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2019-09

お歴々の皆様




☆ だいだい「お歴々」は「皆様」なのであるから,サハラ「砂漠」と言ったり,リオ・グランデ「川」とかメナム・チャオプラヤー「川」と言ってるのと同じくらい変なハナシなのだ。でも "Respectable Street" を「ハイソ通り」とか「セレブの皆様」などと訳すと「痛快!OL通り」とあまり変わらなくなってしまい(苦笑),アンディがこの曲に託した「皮肉」が大いに減ぜられてしまいそうなので,敢えて「お歴々の皆様」として「後は放置」するのも恥だが役に立たないだろう。

☆ 西部邁の遺書らしき新書を読んでいるのだが,佐藤優が 片山杜秀との対談(『平成史』(小学館))の中で,彼について触れていて,人間は年老いると(だったかどうか忘れたが)その人間の20歳頃の思考(志向)に戻っていくようなことを話していて,その発言は佐藤自身が最近よく口にする(ものを文章で見る)ようになっており,彼自身にも当てはまるのかもしれないと思った。そこで自分にそれを当てはめると,XTCのサード・アルバム『BLACK SEA』の頃の話に辿り着く。

☆ ぼくが住んでいた街にも当時から何軒かの輸入盤屋があり,ニューウエイブ小僧だったぼくはよく遊びに行った。英国盤は塩ビの質が高いことや盤厚があることから総じて米国盤より音質が良く,ポンドがまだ価値の高い時代だったこともあって,高嶺(値)の花だった。そんなものを買うにはそれなりのお金と度胸が必要で(だからニューウエイブの時代が「ようつべ」の生まれる前で良かったのか悪かったのか正直なところ分からない),まずは米国盤で1枚試してみて(XTCの場合はサード・アルバム『ドラムス&ワイヤーズ』,その盤にボーナスEPが付いていたのも非常に良く(爆)すっかり聴き込んで次の盤は英国盤にしようなどと思っていた。

☆ で,その店(某大手のフランチャイジーが或る処にあった)に行って新譜の予告などを見ていたら「XTC BLACK SEA」と貼っていたのがその年の夏だったと思う(英国では1980年9月12日リリース)。で待てど暮らせどレコードが出ない。そのうち発売延期あったか入荷延期だったかの文字が加わって,結局めでたく手に入れたのは12月頃だったのかなと思う。そして針を落として瞬間,驚いた。なんだこのヒスノイズは!まだ買ったばかりだぞと思った瞬間にギターのイントロが始まり,そこから怒涛の重低音ポップが始まった。それが1曲目の"Respectable Street" 。

☆ じつはアルバムを手に入れる前に(予算的にも手が届く)シングルを買い始めていた。この曲のシングルはアルバムよりも後の81年3月だが,先行シングルの "Generals and Majors" だとか "Towers of London" なんかはしっかり買っていた(笑)。さすがに7インチシングルは国内盤と比べて歌詩がないくらいの差で値段も600円くらいで大差なかったので気軽に買えたのだ。

XTC -BBC RADIO 1 Live in Concert - Hammersmith Palais, London, 22nd Dec 1980


☆ その頃,NHK-FMでは時々渋谷陽一をMCにBBCのライブ録音を放送することがあった。上のようつべ(後日輸入盤CDで入手している)もその中のひとつで,最上段に置いている『チョークヒルズ&チルドレン』の記述では,このハマースミス・パレでのコンサート当日アンディは風邪を引いていて,喉の調子も悪く,熱もあったようだがかなり無理をしてというより録音を聞けばわかるが気合と根性で(爆)見事にステージをこなしてしまった。こういうことの反動が後日ステージフライト(演奏恐怖症)に彼を追い込んだのかもしれないが,それにしてもこのライブ(当時はFM放送をステレオチューナーとデッキ経由でカセットテープに録音してせっせと再生して聴いていた)はこの時代のニューウエイブバンドの演奏の中でもベストのものの一枚だろうと思う。

NOTES(by egidio sabbadini)

XTC BBC RADIO 1 Live in Concert
Live at the Hammersmith Palais, London, 22 December 1980.

All tracks recorded 22nd Dec 1980
Produced by Pete Dauncey
Engineered by Paul Nixon
Rematered by Nick Watson -S.R.T.

Band line-up : Andy Partridge ,Terry Chambers,Dave Gregory, Colin Moulding.

Track Listing :

Life Begins At The Hop
Burning With Optimism's Flame
Love At First Sight
Respectable Street
No Luangage in Our Lungs
This Is Pop
Scissors Man
Towers Of London
Battery Brides
Living Throught Another Cuba
Generals And Majors
Making Plans For Nigel
Are You Receiving me?

An original sound recording made by BBC Radio 1' Live in concert'.
ブラック・シーブラック・シー
(2011/06/08)
XTC

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「Thanks For Christmas」 (The Three Wise Men 1983年11月21日)


The Three Wise Men

注) 今回の記事については以下のサイトも参考にしています(訳詩などもそちらを参照ください)。
http://long-live-xtc.seesaa.net/article/381702796.html



Thanks For Christmas (Balthazar/Kaspar/Melchior)


☆ このシングルを見つけたのは宇田川町時代のタワレコだったと思う。シングル盤にポップだったかで(XTC変名)とか書いてあった気がする。もっともXTCの棚にあってジャケットに仮装姿の3人がいれば,ああこれはXTCのクリスマス・シングルだくらいの見当はつくので有難く買い上げさせていただいたのであった(爆)。

☆ 上記『チョークヒルズ&チルドレン』ではP.191にこの曲の前後の話が出てくる。本によるとこの曲はアンディが「ただの遊びで作った」そうだ。「ずっとカセットにほったらかしになっていた」曲だが「作っていてすごく楽しかった」との記述がある。ところでThe Three Wise Menといってもキリスト教に関心の無い人も多いだろうから,Wikipediaの「東方の三博士」を紹介する。

> 東方の三博士(とうほうのさんはかせ)とは、新約聖書に登場し、イエスの誕生時にやってきてこれを拝んだとされる人物。東方の三賢者(とうほうのさんけんじゃ)または東方の三賢人(とうほうのさんけんじん)という呼称も多い。
> 『マタイによる福音書』2:1-13に博士たちについて記されているが、「占星術の学者たちが東の方から来た」としか書かれておらず、人数は明記されていない。彼らはヘロデ大王に「ユダヤ人の王としてお生まれになったかた」について尋ね、ベツレヘムへたどりつく。彼らはイエスを見て拝み、乳香、没薬、黄金を贈り物としてささげた(この贈り物の数から「三人」とするのが定着した)。ヘロデ大王は幼子を見つけたら、自分に知らせるようにと彼らに頼むが、彼らは夢のお告げを聞いてヘロデ大王のもとを避けて帰った。
> 三博士の名は、西洋では7世紀から次のような名が当てられている:
メルキオール Melchior (黄金。王権の象徴、青年の姿の賢者)
バルタザール Balthasar (乳香。神性の象徴、壮年の姿の賢者)
カスパール Casper (没薬。将来の受難である死の象徴、老人の姿の賢者

☆ スペルが微妙に違うが「Thanks For Christmas」の作詩・作曲に三人の博士の名が見える(爆)。お遊びは大真面目にやるものという鉄則に沿って,なかなか良い出来だが,『チョークヒルズ&チルドレン』の記述を見ると
> ラジオでいくつかオンエアされ、その正体に関する根拠のない噂(フィル・コリンズが歌ってドラムズを叩いているというものもあった)も提供したが、見事、シングルは早々に姿を消した。
とまあ,XTC的なオチとなっている(爆)。だけとコリン・モールディングがザ・カーナル名で出したシングルも一度CD化された(このシングルはXTC関係でいちばんレアなもののひとつ)が,これがCDになったという話は寡聞にして知らない。YouTube様様と言うべきなのかどうか○| ̄|_

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「Are You Receiving Me?」 (XTC 1978年9月)


GO2GO2
1,543円
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Are You Receiving Me? (Andy Partridge)


Are you receiving me?
ぼくを受け止めてくれないの?
You are deceiving me I know, see I know
きみって自分の気持ちを誤魔化してるだろ,そうじゃないの
Are you receiving me?
You are deceiving me I know, see I know

When we're out walking
ふたりで散歩する時だって
Your mouth ain't where it's supposed to do the talking
きみの口はここぞって処じゃ閉じたまんまだよね

When we're in kissing
キスしようかなって時になると
Your lips are missing, are they out on loan to someone else
きみの唇って誰か別の人に貸し出し中って感じで逃げていくしさ
Are you listening?
ねえちゃんと聞いてる?

Are you receiving me?
You are deceiving me I know, see I know
Are you receiving me?
You are deceiving me I know, see I know

When we're out walking
Your mouth ain't where it's supposed to do the talking

When we're in kissing
Your lips are missing, are they out on loan to someone else
Are you listening?

Are you receiving me?
You are deceiving me I know, see I know
Are you receiving me?
You are deceiving me I know, see I know

I put it in a letter, what could be better?
ラヴレターかなんかで伝えた方が良いのかな?
I put it in a note, one night I wrote
真夜中に書き付けでも書いてればいいのかな
I put it in a telegram, just like the son of Sam
連続殺人鬼の「サムの息子(デビッド・バーコウィッツ)」みたいに
マスコミに電報でも送ればいいっていうの

Babe there's something missing
ねえきみ,ぼく達の間から何かが失われていくと思わない
Your TV's just hissing
きみのテレビが出している雑音みたいにさ

Are you receiving me?
You are deceiving me I know, see I know
Are you receiving me?
ぼくを受け止めてくれないの?
You are deceiving me I know, see I know
きみって自分の気持ちを誤魔化してるだろ,そうじゃないの

Are you receiving me?
ぼくを受け止めてくれないの?
Are you receiving me?
Are you receiving me?
Are you receiving me?

☆ XTCのセカンド・アルバム『Go2』(1978年10月6日)の直前に発売されたシングルで,アナログ時代はアルバム未収録(CD化された時に同アルバムのボーナス・ディスクとして収録された)作品。初期のXTCを特徴づけるバリー・アンドリュースのキーボードが炸裂している1曲。ただこのシングル/アルバムの発売後,アンドリュースはグループを離れ,いくぶん地味目のソロシングル1枚を発表し,ロバート・フリップやエイドリアン・ブリューらとリーグ・オブ・ジェントルメン(まるで小林信彦の小説だな。薬師丸ひろ子が映画の主演で歌も歌ってるヤツ^^;)を結成する。

☆ でもこの曲の演奏ではチェンバースが抜けた後の1980年12月22日ハマースミス・パレのライブ(BBC Radio1Live in Concert)が圧巻。『チョークヒルズ&チルドレン』の記述ではこの日のアンディは風邪気味で声がガラガラで,それを押してアンコールのこの曲まで歌い切った。このライブは当時NHK-FMでもオンエアされ,その後BBCのライブを扱うレーベルからCD化されている。

XTC -BBC RADIO 1 Live in Concert
- Hammersmith Palais, London, 22nd Dec 1980

☝ 全56:27のうちラストのこの曲は53:10あたりから。


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「Ball And Chain」 (XTC 1982年2月26日)


初出:2012年1月30日
イングリッシュ・セトゥルメントイングリッシュ・セトゥルメント
(2011/06/08)
XTC

商品詳細を見る


☆ XTCのシングルをいちばん買っていたのは『Black Sea』から『English Settlement』の頃だから,1980~82年だった。今でも7インチと12インチの輸入盤が残っている。この曲は『English Settlement』からのセカンド・シングルで Colin Mouldingの作品。どっちかというと『Black Sea』の余韻が残る重低音ポップだが親しみやすい曲だ。

Ball And Chain (Colin Moulding)

Save us from the ball and chain,
我らをこの足枷から救い給え
Save us from the ball and chain,
Save us from the ball and chain,
oh yeah,
ああ,
The diggers and the tower cranes,
この掘削機どもやタワークレーンどもから
The diggers and the tower cranes.

Don't want demolition,
打ち壊しをやめよ
Don't want your compensation,
補償金で形をつけようとするな
It's not just bricks and mortar,
ただの漆喰仕立ての煉瓦の家じゃないんだぞ
We are lambs to slaughter.
我々は屠畜場の「か弱き子羊」だ

Save us from the ball and chain,
我らをこの足枷から救い給え
Save us from the ball and chain,
Save us from the ball and chain,
oh yeah,
The diggers and the tower cranes,
この掘削機どもやタワークレーンどもから
The diggers and the tower cranes.

Must we live in fear,
我々は恐れ戦(おのの)きながら生きていけねばならぬのか
From those who shed no tears?
この血も涙もない連中どもに
Our one and only shelter,
我々のたった一つの逃げ場所は
Your games, your helter skelter.
おまえが仕組んだ混沌の遊び場だというのか

Motorways and office blocks,
高速道路やオフィス街で
They're standing on the spot
こいつらはその現場に屹立していやがる
Where stood a home,
そこには我らの家があったところ
Crushing on the memories of people,
人々の生活の記憶や思い出をぶち壊し
Who have since turned to stone.
思い出を石に変えてしまうのだ

(Ahh)
They've turned to stone,
思い出を石に変えてしまう
(Ahh)
They've turned to stone.

Save us from the ball and chain,
我らをこの足枷から救い給え
Save us from the ball and chain,
Save us from the ball and chain,
oh yeah,
The diggers and the tower cranes,
この掘削機どもやタワークレーンどもから
The diggers and the tower cranes.

☆ Ball and chainというのは,囚人が逃げ出さないように足を鎖で繋がれて,その鎖の先が重い鉄の玉になっているという「あれ」のこと。

2017年10月27日付記(訳詩含む)
☆ Wikipedia(英語版)で『English Settlement』の項目を見ると,アルバム(1982年2月12日リリース)は,全英5位(全米48位,カナダ15位),先行シングル「Sences Working Overtime」(1982年1月8日リリース)は全英最高位10位,このシングルは同58位とある。アルバムが2枚組LPであったことを考えてもかなり大きな成功を収めている。アルバムジャケットに描かれているのは「ヒルフィギュア(英語: hill figure)」=イギリスの石灰岩の丘陵地帯に画かれた地上絵」の一つ「アフィントンの白馬(Uffington White Horse/Uffington Horse)」である(詳しくはWikipediaの「ヒルフィギュア」の項参照)。

☆ この曲の歌詩は,数年先の我が国の不動産バブル全盛期を歌っているような感じがする(あるいは1990年代後半以降の中国のそれかもしれぬ)。ロンドン市の再開発の歴史をWikipediaの記事で見ると「ドックランズ(東部、テムズ川沿岸にあるウォーターフロント再開発地域)」という項目があって,こんな記述があった。

> (前略)1960年代から1980年代までにかけてすべてのドックは営業を停止し、ロンドン都心の真横に21平方kmの廃墟が誕生した。ロンドン東部イーストエンドには失業や、それに伴う諸問題が頻発した。
> ドック閉鎖に伴い、再開発が急務となったが、計画を完成させるのに10年、実行に移すのにさらに10年がかかった。1970年代から作業は始まったが、当該地域の地主がグレーター・ロンドン・カウンシル、ロンドン港湾局、電気、ガス、鉄道、5つの区などにわたり問題が複雑になっていた。
> そこで1981年、イギリス環境省によってロンドン・ドックランズ再開発公社(the London Docklands Development Corporation 、LDDC)が設立された。これは政府によって作られた会社であり、ドックランズの土地取得と整地の強大な権限を有していた。もう一つの重要な政策は1982年策定のエンタープライズ・ゾーンであり、該当地域内のビジネス活動には不動産税が免除されるほかさまざまな土地開発の簡略化などインセンティブが与えられた。これによってドックランズ内での開発は企業をひきつけ、一種のブームを起こした。LDDCの政策は、大企業やその勤務者向けの上質なビジネスセンター開発に偏り、手ごろな住宅の開発などを怠っているとの批判を生み、もとからの下町住民には自分たちのニーズは無視されているとの不満を呼んだが、LDDCの開発は(さまざまな異論が残るものの)ドックランズを大胆に変貌させた。1998年、ドックランズの管理が地元の区に戻り、LDDCの活動は終わった。

☆ どうも,このことを歌っている感じがする。そう考えると,この曲の「重低音」は地域住民の意向など一切考えず,ひたすら小奇麗なビジネス街(そこは当然お金を生み出すし,実際にそういう場所になっている。)をパースどおりに仕上げていこうというエリート様の御威光を御旗に,煉瓦と漆喰のちっぽけな家を押しつぶしていく開発という名の怪獣の足音のようにも聞こえてくるから不思議だ。

☆ 1960年代の前半の都会に生まれた人が知っていて,1980年代前半に同じ場所生まれた人が知らないもののひとつに「空(あき)地」があるのではないかと思う。いや勿論1980年代に生まれた人も空地は知っているだろう。でもその「空地」はたいてい駐車場になっていてトラロープを張った枠の中に小型乗用車が平日はズラリと鎮座ましましていたのではないか。

☆ 資本主義の本質はこの「空いているもの」を「埋めていく」ことにあるような気がする。国が豊かになり人々の所得が増えると,例えば自動車を持つ人が増え,駐車場のスペースに空地が侵食されていく。あるいは相続などをきっかけに空地が転売され建物が建つようになる。そうやって空地で草野球などということがだんだん出来なくなっていく。

☆ 物理的な空間を埋めていくと,次に資本主義は時間を埋めていく。機械化は確かに人々の肉体的な負荷を減らしたし,コンピューターは脳の負担を減らした。その一方で減らした分を埋めていくことが求められ「生産性向上」ということが言われるようになってきた。それすら面倒になったのか,人間が考えること自体を機械に任せようとしてシンギュラリティなどと言い始めた。

☆ 気が付けば我々は何ものかに追い立てられながら,同時に暇を持て余すようになっていった。その結果が「正しさ」を巡る果てしない不毛な論争やそこからの跳躍としてのポピュリズム,ナショナリズム,宗教的エンスージアズムだったのではないか。コリン・モールディングが歌った以上に,我々の足枷は重くなってしまったような気がするのである。

今日のカラオケコーナー(YouTube posted by Jim Schreiber)


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「Senses Working Overtime」 (XTC 1982年1月)




Senses Working Overtime (Andy Partridge)



☆ XTCの活動をこのアルバムを境に前後半に分けると,このアルバム(『イングリッシュ・セトゥルメント』)が前半の最高傑作になるという人は多い(個人的にはひとつ前の "重低音ポップ" 『Black Sea』がベスト)。確かに3枚目の『ドラムス&ワイヤーズ』辺りからみられたアコースティックの要素がこのアルバムでは前面に出ていて,アンディとコリンの創作意欲も旺盛,バンド初の2枚組アルバム(LP)となったことからも,この作品の評価が高いことは良く分かる(アルバムは全英最高位5位)。

☆ 「Senses Working Overtime」はアルバムからの先行シングル。シングル盤のジャケットが暗示するようにプリミティヴなドラムのリズムから始まるイントロは,どこか土俗的なイメージを漂わせつつ,ブリッジでその音を鮮やかに展開させ,フックでは完全なポップになるという三重構造の凝った展開は,前作の「重低音ポップ」の重さを一気に振り切るだけのパワーがあり,音的にも著しく展開していった。このバンドの本質がポップにあること,それを直截的に示すのではなく形態が異なりながらも(初期はバルー・アンドリュースの跳ねまわるキーボードであり,その後は複雑な音(=『ドラムス&ワイヤーズ』)やひたすら重い音(=『Black Sea』)に託して)「ひねくれたポップ・ソング」を作り出してきたのとは対照的だ。

☆ しかしXTCについて書かれた本(『チョークヒルズ&チルドレン』)にも書かれているようにアンディ・パートリッジはこの辺りから創作へのプレッシャーと一種のステージ・フライト(演奏恐怖症)に取り込まれてしまい,飛躍の機会を失ってしまう。このシングルの題名が "そのこと" を暗示させるという同著の指摘は認めざるを得ないと思う。
Personnel
Colin Moulding – lead vocals, backing vocals, fretless bass, Fender bass, mini-Korg, piano, percussion
Andy Partridge – lead vocals, backing vocals, electric guitar, semi-acoustic electric 12-string guitar, semi-acoustic electric guitar, acoustic guitar, mini-Korg, Prophet V, anklung, alto sax, percussion, frog
Dave Gregory – electric 12-string guitar, electric guitars, nylon-string Spanish guitar, semi-acoustic electric 12-string guitar, Prophet V, mini-Korg, backing vocals, percussion, piano
Terry Chambers – drums, drum synthesiser, percussion, backing vocals



今日のカラオケコーナー(YouTube posted by Jim Schreiber)


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プロフィール

deaconblue

Author:deaconblue
「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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