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2017-06

うたかた(序)1.01





☆ この間『1984年の歌謡曲』の感想みたいなものを書いたが,ここ数カ月バブル(及びその後)に関する書籍がかなり出ている。どっちかというとバブルの経済的側面に関して30年が時効になるのかは知らないが当事者や関係者が「それぞれの理由により」重たい口を開き始めた。それが某東洋経済誌の「バブル検証」特集という流れになり(笑)この本に辿り着いた。

☆ ただ,この本の著者はバブルの東京にいたわけではなく(あとがきにそのことが触れられている),どちらかというと1985~91の年代的再検証という感じでジャーナリスティックでもアカデミックでもやや中途半端の感がある。また当人が現場にいなかったということはこの本の弱みと言え,かなり丹念に検証しているものの,検証の対象にズレがあるきらいもある。

☆ 本来的には「バブルの時代(仮に著者の意見を取り1985~91とするが)」に関しては,最良の素材は当事者のオーラル・ヒストリー(例えば いとうせいこう,あるいは泉麻人とか山田五郎とか)であり,Fast(次善)はその時代のやや尖がった雑誌であり,Slow(並)はその当時の若者~中年男性(女性)向け雑誌と写真誌であり,Late(参考程度)は一般週刊誌(ポスト・現代・宝石/セブン・微笑・女性)であり,それ以下が新聞および新聞系(隔)週刊誌(AERAなど)であろう。それは「情報感度」の問題だと思う。情報感度の低い人達がたまたま起こった事象(例えば宮崎勤のケース)に反応して「おたく文化」に関心を示すといった例では,相当遅れているとしか思えないからだ。

☆ さらに「バブル」という定義そのものが曲者なのである。経済事象としてのバブルはこの本の最初に定義しているところだが,「この本」的なバブルの起点である1985年は「プラザ合意」の年であり,バブルに繋がる内需主導経済を招かざるを得ない「超円高」がそこにあったことを考えるべきだ。N証券のK天皇(失笑)が「ウォーターフロント銘柄」(皮肉にも「その土地」が今東京都を揺るがしている)の一大推奨販売に走ったのは1986年。こういう視点がなくて(経済)バブルは語れない。

☆ ところがその一方で構造主義が「ニュー・アカデミズム」として注目されたこと(さすがにこの本でも指摘している)1980年代前半の「空気」(先駆者はジャンル違いながら,間違いなく『なんとなく、クリスタル』である)はバブルを誘発する土壌だった。花が咲くには土がいるという当たり前の話である。その辺を「上部構造」と「下部構造」と気取ることもないのだろうが,結局「バブル」の総体とは,そういうものの全てが絡み合ったものだったはずで,その辺にこだわるべきなのだろう。

☆ ところでカテゴリ名のA.K.A.は「優雅な生活が最高の復讐である」というスペインの諺だ。なんでこのタイトルなのかなのかは,また別の話。

Voices Carry ('Til Tuesday 1985年3月28日 全米最高位8位)





PS. ☆ この「Voices Carry」がヒットした頃思っていた。なんで電電公社(当時)は薬師丸ひろ子(「あなたを・もっと・知りたくて」1985年7月3日)じゃなくて,この曲をCMに使わないんだろうって。
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「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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