2018-02

「ナイルパーチの女子会」 (柚木麻子:文春文庫)




☆ ぼくは佐藤優のしつこい読み手で(笑),同世代人として敬服している部分が多いのだが,彼もまた優秀な読み手である。良い物書きはほぼ間違いなく優秀な読み手である。もっとも世の中には天才的書き手がいるので良い読み手であることは必要条件ではなく十分条件だと言えるのかもしれない。

☆ 読み手として優れていることが物書きの十分条件だと思う理由は,たとえば又吉直樹のように優秀な読み手が優れた小説を世に問うことができることからも分かる。ぼくは『火花』は純文学だと認識しているし(芥川賞を獲ったからではない。むしろ逆の関係だ),その後に彼の出した新書本で彼が優秀な読み手であることを確認できた。『劇場』は『火花』の主題をさらに追求しており,文学として磨きがかかっていることも理解できる。

☆ 優秀な読み手とは単に古典文学を読んできた人ということではない。一般紙を意味を持って毎日読んでいれば誰でも優秀な読み手になる切符の一枚や二枚手にすることが出来るのではないかと思う。つまり「あるものごと」に関して記者が自らの主観を交えた記事を書くという行為を理解できるというのがその切符で,新聞に書かれたことを真に受けただけでは(記者の主観がどこなのかに理解が及ばない状態)ではその切符は得られない。ドナルド・トランプがその切符を見切ったうえで「偽(フェイク)ニュースだ」とつぶやいているのであれば,この爺さんは実は政治家として優秀で「㌧だ食わせモノ」ということになる。

☆ 読みとしての佐藤優は村上春樹をはじめとする日本の作家にも通底している。ただし彼は自分の持ち時間に限界があることを厳しく意識しているので,読める本の範囲を限定している。だからという訳ではないが,佐藤優というフィルターはHONZのようなものであり,ある意味で読書ガイドの役に立つと個人的に理解しており,そこで柚木麻子が出てきたことには,それなりに意味があると思っている。

☆ じつはこのフェイク書評はこれで終わりである(爆)。「ナイルパーチの女子会」は山本周五郎賞と高校生の選ぶ直木賞(微妙な名称で「BUTTER」が直木賞獲り損なったこともあってさらにビミョーなものがあるのだが)を獲っている。確かに若い(思春期の)読者が読むべき本だと思う。印象深いキャラクターは(仮面を被っていた)マイルドヤンキーの女の子だが,そこにぼくは階級というものをやはり見てしまう。ぼくらの一つ半前の世代が掲げたものが(北方謙三の書名だが)『あれは幻の旗だったのか』という思いをそれなりに持っていること(そういう点で見れば今月の「私の履歴書」は興味深かった。)であったことを思えば,もはやこの小説の主人公に誘惑(されもしないのだが)場面をみさせられる上級管理職と同じ年代に達しているぼくらがどんな旗も掲げていなかったことこそが,この国に階級をひそやかに(再度)持ち込む結果となったのかもしれないというほろ苦さを感じてしまう。しょせん「おじさんの繰り言(世迷い言)」でしかないのだが。

☆ 二人の主人公の女性(受け取ってくれるならマイルドヤンキーの女の子にも)にこの曲を贈りたい。



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「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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