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つめたい部屋の世界地図 (井上陽水 1972年)
![]() | センチメンタル (1996/06/26) 井上陽水 商品詳細を見る |
☆ 受験や受験生をテーマにした曲は多くない。もっとも「受験生ブルース」に二つの全く異なるヴァージョンがあることを知っている人はもっと少ないかもしれない。これは受験というイベントがもっとも描きにくいイベントであることや,それ以上に大事なイベントであろう「卒業」が近くにあるからだろう。実際「卒業」の歌が多いことは,ちょうど今頃のシーズンネタとしていろんな人のページを飾っていることからも分かる。
☆ 受験勉強というものは,それが入学試験であろうと資格試験であろうと技能検定であろうと同じように単調な作業である。単調である理由は,結果が保証されていないからだ。しかし,その結果が予め保証されていれば,人はまず間違いなく手を抜くだろうし,ますます歌の題材にはならないことだろう。この単調さは,物事をコツコツと積み上げていく受験準備の過程にある訳で,そのことを歌にしても聴きたいと思う人は皆無に近いと思う。そうすると「受験勉強を(現在)やっている自分」の心象風景でも描いてみるかということになり,陽水のこの歌が出て来ることになる。
☆ 最初に気付くことは「つめたい部屋」が曲の中に一切出てこないことだ。主人公は「つめたい部屋」の中に貼ってある「世界地図」を見ながら,遥かな南の国に行くことを考えている。南の国の持つ熱や暖かさが,その部屋からは奪われているのが見える。次に主人公は「一人で行く時」は「船の旅がいい」と呟く。この「船」のイメージは,「能古島の片想い」にも出てくる「南に行く船」に重なる(陽水自身は後で冗談半分に「南に進んだら博多湾で行き止まりになる」と言っていた)。九州は日本列島を構成する四つの大きな島の中でいちばん南にあるのに,さらに南に行くというのだ。南という概念が位置や方向の象徴ではなく,心の解放の暗喩になっていると考えられる。
☆ そこに存在する「フィクション」は,一時の冬を堪え忍ぶための妄想なのか。心の底からの渇望感なのか。。。恐らく両者が混在して世界地図に反射しているのだろう。つめたい部屋の現実を世界地図は一時忘れさせてくれるかもしれない,しかし我に返ればそこにはつめたい部屋の世界地図が貼ってあるだけである。まるで独房のようなこの拘束感を何と表現すればいいのか。あるいは蕾の硬さとでも表現すればいいのか。。。
テーマ:Musical_Adrift - ジャンル:音楽



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