2017-04

むらさきな雨に塗(まみ)れて



☆ 亡くなって初めてプリンス(以下「殿下」という。)が本名だと知った。R.I.P.(ご冥福をお祈りします)の名の下に冗談みたいなプライスタグや冗談みたいなようつべが並んでいるので,今日はそういうものは一切紹介しない。

☆ プリンスという名のミュージシャンの存在を知ったのは(ローリング)ストーンズの全米ツアー。殆ど無名のミュージシャンがヘッドライナーとして起用されたという話題の主が彼だった。70年代のストーンズはキースがヘロヘロ(名前のとおりのヘロイン中毒)だった割には結構活発だった。良く考えれば毎年なにがしかアルバム出していたからね。ストーンズ。だから渋谷御大みたいなストーンズ・ウォッチャーには早くからその存在は知られていたと思う。

☆ 70年代のストーンズのヘッドライナーと言えば,スティーヴィー(ワンダー)が有名だけど,殿下の場合は,最初から一切妥協しない殿下スタイルだったようで(笑)ステージに上がったは良かったが,ストーンズ目当ての観客から散々な目に遭わされたという話は聞いたことがある。確かにこのステージに出た20代前半に殿下の音楽世界はほぼ完成しており,そうなると後は周囲がその世界を受け入れるかどうかという問題になる訳で,何の予備知識もなくヘッドライナーに殿下が出てきたら「帰れ!」ってなことになるだろう(ちょうど篠島で(吉田)拓郎のヘッドライナーをやった長渕剛のように)。

☆ そういう訳で「そういうヒト」がいるということは分かっていたのだが(爆)その人の作品に本当に気付いたのは『1999』の頃だった。出世曲「リトル・レッド・コルベット」やタイトル曲がヒットして初めて認識した。「ああ,あの時のストーンズのヘッドライナーだった...」って,殿下に対してずい分な物言いだこと(苦笑)。

☆ その次は言うまでもない「When Doves Cry(ビートに抱かれて)」の全米No.1。この時もこう思った。「この邪魔な曲がなければボス(「ダンシング・イン・ザ・ダーク」)が1位になっているのに(再爆)」。とまあ,この時期の殿下って,ずいぶんアンダーレイテッドな扱いだった。さすがにイロモノ扱いからは脱していたが,「When Doves Cry」の強烈な存在感,このベターっとした暑苦しさ(再々爆)は,今までどこでも聴いたものでもなく,明らかに全てが新しい音でもあった。前年の83年にマイケル(ジャクソン)がダンス音楽をそれまでのDISCO時代から別次元にする画期を創造したが,その「メインストリーム・ダンス/ディスコ」に対するミネアポリスの回答は,さらに新しい次元のダンス音楽の創造だった。

☆ このあたりから『サイン・オブ・ザ・タイムズ』までが,リスナーとしてのぼくの殿下歴である。「When Doves Cry」の暑苦しさを一掃した「Let's Go Crazy」は殿下に対する評価を一転させた。このバクダンみたいな曲は,プリンスというミュージシャンがソウルであり,ダンス音楽であり,ロックであり,結局はその全てがプリンスという名の下に統合された音楽であるということを知らしめたからだ。

☆ 『オフ・ザ・ウォール』と『スリラー』でクインシー・ジョーンズを駆使しながら(としか思えない)余人を以て代え難いレベルにダンス音楽(当然ダンスそのものもそこに含まれる)を導き,言うなれば殿堂を築いたのがマイケルだった。ところが気が付くとマイケルの殿堂の隣に全く別の,しかも同レベルの高さを誇る殿堂が築かれてしまった。そういうインパクトは確かにあった。

☆ もちろん彼らのあり方(縮れ毛にパーマをかけ白人のように振舞うがごときパフォーマンス)に厳しいというか冷めた目で批判する向きは少なくなかった。それはたぶん60年代後半から70年代にかけての「ニュー・ソウル」ムーブメントに対する反動としての(言い換えるとカウンター・カルチャーとしてのフォークが商業化された「ニュー・ミュージック」に変化したことへの生理的反発と同根のもの)批判だったと言えよう(そういう発言をした著名氏を,ぼくも確かに知っている)。

☆ それはしかし外見的スタイル(見栄え)の問題であり,彼らが革新していったダンス音楽という点から再評価すれば,著名氏の批判にかかわらず,あれは確かに70年代の「ニュー・ソウル」の血脈を受け継ぐものであったと,ぼくは考えている。

☆ 映画の『パープル・レイン』はありがちなビルトゥングス・ロマンで,出来の良い映画というより,その昔お正月にやっていたバラエティ番組の豪華スクリーン版的なところだったかもしれない。だが,本人の自己満足だったかどうかは別にして(爆),ミネアポリスという地方都市(その割には連邦準備銀行なんかがあるので,それなりに枢要な都市なのだろうが)の音楽シーンが活写されていたのも事実であり,そういう記録としては十分に意義のある作品だったと思う。

☆ たまたま数日前にシーナ・イーストンのことを書いた際に『サイン・オブ・ザ・タイムズ』に触れたが,実際,殿下が,ぼくとほぼ同世代ということは見落としていて,少し感じるところがあった。

R.I.P. Prince Rogers Nelson(June7, 1958 - April21, 2016)

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「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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