが大好きなんだ」というフレーズは、ジャガーとケニー・ジョーンズが起こしたちょっとした口論から生まれたものだという(ベストアルバム『フォーティ・リックス』日本版(2002年)の寺田正典による解説より)。こうして原型が出来上がったものをストーンズのセッションに持ち帰り、ミュンヘンのミュージックランド・スタジオに於いて更に練り上げた結果としてできたのが本作である。ミュンヘンに持ち帰ったセッションテープには幾つかの改変が為されており、イアン・スチュワートのピアノが追加されている(『ローリング・ストーンズ/レコーディング・セッション』 マーティン・エリオット著、渡辺淳・訳 (シンコーミュージック) P171)。歌詞にはデヴィッド・ボウイの「ロックン・ロールの自殺者」(1972年のアルバム『ジギー・スターダスト』収録)からの影響が見られるとする指摘がある(『ザ・ローリング・ストーンズ全曲解説』 ジェイムス・ヘクター著、山崎智之・訳 (シンコーミュージック) P194 - P195)。

> シングル盤のジャケットには大きなペンを自分の胸部に突き刺すジャガーのイラストが描かれている。このイラストの意味についてジャガーは「まぁ、気楽なアンチ・ジャーナリズムってやつかな」と説明している(ベストアルバム『ジャンプ・バック〜ザ・ベスト・オブ・ザ・ローリング・ストーンズ』(1993年)付属のライナー・ノーツより)。マイケル・リンゼイ=ホッグの監督によるプロモーション・ビデオも制作され、水兵隊の衣装を着たメンバーが船内をイメージしたセットの中で演奏するシーンが中心となって収められているが、後半からセット内にシャボン玉が充満していくシーンで、シャボン玉の勢いが強すぎて泡が見る見るうちに充満してしまい、後方でドラムを叩いていたチャーリー・ワッツが逃げ遅れる場面も映されている。この映像はYou Tubeのストーンズ公式ページで視聴できる(上のYouTube参照)。

> 1974年7月26日に英米同時にリリースされ、イギリスでは何とか10位につけたものの、アメリカでは最高位16位(ビルボード)に甘んじている。ストーンズの先行シングルがアメリカでトップ10に入らなかったのは1968年の「ストリート・ファイティング・マン」(48位)以来であるが、この曲の場合は全米中のラジオ局で放送禁止の措置をとられたという背景もある(公式写真集『The Rolling Stones 50』(ローリング・ストーンズ著、佐藤志緒訳、ヤマハミュージックメディア刊、2012年、ISBN 978-4-636-88707-5) 175頁)。この結果にストーンズの商業的スランプの端緒と見る向きも多かった。しかしその一方、後述の通りコンサートに採り上げられる機会は多く、また多くのベスト、コンピレーション盤に収録されるなど、ストーンズの代表作の一つという評価を得ている。

Personnel
The Rolling Stones
Mick Jagger – lead vocals, backing vocals
Keith Richards – electric guitar, backing vocals

Basic track on "It's Only Rock 'n Roll (But I Like It)"
Kenney Jones – drums
Willie Weeks – bass guitar
David Bowie – backing vocals
Ronnie Wood – twelve–string acoustic guitar, backing vocals

☆ PERSONELは英語版Wikipediaから採った(同名アルバムのパーソネル)。その結果はご覧の通りである。で,上の日本語版Wikipediaに書いてあるミックとケニー・ジョーンズ(ロン・ウッド同様この時はまだフェイセズに在籍)の話とかロンへの献辞などの意味がここから分かることになる。

☆ この曲,シングルとアルバムはヴァージョン違いの筈で,シングルヴァージョンが収録されているCDもあると思うが,なぜかこの辺の言及がどこにもない気がする。B面の「Through the Lonely Nights(スルー・ザ・ロンリー・ナイト)」は,ストーンズファンには有名なオーファン(孤児)曲(その盤以外に収録されていない)だった。この曲の「その後」については日本語版Wikipediaに次のように書いてある(良かった,良かった(*^_^*))。

> 尚、シングルのB面に収録された「スルー・ザ・ロンリー・ナイト」は、アルバム『イッツ・オンリー…』からの曲ではなく、1973年のアルバム『山羊の頭のスープ』のアウトテイクである。この曲にはジミー・ペイジが参加したとする説がある(アーカイヴシリーズvol.4「ザ・ローリング・ストーンズ['69-'74]」(シンコーミュージック刊、2002年、ISBN 4-401-61774-6)111頁)。この曲は以後、ストーンズのアルバムには全く収録されず、レア・トラックとなっていたが、2005年のコンピレーション盤『レアリティーズ 1971-2003』で初めて公式アルバムに収録されている。

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「いつか街で会ったなら」 (吉田拓郎 Covered 1977年4月25日)




☆ 数年前から新聞の一面広告で五十嵐淳子の姿を見かける。いまふうの言い方をすれば美魔女なんだろうが,彼女の不在を思う時,この曲が思い浮かばれる。日本テレビの刑事ドラマは案外興味がなく,見ていない。後から見たのも探偵ドラマ(「傷だらけの天使」)だし,中村雅俊に至っては出世作の青春ドラマも見ていない。

☆ かくも長きテレビドラマへの不在は,単に塾通いのラジオっ子だったからというあっけない理由である。学校から戻って夕方に軽食を取って学習塾に通うという中学生時代のパターンがゴールデンタイムのテレビを遠ざけ,深夜枠のラジオに生活の楽しみが移った後では,高校になってもそのパターンのままラジオを聴きながら殆ど集中しない勉強をダラダラとやって過ごすなんて日常だったのだろうと思う。

☆ というわけでドラマ自体にはトンと縁がなかったのに,ヒット曲という繋がりでこの時代のドラマの主題歌には深い思い入れがある。日テレの刑事ものなどそんな名曲のオンパレードだったりするが,この曲はその中ではわりと初期の方の作品。

「いつか街で会ったなら」 (作詩:喜多条忠 / 作・編曲:吉田拓郎)



☆ で,「俺たちの勲章」に関連するデータをWikipediaから。
・1975年4月2日から1975年9月24日まで、東宝製作により日本テレビ系列で放送された刑事ドラマ。放送時間は毎週水曜日20:00 - 20:55、全19話。
・吉田拓郎が音楽を手がけたのは、本作が中村主演の『われら青春!』と同じプロデューサーで、気心知れていたため、中村が大ファンだった拓郎に音楽を頼めないかと、プロデューサーに依頼したことによるもの。

☆ 中村雅俊の「いつか街で会ったなら」は,1975年5月1日リリース。編曲は大柿隆。オリコン最高位は週間4位,75年度年間16位。累計130万枚のヒット曲であり,彼の歌唱法をほぼ決めた作品である(スージー鈴木はこのことをよ~く確認すること=爆)。

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「Sail the Waterway」 (スティーリー・ダン 1972年)


☆ Wikipedia英語版のスティーリー・ダンにはこんな記述がある。
In 1972, ABC issued Steely Dan's first single, "Dallas", backed with "Sail the Waterway".
> 1972年ABCレコーズはスティーリー・ダンの最初のシングル盤として「ダラス (B面「セイル・ザ・ウォーターウエイ」)」を発売した。

☆ そして「ダラス」の解説はこうなっている。
"Dallas" is the first single by Steely Dan. It was not on the band's debut album Can't Buy a Thrill but was included on the 1978 compilation Steely Dan. It was later covered by Poco in 1975 on their Head Over Heels album.
> 「ダラス」はスティーリー・ダンのファースト・シングルだったが,デビューアルバム『キャント・バイ・ア・スリル』には納められなかった。ただし,1978年に(日本でのみ発売された)コンピレーション盤『スティーリー・ダン』は収録されている。後年この曲は,ポコが75年作品『ヘッド・オーヴァー・ヒールズ』でカヴァーしている。

☆ そのコンピレーション盤の解説はこうなっている。
Steely Dan is a compilation album by Steely Dan, released in Japan in 1978. It is notable as being the only album release of both sides of the 1972 single "Dallas" b/w "Sail the Waterway", although these are in mono and were sourced from a copy of the single.

> 『スティーリー・ダン』は1978年に日本で(のみ)発売されたコンピレーション盤である。このアルバムは彼らが1972年に発表したシングル「ダラス/セイル・ザ・ウォーターウエイ」の2曲ともが収録されていることで有名なアルバムである。しかし残念なことに収められてる2曲はシングルのコピーから採られたモノラル音源である。

Sail the Waterway (Walter Becker / Donald Fagen)



☆ 見れば分かるようにジャケットは山口小夜子(彼女は本当に,この時代の「スーパーモデル」だった)。彼女の登場はたぶん『彩(Aja)』繋がりだと思うが,こちらのジャケットの方が怖そうである(爆)。ちなみに「ダラス」のクレジットは以下のとおり。

Donald Fagen – electric piano, backing vocals
Walter Becker – bass guitar
Denny Dias – guitar
Jeff Baxter – pedal steel guitar
Jim Hodder – drums, lead vocals
David Palmer – backing vocals
Tim Moore – backing vocals

☆ 「セイル・ザ・ウォーターウエイ」もほぼ同じクレジットだろうと思う(フェイゲンのピアノがアコースティックとかはあるけど)。この2作が『シチズン』(スティーリー・ダンのボックス・セット)にすら収録されなかった理由は良く分からない。とにかく二人とも(あるいはゲイリー・カッツを加えた三人が)この件についてどこかで話をしたというニュースを見たことがないのだ。

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「Parade」 (Magazine 1979年6月=アルバムリリース)


リアル・ライフリアル・ライフ
1,080円
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初出:2013年5月14日(訳詩追加)

☆ マガジンのデビューアルバム『リアル・ライフ』の最後を飾る曲で,珍しくベーシストのバリー・アダムソンが詩を書き(ディヴォートが捕作している)デイブ・フォーミュラが曲をつけている。個人的にはこの曲をもって後のニュー・ロマンティックス(フォーミュラ,ジョン・マッギオーク,アダムソンの三人はそれに深く関わっている)につながるサウンド・プロダクションの原始的萌芽と捉えている。間奏部分のマッギオークのサックスが曲に深みを与えている(彼のような器用なプレーヤーがいなかったから,ニュー・ロマは広がりにかけたのかもしれない)。

Parede (Barry Adamson/David Tomlinson/Howard Devoto)


They will show me what I want to see
彼らはぼくが見たいと思うものを見せてくれるだろう
We will watch without grief
ぼく等は悲しみに沈むことなく見つめることになるだろう
We stay one step ahead of relief
ぼく達は安堵のためほんの一歩そこから歩み出すのだ

You tell me we've been praying
きみは教えてくれる,ぼく達が祈りの中にあるということを
For a bright and clever hell
輝かしく,賢い修羅場のための
I think we've been forced to our knees but I can't tell
ぼく達はたぶん無理やりそこに跪(ひざまず)かされている,だけど僕はそれを告げられない

Sometimes I forget that we're supposed to be in love
ぼくは時に忘れてしまうのだ,たぶんぼく達はお互いのことが好きだということを
Sometimes I forget my position
時にぼくは,自分のいる場所を忘れてしまうのだ

It's so hot in here
ここは何となく暑くないかい
What are they trying to hatch?
彼らは何を企んでいるのだろう?
We must not be frail, we must watch
ぼく達は挫(くじ)けてはいけない,ぼく達はその正体を見届けないといけない

Now that I'm out of touch with anger
今やぼくは,苛立ちを抑えきれなくなっている
Now I have nothing to live up to
今はぼくには,なす術は無くなってしまっている
And I don't know when to stop joking
それなのに,ぼくはいつこの取り止めもない話を止めればいいのか分からない
When I stop I hope I am with you
ぼくにそれをやめる時があれば,たぶんきみがその傍にいる時だろう

Sometimes I forget that we're supposed to be in love
ぼくは時に忘れてしまうのだ,たぶんぼく達はお互いのことが好きだということを
Sometimes I forget my position
時にぼくは,自分のいる場所を忘れてしまうのだ

What on earth is the size of my life ?
いったい全体,ぼくの人生ってものは何なのだ?

It's so hot in here
ここは何となく暑くないかい
What are they trying to hatch?
彼らは何を企んでいるのだろう?
We must not be frail, we must watch
ぼく達は挫(くじ)けてはいけない,ぼく達はその正体を見届けないといけない

Now that I'm out of touch with anger
今やぼくは,苛立ちを抑えきれなくなっている
Now I have nothing to live up to
今はぼくには,なす術は無くなってしまっている
And I don't know when to stop joking
それなのに,ぼくはいつこの取り止めもない話を止めればいいのか分からない
When I stop I hope I am with you
ぼくにそれをやめる時があれば,たぶんきみがその傍にいる時だろう

Sometimes I forget that we're supposed to be in love
ぼくは時に忘れてしまうのだ,たぶんぼく達はお互いのことが好きだということを
Sometimes I forget my position
時にぼくは,自分のいる場所を忘れてしまうのだ

Personnel
Howard Devoto – vocals
John McGeoch – guitar and saxophone
Barry Adamson – bass guitar
Dave Formula – keyboards
Martin Jackson – drums

2017年10月2日付記
NOTE: クレジット中,David Tomlinsonは,Dave Formulaの本名。彼が芸名を使った理由は本名と同姓同名の著名人(俳優)がいたため。本邦における同様な例として,ケラリーノ・サンドロヴィッチ(本名が著名実業家と同姓同名)がある。

☆ マガジンの歌詩の世界はハワード・ディヴォートの美意識に左右されているが,彼のそうした意識がマガジンというバンドを形成していたということもできる。この曲はアダムソンがクレジットされているが,曲のテーマは単純であり複雑でもある。人が誰かを意識し始め,どうやらそれが恋らしいと気付くにはどれほどの時間がかかるのか。それはもちろん一つ一つで異なる。この曲の主人公は,自分の気持ちに素直になれないまま,立ち止まっている。彼の目の前を通り過ぎていく「パレード」はもちろん彼にしか見えない幻想で,それは「輝かしく,賢い修羅場」であることを彼はじゅうぶん認識している。

☆ この曲がニュー・ロマンティックスの原型になったかどうかは評価が分かれる。ただ(ここまで過大評価するのも気恥ずかしいのだが)『クリムゾン・キングの宮殿』の「エピタフ」のような)そのアルバムを通して「その時代」を象徴する作品であることは疑いない。『リアル・ライフ』というアルバムが「ディフィニティヴ・ゲイズ」から「パレード」までの全曲が統一した美意識の中で創作されていることは「パンク/ニュー・ウエイブ」の時代が大きな曲がり角を曲がったことを何より雄弁に示している。「ショット・バイ・ボース・サイズ」は1978年のベスト・ロックンロール作品(「ローリング・ストーン」誌)かもしれないが,『リアル・ライフ』は偶然邦題が何気なしに使った「明日に撃て」のままのアルバム。つまり「ポスト・ニューウエイブ」の時代の号砲となったのだ。

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「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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