2017-09

「You May Be Right(ガラスのニューヨーク)」 (ビリー・ジョエル 1980年3月7日)




☆ この曲がリリースされた時,イントロの効果音に刺激された悪戯が頻発した。たぶんこの効果音をカットする措置が取られたと思う(似たような例としてピンク・レディーのセカンド・シングルが救難信号をイントロにつけていたので,この部分をカットし,フェイド・インで放送したことがある)。それはさておき,前作のジャズマンからいきなりステーキならぬロケンローラーにビリーが化けたのは魂消(たまげ)た。これはニューウエイブが世界的なムーヴメントになっていることの証左でもあった。

☆ ビリーのこの曲は彼のルーツがロックンロールにあることを意味しているのだろうか。あるいはエルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズやジョー・ジャクソン・バンドがぶつけてきた英国発のストレートなロックンロールへの大西洋の反対側からの返答であろうか。同じような返答を米大陸の反対側でリンダ・ロンシュタットが準備していたことも併せて考えるとビリーやリンダ,あるいはそれぞれのプロデューサーだったフィル・ラモーンやピーター・アッシャーは1970年代のロックンロール・リヴァイヴァルではない「何か」をロンドンからの音に感じていたのか,あるいはラモーンズ,カーズ,トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ,ジョナサン・リッチマン&ザ・モダン・ラヴァーズそしてトーキング・ヘッズ,B-52ズ,ディーヴォ,ブロンディと揃ってきた米本国からの逆襲に機会を見たのだろうか。

You May Be Right (Billy Joel)


Friday night I crashed your party
Saturday I said I'm sorry
Sunday came and trashed me out again

I was only having fun
Wasn't hurting anyone
And we all enjoyed the weekend for a change

I've been stranded in the combat zone
I walked through Bedford Stuy alone
Even rode my motorcycle in the rain

And you told me not to drive
But I made it home alive
So you said that only proves that I'm insane

You may be right
I may be crazy
But it just may be a lunatic you're looking for

Turn out the light
Don't try to save me
You may be wrong for all I know
But you may be right

Remember how I found you there
Alone in your electric chair
I told you dirty jokes until you smiled

You were lonely for a man
I said "Take me as I am"
'Cause you might enjoy some madness for awhile

Now think of all the years you tried to
Find someone to satisfy you
I might be as crazy as you say

If I'm crazy then it's true
That it's all because of you
And you wouldn't want me any other way

You may be right
I may be crazy
But it just may be a lunatic you're looking for

It's too late to fight
It's too late to change me
You may be wrong for all I know
But you may be right

You may be right
I may be crazy
But it just may be a lunatic you're looking for

Turn out the light
Don't try to save me
You may be wrong for all I know
But you may be right

You may be wrong but you may be right
You may be wrong but you may be right

☆また この曲で軽視してはいけないことは,その歌詩のラフさ(あるいは過激さ)であろう。「マイ・ライフ」で歌詩の一部が「ばか(おそらくstupid)と聞こえる」というクレームを受けていたビリーがこの曲に選んだ単語の中身は出てきた順に "insane,crazy,lunatic,madness" その他にも "crashed,trashed,combat zone,electric chair,dirty jokes" とまるでパンクスのような言葉遣い(パンクスにしてはかなり上品だが,1980年に30歳の米国人が歌う歌詩にすれば随分なもの)ではある。

☆ このラフさ(それはリンダが同じ年に発表した『Mad Love(激愛)』にも十二分に通じる)は,当時からニューウエイブに刺激されたとか(口の悪いヤツに言わせれば「真似した/利用した」となる),ロックンロールの本家帰りしたとか色々言われてきた。確かにそういう側面があって,そこからパワーを貰ったという解釈は無難な正解だろうとは思う。でも,ミュージシャンが表現するやり方はそんな単純なものだけではないと思う。いやむしろもっと単純なのかもしれない。早い話が中堅どころになりつつあった人気者ふたり(ビリーとリンダ)がそれぞれの方法論で若い(と言ってもメジャーでのキャリア上のことだけだが)ミュージシャンに張り合おうとしたという話ではなかったか。それぞれの音楽に「活」を入れるために。

PERSONEL
Billy Joel - vocals, piano and harmonica
Dave Brown - electric guitar
Richie Cannata - saxophone solo
Liberty DeVitto - drums and percussion
Russell Javors - electric guitar
Doug Stegmeyer - bass guitar

最高位
全米(Billboard Hot 100)第7位,カナダ第6位,南ア第14位,ニュージーランド第23位,豪州第28位,日本(オリコン)第60位


Wikipedia(En)の解説より
.> The song famously begins with the sound of broken glass.
この曲はガラスの割れる音で始まることで有名な作品である。
.> The featured riff of the song loosely borrows from the Buffalo Springfield hit "Rock and Roll Woman" on the Buffalo Springfield Again album.
この曲のリフはバッファロー・スプリングフィールドの『アゲイン』に収録されたヒット曲 "Rock and Roll Woman" のそれを大まかに(サラッと)借用している。

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「Senses Working Overtime」 (XTC 1982年1月)




Senses Working Overtime (Andy Partridge)



☆ XTCの活動をこのアルバムを境に前後半に分けると,このアルバム(『イングリッシュ・セトゥルメント』)が前半の最高傑作になるという人は多い(個人的にはひとつ前の "重低音ポップ" 『Black Sea』がベスト)。確かに3枚目の『ドラムス&ワイヤーズ』辺りからみられたアコースティックの要素がこのアルバムでは前面に出ていて,アンディとコリンの創作意欲も旺盛,バンド初の2枚組アルバム(LP)となったことからも,この作品の評価が高いことは良く分かる(アルバムは全英最高位5位)。

☆ 「Senses Working Overtime」はアルバムからの先行シングル。シングル盤のジャケットが暗示するようにプリミティヴなドラムのリズムから始まるイントロは,どこか土俗的なイメージを漂わせつつ,ブリッジでその音を鮮やかに展開させ,フックでは完全なポップになるという三重構造の凝った展開は,前作の「重低音ポップ」の重さを一気に振り切るだけのパワーがあり,音的にも著しく展開していった。このバンドの本質がポップにあること,それを直截的に示すのではなく形態が異なりながらも(初期はバルー・アンドリュースの跳ねまわるキーボードであり,その後は複雑な音(=『ドラムス&ワイヤーズ』)やひたすら重い音(=『Black Sea』)に託して)「ひねくれたポップ・ソング」を作り出してきたのとは対照的だ。

☆ しかしXTCについて書かれた本(『チョークヒルズ&チルドレン』)にも書かれているようにアンディ・パートリッジはこの辺りから創作へのプレッシャーと一種のステージ・フライト(演奏恐怖症)に取り込まれてしまい,飛躍の機会を失ってしまう。このシングルの題名が "そのこと" を暗示させるという同著の指摘は認めざるを得ないと思う。
Personnel
Colin Moulding – lead vocals, backing vocals, fretless bass, Fender bass, mini-Korg, piano, percussion
Andy Partridge – lead vocals, backing vocals, electric guitar, semi-acoustic electric 12-string guitar, semi-acoustic electric guitar, acoustic guitar, mini-Korg, Prophet V, anklung, alto sax, percussion, frog
Dave Gregory – electric 12-string guitar, electric guitars, nylon-string Spanish guitar, semi-acoustic electric 12-string guitar, Prophet V, mini-Korg, backing vocals, percussion, piano
Terry Chambers – drums, drum synthesiser, percussion, backing vocals



今日のカラオケコーナー(YouTube posted by Jim Schreiber)


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「You Haven't Done Nothin'(悪夢)」(Stevie Wonder 1974年8月7日)



初出:2007年3月27日
You Haven't Done Nothin' (Stevie Wonder)


We are amazed but not amused
ウチらは呆れてるんで,楽しんだりしちゃないよ
By all the things you say that you'll do
お宅らがやりますやりますって言ってる事全ての話だよ
Though much concerned but not involved
深入りしてるような格好しながら決して関わっちゃくれない
With decisions that are made by you
お宅らが並べ立てるのはそんな約束ばっかりさ

But we are sick and tired of hearing your song
でもウチらはお宅らの「お謡い」にはもう心の底からウンザリしてるんだ
Telling how you are gonna change right from wrong
お宅らの決まり文句は「我々がいかにしてこの間違った現状を正していくか」ってヤツさ
'Cause if you really want to hear our views
もしもお宅らが本気でウチらの考えに耳を傾けたいんなら,この台詞を進呈するよ
"You haven't done nothing"!
「お宅らは,何ひとつ,何んにも,しやしないだろっ!」

It's not too cool to be ridiculed
嘲りの種にされてまで落ち着いてはいられないね
But you brought this upon yourself
だけどそれは,お宅らがここに持ち込んできたものじゃないか
The world is tired of pacifiers
ウチらの世間は調停調停でもうウンザリしてるんだ
We want the truth and nothing else
ウチらは真実を望んでいるだけで他に何も望んじゃないんだよ

And we are sick and tired of hearing your song
それでウチらはお宅らの「お謡い」にはもう心の底からウンザリしてるんだ
Telling how you are gonna change right from wrong
お宅らの決まり文句は「我々がいかにしてこの間違った現状を正していくか」ってヤツさ
'Cause if you really want to hear our views
もしもお宅らが本気でウチらの考えに耳を傾けたいんなら,この台詞を進呈するよ
"You haven't done nothing"!
「お宅らは,何ひとつ,何んにも,しやしないだろっ!」

Jackson 5 join along with me say
ジャクソン・ファイブもいっしょに行くぜ
Doo doo wop - hey hey hey
Doo doo wop - wow wow wow
Doo doo wop - co co co
Doo doo wop - naw naw naw
Doo doo wop - bum bum bum
Doo doo wop

We would not care to wake up to the nightmare
ウチらはこの悪夢に眠りを妨げられるのはもうたくさんなんだ
That's becoming real life
これがウチらの実際の生活だなんて現実にね
But when mislead who knows a person's mind
だけど人の心を誤った方向に向かわせる連中がやってくる日にゃ
Can turn as cold as ice un hum un hum
みんなの気持ちは氷のように冷たくなっちまうだろう,ふむふむ

Why do you keep on making us hear your song
お宅らはいつまでその「お謡い」をウチらに聞かせ続けると思っているのかい
Telling us how you are changing right from wrong
お宅らの決まり文句は「我々がいかにしてこの間違った現状を正していくか」ってヤツさ
'Cause if you really want to hear our views
もしもお宅らが本気でウチらの考えに耳を傾けたいんなら,この台詞を進呈するよ
"You haven't done nothing"!
「お宅らは,何ひとつ,何んにも,しやしないだろっ!」
Yeah Jackson 5 sing along again say
ジャクソン・ファイブがもう一回行くぜ

Doo doo wop Doo doo wop - oh
Doo doo wop - co co co
Doo doo wop - sing it baby
Doo doo wop - bum bum bum
Doo doo wop - um Sing it loud for your people say
Doo doo wop - um um um
Doo doo wop - stand up be counted, say
Doo doo wop - co co co
Doo doo wop - ow
Doo doo wop - bum bum bum
Doo doo wop - ah hum

【Notes】「お謡(うた)い」=選挙公約・マニフェスト。

PERSONEL
Stevie Wonder – lead vocal, Hohner clavinet, hi-hats, crash cymbal, keyboard horns, drum programming
Reggie McBride – electric bass
The Jackson 5 – background vocals

全米No.1 1974年11月2日

2007年5月9日付記
☆ 以前,Stevie Wonderの「悪夢」の訳詞を書いていたが,あの表現は独特な言い回しだ。You havn't done (anything).だけで「おまえたちは何もやらなかった」という意味にもかかわらず,nothingとする表現だ。これは二重否定ではなく,否定の強意「おまえたちは,何ひとつ,何も,やってくれない」という意味である。お前たちは何ひとつやりはしないし,仮に何かひとつでも「何かやる」機会があったとしても,その時も「何もしやしない」という,かなり痛烈な皮肉だ。

2017年9月27日追記
☆ きょう掲示しても選挙妨害にはならないよね(爆笑)。すべての永田町人種(政治家・評論家・マスコミ関係者・その他の利権ピープル)に謹んでこの名曲を進呈する。

☆ 選挙権を持っている若い人達は,この曲を聞いたらYou Tubeあたりでこの曲も探して聴いておくといい。
The Who Won't Get Fooled Again(ザ・フー「無法の世界」)

☆ 先週くらいからアメリカのニュースで繰り返し報道されていたのだが,NFLの試合開始時,米国国歌斉唱の際に大統領発言に批判的な選手が起立せず片膝立ちしたり,出てこなかったりというパフォーマンスをして,怒り狂った大統領がかつて自分が進行していた番組の台詞で反撃するなどという「米国内」子供の喧嘩状況(この人物は国連総会で他の「地域」に対して似たようなことをやっていたが)だった。その波紋のひとつとして,ぼくが先日ニュースで見たのは年老いて肥満した(失礼)スティーヴィー御大がその身体を支えてもらいながら「片膝立ち」パフォーマンスをしている姿だった。

☆ 43年前,スティーヴィーは公民権運動の結果を反故にする白人社会に対して強烈なファンクで指弾した。彼のこの精神は年老いて健在である。ぼくは永田町周りの種族を馬鹿にすることと同じ情熱で,この年老いた反抗者に満身からの敬意を捧げる意味で,この曲を急遽,本日の選曲としたのである。

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流行作家(「Paperback Writer」(The Beatles 1966年5月30日)




Paperback Writer (Lennon–McCartney)


Paperback writer
流行作家
(Paperback writer)
Paperback writer

Dear Sir or Madam, will you read my book?
そこのお父(と)っあんにおっ母(か)さん,あちきの新作,読んでくださいましたか?
It took me years to write, will you take a look?
構想数年の大傑作,お目に入りましたでやんしょうか?
It's based on a novel by a man named Lear
こいつはリア王のお話を底本にしてましてね
And I need a job, so I want to be a paperback writer
そうしてあたしゃ仕事が欲しい,でもって流行作家ってえのになりたいんでさあ
Paperback writer
流行作家

It's a dirty story of a dirty man
そいつはちんけな野郎のいだだけねえお話だ
And his clinging wife doesn't understand
ヨメさんは始終纏(まと)わりついてる割には全然それを理解してないときてる
His son is working for the Daily Mail
彼の子供はデイリー・メール紙で働いてる
It's a steady job, but he wants to be a paperback writer
そいつは堅い仕事だけど,ヤツは実は流行作家になるのが夢なんでさあ
Paperback writer
流行作家

Paperback writer
(Paperback writer)
Paperback writer

It's a thousand pages, give or take a few (Frère)
その本はほとんど千ページくらいあるんだ(フレール)
I'll be writing more in a week or two (Jacques)
もう1,2週間もあれば完全に書き上げることができるんだ(ジャック)
I can make it longer if you like the style (Frère)
この文体がお気に召せば,もっともっと書き継いでもいいんですよ(フレール)
I can change it 'round, and I want to be a paperback writer (Jacques)
どういう風に書き換えることだってできますから,ですからあっしは流行作家てのになりてえんですよ(ジャック)
Paperback writer
流行作家

If you really like it you can have the rights (Frère)
本当にお気に召していただけたら,出版権を差し上げますから(兄貴)
It can make a million for you overnight (Jacques)
そいつはあなたを一晩で百万長者にさせてあげますよ(旦那)
If you must return it you can send it here (Frère)
あなたがこれを突っ返すんだったら,こちらに送ってくださいな(兄貴)
But I need a break and I want to be a paperback writer (Jacques)
だけどあっしはこの壁を突破して,流行作家になりてえんですよ(旦那)
Paperback writer
流行作家ってえのにね

Paperback writer
(Paperback writer)
Paperback writer

Paperback writer
Paperback writer

Paperback writer
Paperback writer

Paperback writer
Paperback writer

Paperback writer
Paperback writer

Paperback...

☆ この歌がヒットしている頃の流行作家って誰だろう?日本だったら松本清張だとかまあそんなところ。英国だったらフレデリック・フォーサイスとかジェフリー・アーチャーとか。で,いまだったらこういう人々なんだろう。





☆ ビートルズのシングルはこの曲や別の機会に紹介する曲など3分どころか2分少しで人の心をしっかり掴んでしまうから凄いなあと思ってしまう。

Release 米:1966年5月30日,英:1966年6月10日,日:1966年6月15日
最高位第1位
英6月23日,30日、米6月25日,7月9日
:豪州、カナダ、アイルランド、オランダ、
ノルウェー、スウェーデン、西独
最高位4位:墺、7位:ベルギー

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「Zanzibar(ザンジバル)」 (Billy Joel 1978年10月13日)



初出:2011年10月10日(訳詩追記)


Personnel
Billy Joel:piano, Vocals
Doug Stegmeyer:bass, background vocals
Liberty DeVitto:drums
Richie Cannata:saxophones, organ, clarinet
Steve Khan:electric guitar, acoustic guitar
Freddie Hubbard:flugelhorn and trumpet on "Zanzibar"
Mike Mainieri:vibes on "Zanzibar"

Zanzibar (Billy Joel)




Ali dances and the audience applauds
モハメド・アリの蝶のような舞いに,観客たちは拍手喝采する
Though he's bathed in sweat he hasn't lost his style
それでもヤツは汗まみれで風呂を使う時だってヤツの流儀を忘れたりはしない
Ali don't you go downtown
アリ,ダウンタウンに行ってみなよ
You gave away another round for free
あんたも次のラウンドをタダで楽しめるかもしれないぜ

Me, I'm just another face at Zanzibar
こちとらといやぁ,「ザンジバル」のお客に紛れているが
But the waitress always serves a secret smile
ウエイトレスのお姐さんはこっそり微笑んでくれる
She's waiting out in Shantytown
彼女はシャンティータウンのところでじっと待っていて
She's gonna pull the curtains down for me, for me
それからカーテンをさっと引くのさ,俺(おい)らのために,そう俺らのためにね

CHORUS
I've got the old man's car,
俺らは古き人のクルマを借りて
I've got a jazz guitar
ジャズギターなんか持っちゃって
I've got a tab at Zanzibar
ザンジバルの勘定書をいただいていく
Tonight that's where I'll be
今夜,俺らがいるべき場所のね

Rose, he knows he's such a credit to the game,
ピート・ローズ,ヤツは全くあの試合の称賛の的だった
But the Yankees grab the headlines every time
だけどニューヨーク・ヤンキーズは
いつだってスポーツニュースのトップ記事を握って離さない
Melodrama's so much fun
メロドラマはいつだってお楽しみだ
In black and white for everyone to see
良い意味でも悪い意味でも見てる方にとっちゃね

Me, I'm trying just to get to second base
俺らとくれば,どうやって二盗するか思案の最中で
And I'd steal it if she only gave the sign
彼女が知らん顔でサインを送りさえすれば,キッチリ決めてやるところ
She's gonna give the go ahead
彼女はそのまま続けてって来るので
The inning isn't over yet for me,for me
このイニングもまだ終わりじゃないってこと,俺らにとっちゃ,そう俺らにとっちゃね

CHORUS

Tell the waitress I'll come back to Zanzibar
ウエイトレス嬢に言わないと,ザンジバルに戻る時間だって
I'll be hiding in the darkness with my beer.
俺らは麦酒片手に暗がりに紛れるところ
彼女はシャンティータウンのところでじっと待っていて
She's gonna pull the curtains down for me, for me
それからカーテンをさっと引くのさ,俺らのために,そう俺らのためにね

CHORUS

☆ 生粋のNYっ子らしく,歌の中に野球の話が出てくる。当時は大リーグのことは良く知らなかったが,ヤンキーズくらいはさすがに知っていた。ローズはたぶんピート・ローズのことで,この年までシンシナティ(レッズ)にいたことが分かった。シンシナティはナ・リーグ(中部地区),ヤンキーズはア・リーグ(東部地区)だから,ローズがいかに活躍しようともここじゃヤンキーズの話題がいの一番さというのは大阪(東京・名古屋・広島・福岡・札幌)の土地柄みたいなものだろう。

2015年7月6日記(一部追記)

ニューヨーク52番街/ビリー・ジョエル
¥1,836 Amazon.co.jp


☆ アフリカ大陸の東部,インド洋に面した国家のひとつがタンザニアで,むかし習ったときにタンザニアはタンザニーカとザンジバルという二つの地域に分かれていると教わった。それから何年か経ってビリー・ジョエルの新譜『ニューヨーク52番街』(1978年10月13日)に「ザンジバル」という曲が収められていることに気付いた。

☆ もちろんタンザニアにニューヨークがあるわけはなく,歌詩を聴いていると(その頃はアルバムを買う資金がないという理由でせっせとエア・チェックで新譜を記録していた)バーだかダイナー(軽食堂)の名前のようだった。ヤンキーズの野球の実況をしているのか何だかそういう歌詩も聞こえる。この曲から何年か後に世の中に「カフェバー」なるものが現れ,さらに数年後には「スポーツバー」だとか「キャバクラ」などというモノが現れた。最後の「お姐さん世界(ワールド)」は別にして(爆)訳詞と関係なく曲の世界がイメージできるようになっていた。

☆ いまではWikipediaを見れば,ザンジバルはインド洋上に浮かぶ諸島のことであり,ムスリム圏であり,19世紀には独立していた国家であって,タンザニアと別に独立するがすぐに連合国家となり(だからタンザニアは連合共和国)強い自治権をもって現在に至っていることだとか,この曲のことだとか,『機動戦士ガンダム』に出てくる架空の戦艦のことだとか,いろんなことが分かるようになった。

Wikipedia(英語版)の解説から
> The themes of "Zanzibar" include love of sports, love of alcohol and the singer's attempt to pick up a waitress.
> 「ザンジバル」の主題にはスポーツに対する愛情,アルコールに対する愛情,歌手のウエイトレス嬢をお持ち帰りしようとする努力などが含まれている。

☆ 謎の微笑みのウエイトレス嬢を「お持ち帰り」できたかどうかは,曲からはわからない。先ほどあえて「お姐さん」に言及したのはこういう訳(自爆)。

> According to producer Phil Ramone, Joel had written the music and had decided he liked the title "Zanzibar" for the piece, but had not figured out what to say about Zanzibar.
> プロデューサーのフィル・ラモーンによると,ジョエルは曲を書いた時,「ザンジバル」という言葉の語感が気に入りタイトルにつけたが,ザンジバルが特定のことを指していたという訳ではない。
> Ramone images of people watching television in a bar, and as a result Joel decided to make the song about activity in a sports bar named Zanzibar rather than about the country Zanzibar.
> ラモーンは人々がスポーツバーでテレビ中継を見ているところをイメージしていたが,その結果,ジョエルは(タンザニアの一地域としての)ザンジバルではなく,「ザンジバル」という名の賑やかなスポーツバーのことを曲にしようと決めたのだという。

☆ このアルバムのプロデューサーだったフィル・ラモーン(1934~2013)の述懐だ。やはりスポーツバーの名前が先に来ていてそういう地域(国家)があったのは後で知ったようだ。

> The lyrics include a number of contemporary sports references, including to heavyweight champion boxer Muhammad Ali, baseball player Pete Rose, and the baseball team the New York Yankees, who were the World Champions at the time.

☆ モハメド・アリがレオン・スピンクスと2度戦い,一度失ったWBA世界ヘビー級王座を奪回したのがアルバム発売直前の9月15日のこと。ピート・ローズのシンシナティ・レッズはこの年ナ・リーグ西地区でロサンゼルス・ドジャーズに及ばず2位,もちろんビリーご贔屓のニューヨーク・ヤンキーズがそのドジャーズを降してワールド・シリーズを制したのはアルバム発売の僅か4日後,1978年10月17日のことだった。

2017年9月23日追記
☆ ザンジバル諸島はタンザニアの東沖合のインド洋に浮かぶ島。1963年にイギリスから独立し(ザンジバル王国),翌年のザンジバル革命を経てタンザニア連合共和国に合流したが,現在も強い自治権をもっている。我が家に英語の世界地図がありタンザニアの横のインド洋にわざわざ「ザンジバル」の名が記されている。旧宗主国としてはそういう扱いにした方がよいと判断したのだろうか?


☆ ビリーが『ニューヨーク52番街』をレコーディングしていたのは,1978年7~8月。その頃,モハメド(今だったら「ムハンマド」と表記すべき)・アリは同年2月15日にレオン・スピンクスに奪われた王座を奪回しようとしていた(シングル発売の1か月ほど前の9月15日にスピンクスと戦い,判定勝ちしWBA世界ヘビー級王座を奪回している)。

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「I'd Really Love to See You Tonight(秋風の恋)」 (England Dan & John Ford Coley 1976年5月)


初出:2013年10月22日
ヴェリー・ベスト・オブヴェリー・ベスト・オブ
(2012/06/13)
イングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリー

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☆ イングランド・ダンことダン・シールズはシールズ&クロフツで有名なジム・シールズの弟。彼が高校時代からの友人ジョン・フォード・コリーと組んだデュオが放った最大のヒット曲がこの曲。彼らはソフト・ロックがAORに移行していく時期を代表するデュオだが,AOR側が見落としているのか(あるいは本邦ではお馴染みのディストリビューションの問題)そのヒットの割に代表作の復刻もない,ちょっと気の毒な立場にある。

☆ デュオは1971年にデビューしているが数年の沈黙の後,76年に発表したアルバム『Nights Are Forever』からのファースト・シングル「秋風の恋」が予想外の大ヒット(全米最高位2位)となった。この後も数曲のTop10ヒットを持っているが,80年のデュオ解散後,ダン・シールズはカントリー音楽に転じかなりの成功を収めている(2009年没)。ちなみにこの曲ビルボード・イージーリスニング・チャート(アダルト・コンテンポラリー・チャートの前身のようなもの)では1位になっている(1976年8月21日)。秋風にはちょっと早い時期だった。

☆ ちなみに歌詩の大意は,むかし付きあっていた相手に久しぶりに電話をかけて「逢いたいから今夜こっちに来ない」と誘っている感がある(笑)。そういえば歌詩の中に「風」が出てくるのをしっかり捉えた邦題もなかなかイイ線行っていると思う。

2017年9月22日追記

秋風の恋秋風の恋
1,700円
Amazon



I'd Really Love to See You Tonight (Parker McGee)


Hello, yeah it's been awhile
やあ,本当に久しぶりだね
Not much how 'bout you?
そっちは変わりないのかい
I'm not sure why I called
別に電話する用事もなかったんだけどさ
Guess I really just wanted to talk to you
何となくきみの声が聞きたかったんだよ

And I was thinking maybe later on
それでぼくは,あのあとちょっと考えてみたんだ
We could get together for awhile
もしぼく達がもう少し我慢して一緒にやっていればねって
It's been such a long time
なんだか随分時間が経ってしまったような感じだけど
And I really do miss your smile
でも,君の微笑みがなくなってしまってとても寂しく感じているんだ

I'm not talking 'bout movin' in
ぼくは物事を進めていいかどうか君に語る資格なんかないけれど
And I don't want to change your life
君の今の暮らしを変えてしまうようなこともしたくないけれど
But there's a warm wind blowing the stars around
こんな星空の下(もと),温かな風に吹かれていると
And I'd really love to see you tonight
どうしたって今夜君に逢いたいと思ってしまうのさ

We could go walking through a windy park
ぼく達は風の強い公園を二人で歩いたこともあった
Or take a drive along the beach
あの浜辺まで長いドライブにも出掛けたことや
Or stay a home and watch TV
部屋の中で二人でテレビ番組を見ていた日もあった
You see it really doesn't matter much to me
あの思い出達がぼくに関係無いことだなんて思わないだろう

I'm not talking 'bout movin' in
And I don't want to change your life
But there's a warm wind blowing the stars around
And I'd really love to see you tonight

I won't ask for promises
約束してくれなんて言うつもりはないから
So you won't have to lie
きみも自分の気持ちを偽らなくてもいいんだ
We've both played this game before
ぼく達はこんなゲームを昔二人でやっていたのさ
Say I love you
愛してると言ったり
Say goodbye
サヨナラさと言ったりしながら

I'm not talking 'bout movin' in
And I don't want to change your life
But there's a warm wind blowing the stars around
And I'd really love to see you tonight

I'm not talking 'bout movin' in
And I don't want to change your life
But there's a warm wind blowing the stars around
And I'd really love to see you tonight

☆ このデュオ最大のヒット曲は,76年夏に全米最高位2位(ビルボードHot100,キャッシュボックスは同4位)を記録。ちなみにNo.1はホワイト・ファンク・ディスコの名作ワイルド・チェリーの「プレイ・ザット・ファンキー・ミュージック」でなかなか対照的な2曲が並んでいる(爆)。ちなみにビルボードのアダルト・コンテンポラリー・チャートでは当然No.1(苦笑)。他国ではカナダ5位(ここもアダルト・コンテンポラリーはNo.1),ニュージーランド15位,豪州25位,英国26位。


☆ ところで日本経済新聞の湯川れい子の「私の履歴書」が毎日読ませる(爆)。今日(9月22日)は大発見だった。「涙の太陽」が英語曲だということはサンディー(アンド・ザ・サンセッツ)がオリジナル盤をカヴァーしていたので知っていたが(個人的には当然安西マリアの「♪ぎ~らあ,ぎ~らあ,たいようが~」ヴァージョンなんだが(自爆)),まさかそれが「なんちゃって洋盤」で覆面とはいえ湯川れい子の作詩家処女作だったとは(驚愕)。

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夏服を脱ぐとき(朱夏⇒白秋)




☆ 誰も言わないので声を大にして言うのだけれど(自爆),1980年代の邦楽アルバムのTop10に入る(個人的に)『BOOGIE WOOGIE MAINLAND』(杏里1988年5月21日)の9曲目にしてシングル「SUMMER CANDLES」(1988年7月13日)のB面曲(ちなみに「SUMMER CANDLES」はアルバムを締める10曲目にして90年代前半の結婚式における新婦の友人代表選曲No.1らしいバラード)が「最後のサーフホリデー」だ。

☆ 以前『BOOGIE WOOGIE MAINLAND』のレビューで書いたように(そのうち再掲予定^^;),このアルバムは吉元由美(作詩)と杏里(作曲)と小倉泰治(編曲)で丁寧に作り上げた「お洒落な不良達のバイブル」である。この雰囲気は確かにバブル世代の息吹を濃厚に感じさせるところもある。だがそこには同時に10年前に三浦徳子や竜真知子が描いていた女性像がそのまま深化してセルフ(自己)をしっかり掴んだ彼女達の姿(あるいは世代のバトンを受け取った「次代の彼女達」)が見えるのである。吉元はアルバムに寄せたNoteでA面の彼女達がB面でどう変わっていくかをアルバムの主題として挙げている。この世代感覚は同時代の(専業)女性作詩家の中では銀色夏生と双璧だろうと思う。

「最後のサーフホリデー」
(作詩:吉元由美 / 作曲:ANRI / 編曲:小倉泰治)



☆ 曲の中にも対置されるコトバがある。「灼けてない」⇔「(素肌から)消していく」,「はしゃいでた頃の私達」⇔「さみしい大人」。前後が逆になっているのも上手い。現実(「灼けてない」)←過去(「消していく」),過去(「はしゃいでた」)→現実の方向(「さみしい」)と並べると,これがどうしようもないことであることは明白だ。終わらせなければならなかったから終わらせたのであって,終わった筈の記憶は記憶で無くなれば意味がなく,それはさみしいことだがどうしようもない。と循環してしまう。この心理の綾を軽めのビートに乗せて歌い切ったのは当時の彼女がそれなりに倖せの中にいたこともあるだろうし,それよりも自分の方向をしっかり掴み取った自信の方が大きかったのだと思う。

☆ でもこの曲を聴くと人はこうやって(たぶん他人に言えないほどに)傷つきながら季節を変えていくのだろうなと思う。夏服はもう着られないけれど(少なくとも今年は),まだ秋を迎えたわけではない。そんな中途半端な遣る瀬無さも幾分,曲の中に溶け込んでいるような気がする。だから最後に「SUMMER CANDLES」で締める必要があったのかもしれないが。


☆ たまたま7時のニュースを見ていたら安室奈美恵さんが引退を予告したことがニュースになっていた。産休から復帰し第一線にカムバックしてからの活躍も印象が強く残っている。40歳になったことを期にそういうことを決めた、という話だった。

☆ 興味深かったのは(見ていた)NHKの女性アナウンサーが彼女にかなり影響を受けたようなことを話していたことで,じゃあその昔は分厚いヒールのブーツを履いていたのかなとか,家に帰ったらご主人に「きみはアムラーだったの?」と言われる(かもしれない)光景などつまらないことをいろいろ考えてしまい,つくづくジジイってヒマ人なんだと自己嫌悪(自爆)。

☆ もう一つ興味深かったのは彼女が引退期日を特定していること。それもなぜか来年の今月今夜(2018年9月20日=彼女の41歳の日)ではなく4日前の9月16日(とNHKのアナウンサーは話していた)だという。このことに何となく引っ掛かりを覚えたのであった。

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「New Kid In Town」 (Eagles 1976年12月7日)




初出:2006年12月31日 (2013年9月18日再掲)
New Kid In Town
(Don Henley, Glenn Frey, J.D. Souther)


There's talk on the street; it sounds so familiar
街角から聞こえる話し声は,いつもと変わらないようにみえるけど
Great expectations, everybody's watching you
みんながお前を見る目は好奇心に満ちあふれている
People you meet, they all seem to know you
お前が出会う人々は皆,お前のことを昔から知っているようにみえるけど
Even your old friends treat you like you're something new
お前の古い友達たちですら,お前を何か新しい者としてもてなしてくれるだろう
Johnny come lately, the new kid in town
時代は変わってしまった。新しいやつがここにもやって来る
Everybody loves you, so don't let them down
みんなお前を歓迎しているんだ。だから彼等をがっかりさせないでくれ

You look in her eyes; the music begins to play
音楽が鳴りだしたら,お前はあの娘の瞳に釘付け
Hopeless romantics, here we go again
やるせない片思いで終われば,また出直すだけなのさ
But after awhile, you're lookin' the other way
だけど,お前はすぐに別の道に辿り着いて
It's those restless hearts that never mend
やっぱりやるせない心を落ち着きなく持て余すことになる

Johnny come lately, the new kid in town
時代は変わってしまった。もう新しいやつらの時代なんだ
Will she still love you when you're not around?
お前が傍に居なくても,あの娘はお前を慕い続けてくれるだろうか?

There's so many things you should have told her,
お前にはあの娘に伝えるべき事がたくさんあるというのに
but night after night you're willing to hold her,
それなのに夜ごと夜ごとお前は彼女を抱きしめようとするだけ
Just hold her, tears on your shoulder
ただ抱きしめるだけ,そして彼女の涙がお前の肩を濡らすだけ

There's talk on the street, it's there to remind you,
街角でお前のことを思い起こさせるように噂話が聞こえる
that it doesn't really matter which side you're on.
でもそれはどのみち大したことじゃない
You're walking away and they're talking behind you
お前が通り過ぎた後で聞こえる話し声からは
They will never forget you 'til somebody new comes along
誰か新しいヤツが来るまで,皆お前のことを忘れたりはしないのさ

Where you been lately? There's a new kid in town
最近,どこにいたのさ?また新しいヤツがやって来たのに
Everybody loves him, don't they?
皆そいつのことに首ったけなんだろう,違うのかい?
Now he's holding her, and you're still around
今じゃあの娘のハートはあいつがガッチリ掴んでいる,そしてお前はただその周りをうろつくだけ
Oh, my, my
ああ。何てえこったい。

There's a new kid in town
新しいヤツがやってくる
Just there's a new kid in town
そうさ,新しいヤツがやって来る
Ooh, hoo
Everybody's talking 'bout the new kid in town
皆新しいヤツの噂でもちきりさ
Ooh, hoo
Everybody's walking' like the new kid in town
皆新しいヤツの真似をして歩いていやがる

There's a new kid in town
新しいヤツがやって来る
I don't want to hear it
そんな話は聞きたくない
There's a new kid in town
新しいヤツがやって来る
I don't want to hear it
そんな話は聞きたくない
There's a new kid in town
新しいヤツがやって来る
There's a new kid in town
新しいヤツがやって来る

There's a new kid in town
新しいヤツがやって来る
Everybody's talking 'bout
皆,噂で持ちきりさ
There's a new kid in town
新しいヤツがやって来る
People start walkin'
皆がそっちへ歩き出す
There's a new kid in town
新しいヤツがやって来る
There's a new kid in town
新しいヤツがやって来る
There's a new kid in town
新しいヤツがやって来る
There's a new kid in town
新しいヤツがやって来る

【Note】
Johnny come lately
・ イディオム。時代に遅れた者。時代おくれ。
  ここでは更に強意で「時代は変わってしまった」と意訳。

☆ カントリー(もしくはラテン)・フレイヴァー溢れるこの曲「New Kid In Town」 は,発売当初からその「モデル」について,いろいろと言われていた。典型的な説は,これは当時「Rich Girl」が大ヒットしていたホール&オーツのダリル・ホールのことを指しているのだというものだ。もっともイーグルスのデビューが1971年なら,ホール&オーツのデビューも1972年である。ホール&オーツの初期は不遇と言っても良かったが,74年には「She's Gone」で初ヒット,翌75年の「Sara Smile」で初のTop10と,キャリアの面では決してワン・ヒット・ワンダーでも「New Kid」でもない。

☆ そこで「Hotel Calfornia」の解釈に戻る。「Hotel Calfornia」の悪夢が,西海岸の音楽業界の現実に触れているとするなら,「New Kid」もまた,新たにショウビズの街に入り込んできた新参者を描いているのではないか。つまりこの曲には特定のモデルが居るのではなく,夜の男を描いた「Hotel Calfornia」と表裏一体になっているのではないか。だから
Johnny come lately, the new kid in town(時代は変わってしまった。もう新しいやつらの時代なんだ)
という一節が光るのではないかと思う。

☆ それは緩い曲調とは異なり,淡々と語られる物語(普遍的な話としても十分に通用する)に,そこはかとなく流れる優しさは,十分に傷ついた者だけが語ることができるような痛みを隠しているようにも感じる。そしてそこに暖かさを感じるのは,グレン・フライのリードにパイ皮のように柔らかく重ねられたコーラス・ワークのせいだろう。今思えば『Hotel Calfornia』からこの曲を先行してシングル・カットしたことは,戦術として正解だったと思う。曲順通りタイトル曲からカットしていたら,この曲の印象が翳んでしまったことだろう。

☆ ひと言付け加えておくが,共作者としてJ.D.サウザーの名前が挙がっている。彼の持ち味でもあるマイルドさが,この曲を味わい深いものにしているのだと思う。

2017年9月18日追記
☆ Wikipedia英語版のこの曲の項目を見ると,J.D.サウザーが最初にこの曲のコーラス部分を書いたそうだ。サウザーによるとこの曲に取り組み始めた時にはヒットの予感がしたが,どのようにすればいいか分からなかったという。数年後,サウザーはヘンリーとフライと一緒に『ホテル・カリフォルニア』に収録する曲を作っていた時にこの曲のことを思い出し,三人で残りの部分を書き上げたとある。あとこの曲が世に出た時,これは(『明日なき暴走』でいっせいを風靡していた)ブルース・スプリングスティーンが曲のモデルだと噂されたことがあったが,サウザーはそれを否定したという話もあった。また日本版ウイキペディアには曲のモデルがホール&オーツだとグレン・フライが認めた旨の記載もある。

PERSONEL
Glenn Frey(November 6, 1948 – January 18, 2016): Lead vocals, acoustic guitar
Don Henley(July 22, 1947 –): Drums, percussion, harmony & backing vocals
Don Felder(September 21, 1947 –): Lead guitars
Joe Walsh(November 20, 1947 –): Fender Rhodes electric piano, Hammond organ
Randy Meisner(March 8, 1946 –): Bass guitar, guitarrón mexicano, backing vocals

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「Movin' Out (Anthony's Song)」(Billy Joel 1978年5月21日=Japan Release Side-B)


初出:2006年3月12日



Movin' Out (Anthony's Song) (Billy Joel)


Anthony works in the grocery store
アンソニーはコンビニで働きながら
Savin' his pennies for someday
将来のための小銭を貯めこんでいる
Mama Leone left a note on the door,
帰ってみると,ママ・レオーネがドアのところに書置きを挟んでいた
She said,
そこにはこう書いてあった
"Sonny, move out to the country."
「ソニー,田舎に引越しましょう。」
Workin' too hard can give you
根をつめて働き過ぎると,
A heart attackackackackackack
いつか心臓発作で死んでしまうわよ。
You oughta know by now
そろそろ気付かなくちゃ。
Who needs a house out in Hackensack?
ハッケンサック郊外の一戸建なんて誰に必要だというの?
Is that all you get for your money?
そんなもののためにお金を溜め込んでいるの,貴方は?

And it seems such a waste of time
それが時間を無駄にするだけに思えるなら
If that's what it's all about
もしもそれが貴方の人生のすべてだというのなら
Mama, If that's movin' up then I'm movin' out.
ママ,それが勝ち組の人生だというのなら,ぼくはここから立ち去るだけさ
Mmm, I'm movin' out. Ooh-hoo, uh-huh, mmmm
Mmm,僕は出て行くだけさ,Ooh-hoo, uh-huh, mmmm

Sergeant O'Leary is walkin' the beat
サージェント・オライリーはビートで働いているが
At night he becomes a bartender
夜はバーテンダーの職につく
He works at Mister Cacciatore's down
サリヴァン通りを下り
On Sullivan Street
医療センターを越えたところにある
Across from the medical center
Cacciatore'sの店だ

Yeah and he's tradin' in his Chevy for a Cadillacacacacacacacac
彼は自分のシボレーをキャディ(ラック)に買い替えたくって仕方ない
You oughta know by now
でもそろそろ気付かなくちゃいけないのさ
And if he can't drive
もしも車をほんの少しでも傷つけずに
With a broken back
この街を走り回りたいのなら
At least he can polish the fenders
せいぜい休日の車磨きに精を出す程度の事にしかならないって事に

And It seems such a waste of time
そんなことは時間の無駄じゃないか
If that's what it's all about
もしもそれが自分の人生だというのなら
Mama, If that's movin' up then I'm movin' out.
それで満足だというのなら,ママ,ぼくはここから立ち去った方がましだよ
Mmm, I'm movin' out. Ooh-hoo, uh-huh, mmmm
Mmm,僕は出て行くだけさ,Ooh-hoo, uh-huh, mmmm

You should never argue with a crazy mi-mi-mi-mi-mi-mind
ムキになって言い返しちゃダメだよ
You oughta know by now
そろそろ気付かなくちゃいけない
You can pay Uncle Sam with the overtime
アンクル・サムの小屋(この国)のために働き詰めで
Is that all you get for your money?
人生の全てを金儲けのために賭けているのかい?

And if that's what you have in mind
それだけが貴方の頭の中を占めていることだったら
yeah if that's what you're all about
もしもそれが自分の人生だというのなら
Good luck movin' up 'cause I'm movin' out.
成功を祈るよ,でもぼくはここからおさらばさせて貰おう
Mmm, I'm movin' out. Ooh-hoo, uh-huh, mmmm
Mmm,僕は出て行くだけさ,Ooh-hoo, uh-huh, mmmm

I'm movin' out...
ぼくは先に行くよ...

☆ いつの世の中でも,功名を求める人は多い。功名ビジネスというのもまた盛んで,我こそは成功者という人物に限って,本を出し講演会を開くことがいつの間にかビジネスの中心になっている。いまどき一番の暴落株言葉である「カリスマ何とか」のご登壇に下々は黙って見上げるのみであろう。

☆ でもそんなことはどうでもいいじゃないか。勝手に成功して,勝手にマスコミに持て囃され,勝手に堕落して,勝手に没落すればいい。出来ることなら,復活せずに静かに消えてもらいたいとは思うけど(爆)。そんな人生模様が,この曲から鮮やかに浮かび上がってくる。どうせ俺達はラテンなキリギリスだよ。でも一所懸命に生きているんだから,それでいいじゃないか。ここには,ニートも下流社会もない。日々の暮らしに追われる普通の人々の姿が鮮やかに描かれている。それは1977年のニュー・ヨーク・シティの人間模様だったかもしれない。でも勝ち組からニートまで揃った2006年の日本より,よほど共感を感じるのだ。

2011年11月26日付記
☆ 自分で言うのも恥ずかしいが,5年半以上も前に書いたことからいまだに一歩も前進出来ていない(爆笑)。むしろ世の中の方が余程悪くなっている気がするほどである(再爆)。

☆ 1970年代の半ば高校1年相当の英語(Reader)のテキスト教材の中に「アメリカ人は動き回るのが好きだ」という話題があった。そのリーダーを読んだのは残念ながら1976年の春学期だった。2年遅かったら,この曲を聴いていたら,そのレッスンだけは相当良い成績が取れたに違いない(失笑)。まるでこの歌のことを暗示したような内容だったのだから!

2013年4月29日付記
R.I.P. Philip "Phil" Ramone (January 5, 1934 – March 30, 2013)

(いずれも内容は2006年3月12日と同一)

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「High Gear」 (Niel Larsen 1979年)



ハイ・ギアハイ・ギア
1,620円
Amazon



☆ トミー・リピューマ(July 5, 1936 – March 13, 2017)がその名を上げたのはワーナー時代のジョージ・ベンソン『ブリージン』(1976年5月)だが,大活躍となったのはA&M傘下のホライゾン・レコードにいた1978~9年だろう。リピューマは彼が事実上立ち上げたクロスオーヴァー/フュージョンの若手アーチストを探しに日本に訪れカシオペアとYMOを発掘した。後者がクロスオーヴァーでないのは明白だが(爆),いずれにせよリピューマの手柄である。その後の彼のキャリアに輝きを添えるのはナタリー・コールの『アンフォゲッタブル』(1991年6月11日)だが、それはまた,別の話。

☆ 彼がホライゾンで手掛けた一人にニール・ラーセンがいて,ラーセンが二つのフルムーン(バンド)の間のソロ・キャリアとして残した2枚のアルバム『Jungle Fever』と『High Gear』は彼のプロデュース作である。

High Gear (Niel Larsen)



PERSONEL
Key.Neil Larsen
G.Buzz Feiten
B.Abraham Laboriel
Ds.Steve Gadd
Perc.Paulinho DaCosta
Ts.Michael Brecker

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音楽を評論するということ


初出:2007年4月29日 (一部改稿)
☆ 音楽を評論するということには幾つかの側面がある。そのひとつにはその音楽の成り立ちという視座がある。その応用では歌の「ことば」と「曲」を分けて,それぞれの成り立ちを捉えることがある。それはその音楽あるいは作品に至る過程(社会的背景から音楽家の個人史に至るまで)を考察することでもある。

☆ そのような評論の場面において,好ましくない見本が幾つかある。ひとつはまず結論ありきの「論評」である。最初からある結論に到達することを目的とした議論である。例えば「流行歌は低俗だ」という結論があったとして,その結論に向けて自分に都合の良い証拠を探し回るような姿勢である。この実例はさる高名な文芸評論子(彼の業としては新聞記者であった時代が余りにも長いので,文芸評論家としては短命であった。ただし書評氏としては超一流であったことは否定しない)が,自分の勤めていた新聞の中で歌謡曲を罵倒する特集記事を三週間近くに亘り掲載した「百目鬼事件」がその代表である。ぼくは百目鬼恭三郎(注:元朝日新聞記者・「風」の筆名での週刊新潮の書評は有名。故人)を書評家として評価はするが,この時の恨みだけは絶対に忘れない。

☆ 最近もSo-Netのウエブログに似たような記事を見たことがある(注:2007年かどうかは忘れた)。その投稿者はAとBの曲が部分的に似ていることについての反論をさまざまな形で提示していた。その論旨自体は納得性があり興味深く思ったが,ぼくにはその人(性別不詳)が,なぜそこまで「ムキになって否定するのか」がどうしても理解できなかった。「タモリ倶楽部」に「空耳アワー」という名物コーナーがあるが,似たようなフレーズや同音の出だしなどということは音楽にはありふれた話で(「ミスティ」と「引き潮」の最初三音は全く同じとかね),音楽というのはその音のアイディアをどう展開していくかが重要であり,他人のヒット曲のフレーズを無断借用したかどうかに拘るのは,自分はいろんな曲を知っているということを自慢したいからという深層心理の裏返しに過ぎないと思っている。こういうのは「批評ごっこ」であり評論とは何の関係もない。

☆ じゃあお前は「○○万歳(マンセー)」しか認めないのかと問われたら,そちらの方が音楽に限っては「毒が薄い」分マシだろうと答えたい。しかしそれも音楽を評論するという次元には程遠い「批評ごっこ」に過ぎないだろう。かつてぼくが役立たずなアイドル評論を「オリコンウイークリー」に投稿していた頃,「ファンになったら痘痕(あばた)も笑窪(えくぼ)かい?」と罵詈雑言を浴びせたヤツがいた。ぼくはその時は何も書かなかったが,そいつは自分が支持する「だれとかさん」と松田聖子を無理矢理比較したり,別の「だれとかさん」を褒め称えるのに御丁寧にも,もう一度「同じようなこと」を書いたから,チョッとカチンと来て反論したら,そういうことを書いてきた。

☆ 相対主義なんかで音楽を評論した気になるのは,愚の骨頂というより「私は馬鹿でございます」と世界中に宣伝しているようなものである。AとBを比較してどっちが良いなんて「偏差値教育」の成れの果てみたいな話で音楽を語るなよ。それは「スネークマンショー」のネタにもあった「良いものもあれば悪いものもある」のギャグと何ら変わらない。

☆ ぼくは淀川長治さんの映画解説が好きだった。淀長さんは映画が好きで好きでそのままそれを職業にしたようなヒトだった。だから「淀長さんは良いことしか言わない」と当時から良く悪口を書かれていた。でも,好きでもない映画を見て「これはあそこがダメだった」とばかり言って何が面白いのだろう。映画も大衆音楽も娯楽である。娯楽は楽しむものであって,楽しめないものに時間も言葉も費やすべきではない。ぼくは訳知り顔の「自称評論家」よりもどしろうとでも「これが好きなんだ」と言える人の発言の方が余程信用できる。たとえそれが「批評」レベルであったとしても,そっちの方が見ていて役に立つと思う。

☆ 音楽評論(演劇・映画でもそうだが)は,目と耳と頭と心で感じたものを文字で表す作業である。生半(なまなか)な努力では,絶対にオリジナルには勝てない。その厳しさもなくただ「あてがい扶持」を頼って駄文を書き流している「自称評論家」(新聞雑誌記者に多い)を見てると,腹の底から吐き気がする。小僧の感想文に支払う金なんか,どこにもないのだ。
=続く=

初出:2007年5月4日 (大幅改稿)



☆ いまは閉鎖され跡形もなくなったとある音楽サイトに書かれた投稿があった。

☆ ぼくもあの「集団リンチ事件」のことを忘れないし,目が黒い限り絶対に許さない。そして事の顛末を書き連ねることで「音楽を評論すること」の本質について彼等「職業音楽評論家」達に刃(やいば)を突きつけたいと骨の髄,腹の底から考えているからである。

☆ 事の起こりは,このアルバムである。



☆ このアルバムでトーキング・ヘッズの四人は,アフリカン・アメリカンのリズム隊を大胆に導入した。その傾向は,このアルバムの前の作品『Fear of Music』に既に現れていた。おそらくその後のTom Tom Clubの作品から考えて,デヴィッド・バーン(David Byrne:Guitarist/vocalist)の趣味というより,ヘッズのリズム隊を受け持っていたクリス・フランツ(Chris Frantzd:rummer)とティナ・ウエイマウス(Tina Weymouth:bassist)の嗜好だったと考えられる。





☆ このリズム隊のアプローチに噛みついた人物がいる。当時『Rocking On』編集長だった渋谷陽一だ。その評価は酷評そのものだった。記事を持っている訳ではないので正確には書けないが,アフリカン・リズムを安直に導入したそのアプローチを「クソだ」と批判した。ぼくは詳しい事情は知らないから,ヘッズの方法論がクソだと渋谷が断じた論拠には賛成しかねる。少なくともその後のヘッズやトムトムクラブのアプローチを見る限り,導入したものを消化して血肉としたことは事実であり,その結果が『Speaking in Tongues』で初めてヘッズは米国でのポピュラリティを得ることになった。



☆ しかしこの「トーキングヘッズはクソだ」に極めて不快感を感じた評論家がいた。今野雄二である。今野にしてみれば自分の美学,言い換えれば自分の顔にクソを塗られた思いであっただろう。その怒りは解らないでもない。しかし,率直に物言いをした渋谷に対して今野の反撃は明らかに陰湿だった。今野は渋谷に直接反論する代わりに,渋谷お気に入りのミュージシャンの個別攻撃を開始した。坊主憎けりゃ袈裟(けさ=坊さんの法衣)まで憎しという訳だろうが,それでは議論にはならない。今野には悪いがまさしくオカマの喧嘩である(爆)。

☆ 結論を言えば,ぼくも「ヘッズがクソだ」と言った渋谷の目の方が節穴だったとは思う。しかし,今野のやり方は昨今(注:2007年現在)どこぞの国の「裏サイト」で流行っているような低脳を絵に描いたようなやり方だと思う。ファンの多い(レッド・)ゼップは批判できないから,ロバート・フリップを悪し様に腐す様は,やはり大のオトナのやる事とは思えなかった。

☆ 当然,一国一城の主である渋谷は自分の雑誌で今野を個人攻撃した。曰く「何か流行りそうなものがあれば,今野雄二が太鼓を叩いてやって来る」。これまた完膚なきまでに相手を叩きのめす悪し様な目を背けたくなるような感情の塊のような「中傷記事」だった。結局こうやって渋谷と今野の対立はそれぞれの拠点である『Rocking On』と『ミュージック・マガジン』の間の壮絶な内ゲバとなったのである。

※ゲバとはドイツ語のGewalt(暴力)のことで,内ゲバとは反体制の学生運動が分裂する中で,かつて共闘していたセクト同士が相手を攻撃し,しまいには暴力団の出入りのような実力行使に走っている(現在も続いており,公安警察がそれをマークしている)行為を指す。ここではもちろん最大級の皮肉として引用した。

☆ その文脈の中で,最初に引用した『Don't Stand Me Down』の集団リンチ事件が勃発した。当時の『ミュージック・マガジン』には四人のレビュアーがひとつのアルバムを合評する「クロスレビュー」と言うコーナーがあったが,そこを舞台にあろうことか『ミュージック・マガジン』の編集長であり発行人(注:当時)である中村とうよう(東洋)本人が先頭に立って,上に引用したような言論暴力を振るったのである。

☆ だからぼくはあれ以来『ミュージックマガジン』を手に取っていない。『レコード・コレクターズ』は興味深い特集が幾つもあったが,今まで一冊も買ったことがない。これからも買わないだろう(注:この措置は大滝詠一氏の追悼号をもって解除した)。ただし中村東洋が岩波新書から出した『ポピュラー音楽の世紀』だったか,あの本だけは参考のために買った(注:数年前に読了したが非常に参考になる本だった)。そして90年代を過ぎて,ぼくはこの忌まわしい思い出と共に「ポピュラー音楽の世紀」に自ら幕を下ろした積りだった。


☆ そんなぼくが今頃になってポピュラー音楽のレビューを書くことが出来るのは,やや皮肉な気持ちがする。ただ,だからこそ,これは言っておきたいのだが,音楽評論は「独立したひとつの所為」である。それをどんな形であれ「他の目的に利用するな」。それをやった者は魂をどこかに売り飛ばした者である。そんなヤツの「評論」は金輪際読まない。読みたくもない。そしてぼくは自分の目が黒いうちはそんな評論はただの一本だって書きたくない。それが自分の心を捉えた流行音楽というものへの最低限の礼儀であると,ぼくは思っている。今回,名を挙げて断罪した何人かの音楽評論家は確かにぼくの音楽観に多かれ少なかれ影響を与えてきた。ぼくはそのことまで「都合良く消去」したりはしない。しかし,彼等がやったことは,ぼくの心を深く傷つけた。そのことは事実だし,何度でも書くが,目の黒いうちは,絶対にそのことをぼくは忘れない。それが音楽評論の真似事をやっている駄文書きの最低限のプライドであるから。

2017年9月13日追記



☆ これを書いた後でぼくが耳にした話はもっと下らない「おはなし」だった。当時(ヘッズが『'77』でメジャーシーンに登場した頃)から渋谷と今野はそれぞれの見地からこのグループの音楽的前衛性と将来性を評価してきた。例えば今野はイギリスでXTCが登場した時に「イギリスのトーキング・ヘッズのようなバンド」と評していた(もっとも今野がバリー・アンドリュース在籍時のXTCを知っていたかどうかは分からない)。

☆ ぼくが聞いた話は『リメイン・イン・ライト』での黒人ミュージシャンとのコラボを渋谷は当初評価していたものの,今野のべた褒め評価を知ってその評価を変えたというものだ。今野は故人だし今さら渋谷に訊くわけにもいかない(この辺「問題のレベル」も含めて桑田佳祐と長渕剛の確執に実によく似ている)。きっかけがどうであれ,この人々が「やらかした」ことは音楽評論どころか「音」を「楽しむ」ことの極北にしかなりえないと,ぼくは感じている。

☆ 音楽とはその音楽を作り出す者とそれを聴く者との対話である。対話が成立しないのであれば,その音楽を聞かなければよく,そのことを他人に伝える必要もない。そもそも対話になっていないのだから,評価などできるはずもない。それでは音楽評論家という職業は成立しないじゃないかというなら,それは甘い認識だ。

☆ 淀川長治氏が真のプロフェッショナル映画評論家だった理由は,どんな映画(ヒットしなくても,逆にヒットしたけど世間的には駄作とされる作品)でも,どこか評価に値するシーンを見つけ出す(映画を最後まで集中的に見ていかないと見つからないだろう)ところにあった。それは無理やり「帳面消し」をしているからではない。彼が映画が好きで「映画の魅力」を信じているからである。評論でメシが食いたければそこまで相手を好きになるしかないのだ。

☆ この記事を書いた後,奇しくも当事者の二人(今野雄二,中村東洋)が同じ死に方(自死)をした。だからどうだとは言わない。生き残ったぼくは,自分の音楽の聴き方を示すことで死者に対しても正当に抗議を続けていく。それは彼らが愛した音楽が,ぼくのそれと「同じ天に存在すること」をぼくが信じているからである。ポピュラー音楽の未来のために,僕は誇りを持って敢えてこの旧稿を再びここに示すのである。


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The Doors 「Light My Fire(ハートに火をつけて)」 (ドアーズ 1967年4月24日)


初出:2006年9月23日



Light My Fire
(Jim Morrison, Robbie Krieger, John Densmore, Ray Manzarek)


You know that it would be untrue
嘘だと思っているんろ
You know that I would be a liar
ぼくが騙していると思っているんだろ
If I was to say to you
もし君にこう告げたら
Girl, we couldn't get much higher
もっともっと,気持ち良くなれる

Come on, baby, light my fire,
こっちに来て,ぼくを燃やしてくれ
Come on, baby, light my fire,
こっちに来て,ぼくを燃やしてくれ
try to set the night on fire.
この夜を,愛の炎の中に投げ込んでくれ

The time to hesitate is through,
ためらっていないで
no time to wallow in the mire,
ぬかるみに足を取られないで
try now we can only loose,
今、お互いの心を解き放たなければ
and our love become a funeral pyre.
ぼく達の愛なんて,あっという間に終わってしまう

Come on, baby, light my fire,
こっちに来て,ぼくを燃やしてくれ
Come on, baby, light my fire,
こっちに来て,ぼくを燃やしてくれ
try to set the night on fire.
この夜を,愛の炎の中に投げ込んでくれ

The time to hesitate is through,
ためらっていないで
no time to wallow in the mire,
ぬかるみに足を取られないで
try now we can only loose,
今、お互いの心を解き放たなければ
and our love become a funeral pyre.
ぼく達の愛なんて,あっという間に終わってしまう

Come on, baby, light my fire,
こっちに来て,ぼくを燃やしてくれ
Come on, baby, light my fire,
こっちに来て,ぼくを燃やしてくれ
try to set the night on fire.
この夜を、愛の炎の中に投げ込んでくれ

You know that it would be untrue
嘘だと思っているんろ
You know that I would be a liar
ぼくが騙していると思っているんだろ
If I was to say to you
もし君にこう告げたら
Girl, we couldn't get much higher
もっともっと,気持ち良くなれる

Come on, baby, light my fire,
こっちに来て,ぼくを燃やしてくれ
Come on, baby, light my fire,
こっちに来て,ぼくを燃やしてくれ
try to set the night on fire... × 4
この夜を、愛の炎の中に投げ込んでくれ


(訳者メモ)
☆ Ed Sullivan Show(エド・サリヴァン・ショー)に出演した時、Jim Morrisonが歌詞の「higher」(大麻などによる精神の高揚を意味する隠語として70年代まで嫌われていた)を、敢えて歌ったという有名なエピソードは、後年オリバー・ストーンが映画『DOORS』でも描いている。この映画にも例の如く賛否両論あるけれど、少なくともこの曲の誕生についてのエピソードが活写されているところは良いと思う。

↓ オリバー・ストーン監督作品『ドアーズ』



☆ 歌詞を見てもらえばよくわかるが、韻の踏み方がきれいだ。「liar」と「higher」、「mire(マイヤー)」と「pyre(パイヤー)」。この言葉を発する時のJimのヴォーカルも蠱惑(こわく)的で、「higher」が邪推と関係無く、彼の美的センスからもとても譲れなかったのは、思うに当然のことだったのだろう。

2017年9月11日付記
☆ ぼくは画家のいない「神ってる」という昨今の流行語が嫌いなのだが(笑),確かにこの曲でのドアーズの4人(プラス1人は下のPERSONEL参照)は,このチープな流行語を意外にリアルな存在として感じさせるものがあると思う。要するに言葉の本来的な意味で「神懸っている」のである。

☆ この曲,正確には曲のイントロに「引きずり込まれた」のは,曲が実際にヒットしていた大昔かもしれない。それくらいこの曲は「一発で耳に付いた」。それはなんだか呪術的(その頃はそんな言葉は知らなかったが)で,どこか恐ろしくもあり,それ以上に魅力的でもあった。この曲に関しては全くこう言わざるを得ない「好きになるのに理由がいるか?」

☆ 知覚の扉には近づいたことも無い凡人のぼくでも,この曲からは日常は感じられない。歌詩を見れば日常のことを歌っているのに,曲と演奏がそれ(日常に塗れること)を拒んでいる。のんびりした言い方をすれば浮世離れしているのであり,もう少しリアルに言えば鬼気迫るであり,ぶっちゃけ言えばラリってるとしか言いようがないのだ(笑)。

☆ 麻薬(合成麻薬)はしかし,この曲の中では触媒(カタリスト)に過ぎない。この曲が示しているものはその幻影の表皮を剥いだ生々しい肉であり,感情や情念であり,関係性であるのだと思う。ここまでぶつけ合うことをすれば,(麻薬の力があろうがなかろうが)人間はどこかで壊れてしまうであろう。それはジム・モリソンというひとりの人間にも言えたことではなかったのかと思うのだ。

PERSONEL
Jim Morrison – lead vocals
Ray Manzarek – Vox Continental combo organ, keyboard bass
Robby Krieger – Gibson SG electric guitar
John Densmore – drums
Session musician Larry Knechtel – bass guitar, credited by Robby Krieger



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「The Stranger」 (Billy Joel 1978年5月21日=Japan Release)


初出:2006年3月4日
(2011年11月改稿)



☆ 個の獲得は,権威主義的家長主義への抵抗として若者文化の根本をなした。そうでなければチンピラ俳優に過ぎないジェイムズ・ディーンや田舎の兄(あん)ちゃんだったエルヴィス・プレスリーが神格化されることもなかった。そうした変化は1950年代という時代の架け橋に始まり,その次の10年で決定的となった。それは抵抗文化(カウンター・カルチャー)という名前によって10代から20代の若者によって作られ,支持され,やがて世代間の壮絶な衝突を生むこととなる。

☆ 衝突に勝利者はいない。たいてい第三者が漁夫の利を得るように出来ている。賢い奴らはその時代を生き抜き,次の時代を支配する。その頃には世代そのものがベクトルを失い始め,獲得した自由の上で放埒が蔓延する。フロムが言う「自由からの逃走」であり,昨今の流行り言葉では「ニート」だの「下流社会」だのとレッテルだけは不足無い。ここでは,誰かに何かのレッテルを貼ることが目的ではない。個の獲得は,同時に個の喪失への道標(みちしるべ)であることだけを指摘しておきたい。そして本編の主人公ビリー・ジョエルが登場する。

☆ ジャケットに写っているものは能面とボクシングのグローブである。能面は "The Stranger" の曲にも出てくる「誰かから隠しておきたい顔」つまり突き放された自己であり,グローブが象徴するのは衝動であり,力であり,それらのカタルシス(残滓)でもある。獲得した瞬間に失われ始めた自分自身を求めて,人々は彷徨(さまよ)い,さすらい,消耗する。そしてひとりきりの部屋で,自分を見つめ直そうとする時,そこに写っているのは自分ではない誰かだ。 その顔がサテンなのか絹なのか革(かわ)なのか本人にも分かるまい。少なくとも自分の皮膚だという気は,起きないだろう。

☆ 誰だか分からない顔を演じて,無くしかけた自分探しをするのは,滑稽な気もする。しかし,超常現象に頼って生きていく人間の数と,それを生活の糧にする人間の数がいまだに減ってこないところを見ると,自分が被っているお面をよほど気に入っているとしか思えない人間が多いという事も想像がつくだろう。

☆ こうして自分探しの不毛な旅は,青い鳥に看取られながら,巡礼のように続いていくのである。

The Stranger (Billy Joel)


Well we all have a face
僕たちは誰にも知られたくない
That we hide away forever
もうひとつの顔を持っている
And we take them out and
時々それを取り出して
Show ourselves
じっと眺めているのさ
When everyone has gone
あらゆる邪魔者を遠ざけたところでね
Some are satin some are steel
サテン(繻子)の生地で出来てたり,鋼だったり
Some are silk and some are leather
絹だったり,革だったりと色々あるけれど
They're the faces of the stranger
そいつは自分とは全く別人の貌(かお)をしているのに
But we love to try them on
みんなコッソリ顔に付けてみたくなるのさ

Well we all fall in love
僕たちは恋に落ちることもある
But we disregard the danger
だけど危険があることなどお構いなしだ
Though we share so many secrets
僕たちは周囲にこれだけ多くの秘密を隠し持っているのに
There are some we never tell
お互いの間ですら決して言うことのない秘密まである
Why were you so surprised
どうして君は驚いているのだろう
That you never saw the stranger
君が僕のいつもとは違う貌を見たことがなかったことを
Did you ever let your lover see
君は自分の恋人の瞳に映る自分自身が
The stranger in yourself?
ぜんぜん別の貌をしていることに気付かなかったのかい?

Don't be afraid to try again
やり直すことを恐れちゃいけない
Everyone goes south
皆んな,南のリゾートに出掛けていく
Every now and then
今やこの時とばかりに
You've done it, why can't
君の恋は終わったんだ
Someone else?
どうして次の人を探さないのかい
You should know by now
もう気付いているだろう
You've been there yourself
その場所に佇む君自身の姿に

Once I used to believe
むかし僕は信じていたものさ
I was such a great romancer
僕はとんでもない空想家だと
Then I came home to a woman
ある日僕が家に戻ってみると
That I could not recognize
ぜんぜん知らない女がそこに立っていた
When I pressed her for a reason
僕は彼女になぜここにいると強く訊ねたのに
She refused to even answer
彼女は答えを言おうともしなかった
It was then I felt the stranger
その時僕は感じた
Kick me right between the eyes
何かよく分からない者が僕の眉間を蹴りつけたのだ

Well we all fall in love
僕たちは恋に落ちることもある
But we disregard the danger
だけど危険があることなどお構いなしだ
Though we share so many secrets
僕たちは周囲にこれだけ多くの秘密を隠し持っているのに
There are some we never tell
お互いの間ですら決して言うことのない秘密まである
Why were you so surprised
どうして君は驚いているのだろう
That you never saw the stranger
君が僕のいつもとは違う貌を見たことがなかったことを
Did you ever let your lover see
君は自分の恋人の瞳に映る自分自身が
The stranger in yourself?
ぜんぜん別の貌をしていることに気付かなかったのかい?

Don't be afraid to try again
やり直すことを恐れちゃいけない
Everyone goes south
皆んな,南のリゾートに出掛けていく
Every now and then
今やこの時とばかりに
You've done it, why can't
君の恋は終わったんだ
Someone else?
どうして次の人を探さないのかい
You should know by now
もう気付いているだろう
You've been there yourself
その場所に佇む君自身の姿に

You may never understand
君には理解できないかもしれないが
How the stranger is inspired
自分の中の別の自分がどうやって奮い立とうとするのか
But he isn't always evil
だけど「彼」は決して邪悪でもなければ
And he is not always wrong
「彼」は決して間違ってもいない
Though you drown in good intentions
もしも君が良心の中に心を紛らそうとしても
You will never quench the fire
決してその炎を抑え込むことは出来ないだろう
You'll give in to your desire
君は欲望にそれを与えてしまうに違いない
When the stranger comes along.
もう一人の自分が自分の中に訪れた時には.

2017年9月9日付記
☆ この曲は彼のアルバムのタイトル曲だったが,日本でのみリリースされた。これには幾つかの理由がある。まず,全米でビリーの名を改めて知らしめた前作「素顔のままで(Just The Way You Are)」が日本ではまだ知名度が高くなかったことから思ったようなヒットにならなかったこと。それではということで,この曲にはソニーのステレオ・ラジカセのCMタイアップが付いたこと。メーカーのソニーが,子会社がプロモートするミュージシャンの新曲をCMに使う。実に効果的なプロモーションだった(これが「勝利の方程式」となり,タイアップ曲のブームが始まる)。

☆ ただこの歌の詩に描かれる変身願望(後で阿久悠はそこだけ引き抜いて石野真子の「日曜日はストレンジャー」を書いている)は,形を変えた「自分探し」だったのではないかという気もしている。その感覚は最初にレビューを書いた2006年のままであるが。

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「となりの町のお嬢さん」 (吉田拓郎 1975年9月25日)



初出:2013年8月25日
☆ 1975年。俗に言うところのギョーカイ激震の中,船出したフォーライフ・レコード第1回新譜がこの曲。吉田拓郎自身が個人的な問題を抱えていた中,典型的なショーネン系の作品に腰を抜かしたり,呆れたり,腹を立てたり(爆笑)。。。いま思えば作品で勝負すると決めた拓郎の覚悟のほどがリアなんとかだったこちらまで届かなかっただけのこと。それから2か月ほどしてオールナイト・ニッポン月曜の生放送中に離婚宣言が飛び出して業界の一部の顰蹙を買ったのはかなりの昔話。顔を顰(しか)めた側が持ち出した論理は「公共の放送中にプライヴェートな事を言った。公私混同だ」そりゃあそうかもしれないが,芸能人やら政治家やら他人の私生活に土足で取材する側が持ち出す論理じゃないよね(再爆)。

「となりの町のお嬢さん」 (作詩・作曲:吉田拓郎 / 編曲:松任谷正隆)



☆ それにしても「吉田拓郎のフォーク・ソング」の美味しい処が全て突っこまれたこの曲。いま聴けばかなりの名曲だった(爆)。これを踏み台に「明日に向かって走れ」で「人生を語らず」路線に修正してフォーライフからのファースト・アルバムに進んでいく。さっきの話題で言えば,本音は既にムッシュ(かまやつひろし)に提供した「水無し川」で吐露していたのだが。

2017年9月8日付記
☆ この曲を改めて聴いてみるとコレットの『青い麦』だとかロバート・マリガン監督作品「おもいでの夏(Summer of '42)」だとかの作品の正統な後継者であるような気がする。まあ厨房に毛の生えた年齢ではそれらの小説映画は興奮剤にしか作用しないので(自虐),そんな連中からジイさんと呼ばれる年齢になって振り返ってみれば「ああ,そうか」と思ってしまうだけのことである。

☆ 今さらながら松任谷正隆のカントリー・ロックふうのアレンジが光っている。松任谷のイメージの片隅にはヒルビリーのイメージがあったはず。もっとも海に囲まれた日本の田舎を大草原の代わりにイメージさせたところに彼のアレンジの鋭さがあるのだが。

☆ 「となりの町のお嬢さん(の後継者)」たちは,この後は急行「うち房」・「外房」の代わりに,竹芝桟橋から東海汽船に乗ったり,成田空港から飛行機に乗ったりして同じようなことを都下やアジア・オセアニアの各地で繰り広げるのだが,所詮入り口で相手にされなかった厨房にはせいぜいこの曲をお慰みにするくらいしか出来ることはなかった。

☆ とはいえ40年の歳月はこの曲ですら「古き良き時代の一頁」に織り込んでしまう。残ったモノは「永遠のほろ苦さ」だけだったのかもしれない。


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「Doctor Wu」 (スティーリー・ダン 1975年3月=アルバムリリース)




Doctor Wu(Walter Becker / Donald Fagen)


Katy tried
ケイティがそれを試した
I was halfway crucified
ぼくは殆ど磔(はりつけ)にされたようなものだった
I was on the other side
ぼくはどこか違う世界にいたのだ
Of no tomorrow
明日の無い世界に

You walked in
あなたがその部屋に入ってきたので
And my life began again
それでぼくの人生がふたたび動き出した
Just when I'd spent the last piaster
まさにぼくが借りることのできる
I could borrow
最後の小銭を差し出した時に

All night long
一晩中
We would sing that stupid song
ぼく達はあのまぬけな歌を歌っていた
And every word we sang
それでもぼく達が歌ったことは
I knew was true
全てが真実だとぼくは知っていた

Are you with me Doctor Wu
ぼくと一緒にいてくれますか,呉(Wu)先生
Are you really just a shadow
あなたはまるで
Of the man that I once knew
ぼくがかつて知っていた,あるかたの影のよう

Are you crazy are you high
あなたはイカれていて,ハイになっているのか
Or just an ordinary guy
それともその辺の真っ当な人のように
Have you done all you can do
出来ることはなんでもやってしまうのか
Are you with me Doctor
そしてぼくとここに居てくれますか,先生?


Don't seem right
正しいことのようには見えないのに
I've been strung out here all night
一晩中クスリに頼って暮らし
I've been waiting for the taste
いまだにその味を試したいと
You said you'd bring to me
あなたが連れていくと話したことを当てにして,待っている

Biscayne Bay
フロリダのビスケーン湾は
Where the Cuban gentlemen sleep all day
キューバからの紳士たちが一日中居眠りをしている
I went searching for the song
ぼくはあの歌を探し続けていた
You used to sing to me
むかしあなたがぼくに歌ってくれたあの歌を

Katy lies
ケイティは嘘つき
You could see it in her eyes
その嘘は彼女の瞳の中に浮かんでいる
But imagine my surprise
だけどあなたと出逢った時の
When I saw you
ぼくのあの驚きを想ってごらん

Are you with me Doctor Wu
ぼくと一緒にいてくれますか,呉(Wu)先生?
Are you really just a shadow
あなたはまるで
Of the man that I once knew
ぼくがかつて知っていた,あるかたの影のよう

She is lovely yes she's sly
彼女は愛らしく,そう,そして小狡(ずる)い
And you're an ordinary guy
それなのにあなたはまるで普通の人のように
Has she finally got to you
彼女は最後にあなたのところに向かうのでしょう
Can you hear me Doctor
聞こえていますか,先生?
Are you with me Doctor
ぼくと一緒にいてくれますか,先生?

☆ 前回のエントリーにコメントいただき,どうもありがとうございました。


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サヨナラだけが,人生だ。


ウォルター・ベッカー氏が死去 米ギタリスト
2017/9/4 11:34 (記事出典:日本経済新聞 電子版)

> ウォルター・ベッカー氏(米ギタリスト)公式ウェブサイトによると3日に死亡、67歳。死因など詳細は明らかにしていないが、米メディアによると病気療養中だった。

> 大学在学中に知り合ったドナルド・フェイゲンらと米ジャズ・ロックバンド「スティーリー・ダン」を結成、70年代を中心にヒット曲を連発した。(ニューヨーク=共同)

☆ ウォルター・ベッカーの訃報を見て最初に思ったことは,90年代にスティーリー・ダンの公演を何度か見ることが出来たことが,ぼくの人生にとってどれだけの幸運であったか,ということだった。

☆ 当時,再び活動を始めたスティーリー・ダンのコンサートは,最初は比較的大きなホール・コンサートから始まった。その中でベッカーは発表したばかりのソロアルバムから「Book of Liars」を歌った。彼のコーナーは,ストーンズにおけるキースのコーナーのようなものになってしまったので,その後小規模なライブハウスで見た時に,曲が「親父の嫌いなニューヨーク・シティ(Daddy Don't Live in That New York City No More)」に差し替えられていた。たぶんベッカーが歌った唯一のフェイゲンの持ち歌だろうと思う。


☆ 皮肉な話だが,スティーリー・ダンについて書かれたブライアン・スウィートのこの本が間もなく(9月8日)復刊される。この本には80年前後の彼等,特にベッカーにまつわるひとつの悲しいエピソードが綴られている。この話は当時,ウエスト・コーストでミュージシャン達が引き起こした性質(たち)の悪い醜聞のひとつとして面白おかしく語られたこともあったが,スウィートは全く異なる真相を明らかにしており,本を読んだ時にほっとしたことを思い出す。

☆ ただ,そのことはベッカーにとって80年代前半を棒に振るほどの事件であって,彼がハワイで自分を取り戻した時,スティーリー・ダンもまた記憶の彼方から呼び戻されることになのだろうと思う(『ニューヨーク・ロック&ソウル・レビュー・アット・ビーコン・シアター』のこと)。

☆ フェイゲンとベッカー,そしてゲーリー・カッツの三人が創りあげていった70年代後半のスティーリー・ダン(の諸作品)は,ぼくにとって最高の宝物であり,こういう音楽をその誕生の時から長きにわたって楽しむことができたことは,たとえ他のあらゆるものの価値がぼくの人生から喪われたとしても,ぼくにとって「生きていてよかった」と言える,最後の,そして最大最高の証なのである。

R.I.P. ウォルター・ベッカー(1950年2月20日-2017年9月3日)。 あなたの音楽よ 永遠なれ。

2017年9月4日
deacon_blue@Musically_Adrift '77 Revisited

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謎の大ヒット曲シリーズ② 「Pop Muzik」 (M 1979年3月25日)


Pop MusikPop Musik
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この曲のWikipedia英語版の解説
"Pop Muzik" is a 1979 song by M, a project by English musician Robin Scott, from the debut album New York • London • Paris • Munich.
「ポップ・ミューヂック」は1979年の英国人ミュージシャンロビン・スコットのプロジェクト名であるMの作品,これはMのデビューアルバム『ポップ・ミューヂック(New York • London • Paris • Munich)』に収められた曲である。
The single, first released in the UK in early 1979, was bolstered by a music video (directed by Brian Grant) that was well received by critics.
このシングルは1979年初めに英国でリリースされ,ブライアン・グラントが監督したMVによって補強され,多くの音楽評論他達に知られるようになった。
The clip featured Scott as a DJ singing into a microphone from behind an exaggerated turntable setup, at times flanked by two female models who sang and danced in a robotic manner.
ビデオ・クリップの中でスコットは大袈裟なターンテーブルの後ろでDJの姿でマイクを握りしめて歌い,それに2人のモデル風美女がロボット的な動作で踊る映像が挟み込まれている(←百聞は一見に如かず。YouTube参照)。
The video also featured Brigit Novik, Scott's partner at the time, who provided the backup vocals for the track.
ちなみにこのビデオでバックアップヴォーカルを取っているBrigit Novikは当時のスコットのパートナーだとか。

Pop Muzik (Robin Scott)



☆ 曲に歌われている4つの都市(の属する国)からチャート・アクションを見ていく。全米No.1(ビルボードHot100,ちなみにキャッシュボックスとレコードワールドはなぜか最高位4位),全英最高位2位(アート・ガーファンクル「ブライト・アイズ」の6週間No.1に阻まれた),仏第12位,西独No.1。その他No.1の国は豪州,カナダ,デンマーク,スウェーデン,スイス,南アフリカ。最高位2位はオーストリア,アイルランド,同3位はベルギー,オランダ,ニュージーランド,同5位はイタリアとノルウェー。ここまでくれば大旋風である。日本でもディスコでは大ヒットしている。またニューウエイブ系の尖(とん)がったお兄さん,お姉さんにも受けまくっている。原題がドイツ語の「Musik(ムジーク)」をさらに捻っているところに反応して邦題も「ポップ・ミュージック」ではなく「ポップ・ミュー(ヂ)ック」である。この辺から早くも「拘りの差別化」が始まっているのだが,バブルの話はもう終わったので以下省略(爆)。

☆ で,これに目を付けたのが坂本龍一で,一度アルバムを共同制作している(がそれっきりだった。そういえば,坂本はトーマス・ドルビーとも組んでいたな)。でもこの曲,ビルボードの1980年年間チャートランキングで40位だから相当なヒット曲ではある。ちなみに曲に出てくるパリとミュンヘンは当時の英国のミュージシャンなら意識すべき場所で,特にエレクトロ・ポップということでは外せない場所だったと思う。





☆ 余談の余談だけど,昔ヒューイ・ルイスがレイ・パーカー・ジュニアにヒット曲「ゴーストバスターズ」のモチーフは,ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「アイ・ウォント・ア・ニュー・ドラッグ」からの借りものだと訴えたことがあったが,むしろモチーフでいうなら「ポップ・ミューヂック」だったんじゃないのか(つまり二人とも引っかかる)と,ぼくは思っている。
【更にしつこく追加】
☆ 改めてこの単調な曲(笑)を聴いていて,まあ「ディスコの時代」の作品だからということはあるけれど,エレ・ポップという外套を外してよくよく曲を聴いていると,これはもしかしなくても60年代モータウン・サウンドの焼き直しだという気がしてきた。60年代モータウンのあのリズムを前面に押し出してくる方法は,まさにこの音楽がダンス・ミュージックとして生まれたことの証明であり,その「ダンス・ミュージック」という骨格は少なくとも80年代はじめくらいまでは,かなり広範に有効であったのだなあと思わざるを得ない。

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「Only With You(Sing-Along Version)」 (山下達郎 Instrumental 2001年2月=Limited Version)


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☆ 『カム・アロング3』発売のニュースを聞いた時,思い出したのは『Big Wave』のことだった。『カム・アロング』は最初カセットテープオンリーの企画版として出た。この頃の彼は『For You』でその人気を決定的にしていた(本人の言うところの「夏だ!海だ!タツローだ!(最後の名前はサザンもしくはユーミンに代替可。ただし80年代半ばにはTubeに浚われる)」の時代。一方で達郎と小杉(理宇造)氏はRVC(後のBMGビクター)からの「独立」を果たしつつあった。新譜は出ない以上,既発作品からのコンピレーションしか「売る方法」がなくなる。その制約の中のアイディアがカーステレオ・ユースを狙ったDJ版の制作である。『カム・アロング』では契約期間が残っていたらしい竹内まりやまでゲストに招いての大盤振る舞いではあったが,基本的には「企画物」の範疇の作品と言えたと思う。

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☆ ムーンレコードを設立し,『Melodies』という80年代に残る名盤を出した達郎に対して古巣の出来たことは,本人の許諾のないまま古いマテリアルで同工異曲を発表するくらいしかなかった。この手の「同工異曲商売」に対しては矢沢永吉が『成りあがり』の中で激しく批判している。後年,矢沢がキャロル時代の作品を全部「取り返した」背景にこれがあったのは間違いないし,山下もRVC時代の作品をコントロールすることができるようになって初めてリマスターを出している(その時に『カム・アロング』も非買品として出している)。

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☆ 『カム・アロング2』の発売に対して山下は当時自分が持っていた番組の中で「本人の許諾なしにこうした企画盤を出すこと」を厳しく批判した。それはミュージシャンとして当然の振る舞いであったと思う。ところがそれが後日,意外な波紋を招くことになる。

Only With You (山下達郎)




☆ 『Melodies』の後を受け山下が1984年に出した『Big Wave』は記録映画のサウンドトラックという体裁であったが,テーマ曲は前年のNHK-FMで放送された特別番組で発表された(その時は「魔法を教えて」というタイトルで歌は(おそらく詩も)大貫妙子に覆面歌手(ター坊=彼女のニックネーム)なってもらった)ものである。その他も彼のアルバム未収録作品や既発作品の英語詩だったりだったため,彼が前年批判を加えていた番組のリスナーから「これだって "企画盤" じゃないですか」という批判をされたのである。

☆ 山下は番組で「そうではない」と弁明した。本来なら無視しても良いところを敢えて取り上げたところが彼の筋の通ったところだと思うが,これに懲りてそれから暫くの間は『Big Wave』は「企画物」的なことを山下自身も口にしていた。レコード会社の移籍やまして事業としての立ち上げなどという事情はリスナーには関係のないことであるが,そうした事情や復帰を依頼した竹内まりやのプロデュース方針など山下が当時抱えていたものはかなり多く,またコンサートツアーも例年実施していたこともあって制約は極めて大きかったとも思う。それらを前提に完全な形での「まっさらな」フルアルバムは無理な注文であり,自分に出来ることを考え抜いた末の選択であることは今となれば良く分かる。

☆ 今回の『カム・アロング3』はそうしたこともなく(彼の番組を聞かなくなって久しいので)個人的には唐突感もある。ただ,『3』に合わせて『1』や『2』もリマスターされて発売されたのは悪いことではないと思う。全部ひっくるめて「企画物」であるとは思うが,今は東西のポピュラー音楽家(及びレコード会社)の間で企画物の百花繚乱という「素晴らしい世の中」なので,今さらこれに目くじらを立てるのも,まあ大人げないのかなと静観することにしている(爆)。

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deaconblue

Author:deaconblue
「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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