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2019-08

アンコールコール



☆ アンコールのコールはいろいろあって,一番単純なのが「アンコール!」と連呼する奴で,変型版には「日本チャチャチャ」の「日本」のところをグループ名に変える奴がある。どうもこれはフットボールの応援から来ているようだが(例:England!チャチャチャ)詳しいことは知らない。

☆ レイニーウッドが売れ始めた頃は,一番手っ取り早いプロモーションツアーは学祭のゲストだった。意外と学祭で鍛われたバンドは多い(その頂点が白井貴子とかの女のバンドだったと思う)。で,ぼくの街の某大学の学祭に彼らが出ることが分かり,ホイホイと切符を買って見に行った。

☆ 柳ジョージの印象はシャイな人だなというものだった。レイバンのサングラスでのパブリシティーは強面(こわもて)だと思っていたが,そうではなくて優しい目を意識的に隠していたのだろう。そういえば昔,渋谷陽一が評していたがサングラスが目(表情)を「隠す」のに対し化粧は逆に顔を「強調する」(=攻撃的だ)。たぶんその話は忌野清志郎の化粧の話だったのだろう。1980年頃はまだ男の化粧品は限定的であり,男の化粧は歌舞伎くらいしかなかった。

☆ サングラスの効果は目や顔の一部を晒さないというより,その間に着色されたレンズを入れることで自らを一歩退いている(客観視している)ということはあったと思う。だから浜田省吾はたぶん最後まで(パブリシティにおいて)サングラスを手放さないだろうし,かつて偶然彼が奥様と一緒にいるところをキャッチした写真週刊誌もサングラスを外した浜省はキャッチできなかった。

「雨に泣いてる...」 (柳ジョージ&レイニーウッド 1978年12月1日)



☆ で,その学祭でジョーさんはこのシングルのジャケットにあるように煙草を挿したままドリンク(酒かどうか不明)のカップを持ってたら客席から「煙草が渋い」と声がかかり,思わず照れていたのを思い出す。ミュージシャンと言う前にバンドマン(バンドリーダー)なんだなあと思ったものだ。

R.I.P. 柳ジョージ(1948.01.30~2011.10.10)
&萩原健一(1950.07.26~2019.03.26)


☆ ところでこの曲のタイトルはようつべのジャケットに表記通りは「雨に泣いてる...」で「雨に泣いてる」ではない。そう言えば「北斗の拳」(武論尊/原哲夫)のケンシロウの科白。第1巻の最初の科白は「おまえはもう死んでる」で「死んでる」ではない。

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「能古島の片想い」 (井上陽水 1972年12月10日=アルバムリリース)



☆ 博多湾は日本海側にあるので能古島から船が南に向かうと渡船場に着く(笑)。ちなみに能古渡船場から能古島までは15分ほど。井上陽水がいちばんリリカルなフォーク歌手だった時代はこのセカンドアルバム『センチメンタル』なのだと思うが,その中でも最もリリカルな曲がこの曲なんだろうと思う。

「能古島の片想い」 (作詩・作曲:井上陽水 編曲:星勝)



☆ 星勝のアレンジが焦眉で,デキシー風に振った後ストリングスで締めるコーダは絶品。初期の陽水は声のトーンが高い分,高音部で音が割れる(最初期の松田聖子のように),この時代の彼の曲がリリカルなのは,そうした声質も一因だろうと思う。


☆ しかし曲もアレンジも(おそらく詩も)ホントにビートルズ・チルドレンだなあ。

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「薔薇とノンフィクション」 (PSY・S 1988年7月21日)【4月6日改稿】



「薔薇とノンフィクション」 (作詩:松尾由紀夫 / 作・編曲:松浦雅也)


☆ 『Non-Fiction』でサイズが示したのは(後年それがバブルと蔑まれたにせよ)ある世代にとっての「朱夏」の姿だったと思う。人は自分が生きる世代を選ぶことはできない。彼等が記しているのは一つの世代にとっての夏の徴(しるし)だ。

☆ 計算され作り込まれた音の上でヴォーカルがゆっくり,かつ確実に「うた」を刻んでいく(大滝さん流に言えば激しいビートに乗せて朗々と歌う)。それは彼らがその時間を生きた証であり,リアルな記録でもある。

☆ 時代が一つ変わる。半ば強制的に変わる。変わることは未来を見ることにもなりうる(見たくないと顔を背ける者もまた多くいるだろう)。変わること自体を信じる。そんなシンプルで明るい希望が,この時代の「うた」の中にはある。そのこと自体は遠く時を隔てた今もなお真実であり,信じてよいことだと思う。

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あれは86年あたりだったかな



☆ まだ当時勤めていた会社に車通勤できていた頃だったと思う。その頃のFM横浜はMMLT(モア・ミュージック・レス・トーク)を打ち出して成功していた。朝7時から早見優の持ち番組があって,その次の番組のテーマ曲がスクエアの「メリイルウ」だった。だからぼくは遅刻しないように車を寮から出す時にこの曲をよく聴いていた。

MERYLU (作曲:和泉宏隆)
1989.6.26大阪フェスティバルホール。コンサートツアー1989"WAVE"



☆ 会社に電車通勤していた頃は毎日2時間の残業が事実上の定時だった。よく考えれば,コンピューターはまだ一部しか導入されておらず(アップルコンピューターとかマイクロソフトとかインテルなんて会社のことは名前も知らなかった。会社に行く途中にヒューレット・パッカードが当時某社と合弁で出していた会社があったので,この社名だけは知っていた),いまの人が言う「昭和な(=高度経済成長時代の)仕事のやり方」をしていたのだと思う。いま思えば最初の上司は紛う事無きパワハラ体育会系だったし(失礼ながらK大体育会の典型的軍隊向き人材だったんじゃないのか),あの体験から体育会(的思考)は親ならぬ自分の仇になったのだが,内部通報制度もコンプライアンスも何もない時代だったからできることは何もなく今さらながら#me,tooを食らわせてやりたくなるのだ。

☆ いま思えば,当時は間違いなく自律神経失調症だったし軽度の抑うつ状態だったのだと思うが,車通勤(これをするためには常時3時間残業になっていたが)をするようになって音楽が気晴らしになった。ポピュラーソングが多く,トークの少ないFM放送が朝の親しい友人となったのもそういう経緯があったからだと思う。

☆ 何者にもなれなかったぼくが思うのは,30年前の曲を30日前の曲のように語れるようになること。そのときぼくの頭の中には30万曲のジュークボックスがあり,30万曲の「ともだち」がぼくを孤独から救い出してくれるということだ。

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「ひき潮」 (矢沢永吉 1976年9月21日)



☆ 1978年8月28日。矢沢永吉が後楽園球場で開催したコンサートの終了後,会場に流れたのがこの曲だった。矢沢という人は若い頃の言動が増幅され変な誤解を受けてしまったが,明らかにこの国の20世紀後半を代表する作曲家の一人である。もちろん永ちゃんは「ロックの矢沢」なのだが,彼の本領は図抜けた作曲能力であり,おそらく範としたミュージシャンはポール・マッカートニーだろうと思われる。そしてまた,ポールのように長期間その国のポピュラー音楽に多大な影響を残す作品を書き続けてきた。

「ひき潮」 (作詩:山川啓介 / 作曲:矢沢永吉)



☆ ミュージシャンはソングライター(作詩家/作曲家)であるタイプと作詩または作曲の(ほぼ)専業というタイプがある。井上陽水,中島みゆき,松任谷由実,浜田省吾,桑田佳祐らは前者であり,彼や吉田拓郎は後者(作曲主体)である。矢沢が尖がっていた頃のパブリックイメージと彼の作品とは本質的に関係がなく,ただ「歌手としての矢沢」がいろんな作詩家の作品(主人公)を「演じている」という図式がある。それは当然彼の歌手としての資質(声のトーン・声域・声量・リズム感)を反映していく訳で,そのこと自体は普通の歌手と何ら変わらない。ただ作曲家としての彼の立場から見れば,作詩家の提供する物語にどういう音で色付けしていくかという作業になる(とうぜん「詩先」「曲先」でその結果は変わってくる)。

☆ だけどこの曲を作った20代の彼はやはり天賦のものを持っている訳で,年齢を重ね豪華な演奏に包まれても,その曲の持つ本質と山川啓介の書く詩の物語は凡百の作品を変えた地点に位置すると言うしかないのだ。

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「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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