2017-10

夏服を脱ぐとき(朱夏⇒白秋)




☆ 誰も言わないので声を大にして言うのだけれど(自爆),1980年代の邦楽アルバムのTop10に入る(個人的に)『BOOGIE WOOGIE MAINLAND』(杏里1988年5月21日)の9曲目にしてシングル「SUMMER CANDLES」(1988年7月13日)のB面曲(ちなみに「SUMMER CANDLES」はアルバムを締める10曲目にして90年代前半の結婚式における新婦の友人代表選曲No.1らしいバラード)が「最後のサーフホリデー」だ。

☆ 以前『BOOGIE WOOGIE MAINLAND』のレビューで書いたように(そのうち再掲予定^^;),このアルバムは吉元由美(作詩)と杏里(作曲)と小倉泰治(編曲)で丁寧に作り上げた「お洒落な不良達のバイブル」である。この雰囲気は確かにバブル世代の息吹を濃厚に感じさせるところもある。だがそこには同時に10年前に三浦徳子や竜真知子が描いていた女性像がそのまま深化してセルフ(自己)をしっかり掴んだ彼女達の姿(あるいは世代のバトンを受け取った「次代の彼女達」)が見えるのである。吉元はアルバムに寄せたNoteでA面の彼女達がB面でどう変わっていくかをアルバムの主題として挙げている。この世代感覚は同時代の(専業)女性作詩家の中では銀色夏生と双璧だろうと思う。

「最後のサーフホリデー」
(作詩:吉元由美 / 作曲:ANRI / 編曲:小倉泰治)



☆ 曲の中にも対置されるコトバがある。「灼けてない」⇔「(素肌から)消していく」,「はしゃいでた頃の私達」⇔「さみしい大人」。前後が逆になっているのも上手い。現実(「灼けてない」)←過去(「消していく」),過去(「はしゃいでた」)→現実の方向(「さみしい」)と並べると,これがどうしようもないことであることは明白だ。終わらせなければならなかったから終わらせたのであって,終わった筈の記憶は記憶で無くなれば意味がなく,それはさみしいことだがどうしようもない。と循環してしまう。この心理の綾を軽めのビートに乗せて歌い切ったのは当時の彼女がそれなりに倖せの中にいたこともあるだろうし,それよりも自分の方向をしっかり掴み取った自信の方が大きかったのだと思う。

☆ でもこの曲を聴くと人はこうやって(たぶん他人に言えないほどに)傷つきながら季節を変えていくのだろうなと思う。夏服はもう着られないけれど(少なくとも今年は),まだ秋を迎えたわけではない。そんな中途半端な遣る瀬無さも幾分,曲の中に溶け込んでいるような気がする。だから最後に「SUMMER CANDLES」で締める必要があったのかもしれないが。


☆ たまたま7時のニュースを見ていたら安室奈美恵さんが引退を予告したことがニュースになっていた。産休から復帰し第一線にカムバックしてからの活躍も印象が強く残っている。40歳になったことを期にそういうことを決めた、という話だった。

☆ 興味深かったのは(見ていた)NHKの女性アナウンサーが彼女にかなり影響を受けたようなことを話していたことで,じゃあその昔は分厚いヒールのブーツを履いていたのかなとか,家に帰ったらご主人に「きみはアムラーだったの?」と言われる(かもしれない)光景などつまらないことをいろいろ考えてしまい,つくづくジジイってヒマ人なんだと自己嫌悪(自爆)。

☆ もう一つ興味深かったのは彼女が引退期日を特定していること。それもなぜか来年の今月今夜(2018年9月20日=彼女の41歳の日)ではなく4日前の9月16日(とNHKのアナウンサーは話していた)だという。このことに何となく引っ掛かりを覚えたのであった。

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「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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