2018-07

「I'm a Party」 (マガジン 1980年5月=アルバムリリース)




☆ マガジンのサード・アルバムはある意味このバンドにとっての正念場だったと思う。デビュー・アルバムで彼らはパンク以降の音楽の方向性を明示し,セカンド・アルバムはそれをさらに進めようとした。その試みに対するプレス(音楽紙業界)の評価は「労働者階級のピンク・フロイド」という誰が見ても逆上しそうなものだった。後にハワード・ディヴォートがソロ・アルバムを出した際のインタビューでマガジン時代の音楽を「ヘヴィな審美主義」と評しているが(その傾向はむしろLuxuria時代にこそ感じるが),少なくとも前作よりは軽い音をバンドとプロデューサーのマーティン・ハネット(31 May 1948] – 18 April 1991)は目指していたと思う。

I'm a Party
(Barry Adamson, Howard Devoto, John Doyle, John McGeoch and David Tomlinson)


I'm such and such
私は斯斯云々(かくかくしがじか)
I'm a scream
私は一種の雄叫(おたけ)び
Bad choices take me to task
酷(ひど)い選択の結果
とんでもない仕事を押し付けられ
You'll see
お分かりですかな
I'll take out the car
そこの車を持ち出すことになるが
But nobody'll want to crash
誰も衝突事故なんて望んじゃないでしょう
Take me with you
あなたと一緒に連れて行ってくださいな
(I'm a parry)
(私もその一味)
I don't know where I've been
だがしかし,どこにいたなんてとんと覚えちゃいない
So all things being equal
ですから須(すべか)らく物事は平等でして
(I'm a parry)
(私もその一味)
I won't know where we're going
その割にはこれから何処へ行こうとしてるのか
見当もつきませぬ

You could do me a favour
もし助けていただけるのでしたら
Do whatever you want to
あなたがしたいどんなこともしていいですから
I will let you hurt me
私はあなたが私を害するように仕向けるでしょうか
Because I know it hurts you
その理由は
そうすることであなた自身を傷つけることになるからですよ
It hurts you
そう,あなた自身を

What you say goes
あなたの言葉が罷(まか)り通っている限り
(I'm a parry)
(私もその一味)
All over the town
この街中にその威令が罷り通る限り
I fell into you
私はあなたに従っていくだけ
(I'm a parry)
(私もその一味)
I keep up with all that's coming down
そこに下される指示に坦々と従っていくでしょう
So, what's shaking!
それで,最近はいかがでした!
(I'm a parry)
(私もその一味)
You've got me racing, you've got me racing
あなたが私を無意味な競争に追い立てる
競争の中に追い立てる
The sound of a siren
警報は街中に響き渡り
In all the spaces between
あらゆる隙間を埋めていくかのよう

You could do me a favour
もし助けていただけるのでしたら
Do whatever you want to
あなたがしたいどんなこともしていいですから
I will let you hurt me
私はあなたが私を害するように仕向けるでしょうか
Because I know it hurts you
その理由は
そうすることであなた自身を傷つけることになるからですよ
It hurts you
そう,あなた自身を

(間奏)

You could do me a favour
もし助けていただけるのでしたら
Do whatever you want to
あなたがしたいどんなこともしていいですから
I will let you hurt me
私はあなたが私を害するように仕向けるでしょうか
Because I know it hurts you
その理由は
そうすることであなた自身を傷つけることになるからですよ
It hurts you
そう,あなた自身を

(I'm a parry)
(私もその一味)
I know it hurts you
私はそれがあなた自身を傷つけることを知っていますよ
(I'm a parry)
(私もその一味)

Repeat and fade

☆ バンドとしてのマガジンがこのアルバムで目指したものは,前2作に見られた個人を出発点とするミニマリズム的心象風景ではなく,個人と社会(ここでは家庭のような基礎単位から政治(権力)闘争に揺れる企業内社会までが含まれる)との「関係性」で,そこにバンドの歌詩のテーマが移ったことは注目すべきである。その背景には前作に寄せられたステロタイプな批判への反省があったことは疑う余地はない。社会との関係性というテーマで見るならば70年代初頭のニュー・ソウルは明らかに黒人社会が米国で抱えていた問題の反映だったし,パンクでもピストルズやクラッシュには明らかに社会との関係性(現実としての社会問題=それを解決しようとしない政治への批判を含め)があった。またポール・ウエラーもスタイル・カウンシルでニュー・ソウルを80年代にアップデートさせながらこの問題を取り上げている。

☆ ディヴォートらは確かに「ヘヴィな審美主義」に社会性の「眼」を与えようとし,このアルバムでは確かにそれは成功している。ただアルバムの価値が認められ始めた頃には既にバンドは空中分解した後だった。マガジンというバンドに悲劇があるとすればたぶんその一点だったのだろうと思う。

PERSONNEL

Magazine
Howard Devoto – vocals
John McGeoch – guitar
Barry Adamson – bass guitar
Dave Formula – keyboards
John Doyle – drums

Additional personnel
Laura Teresa – additional backing vocals
Raphael Ravenscroft (uncredited) – saxophone on "I'm a Party"


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「Parade」 (Magazine 1979年6月=アルバムリリース)


リアル・ライフリアル・ライフ
1,080円
Amazon


初出:2013年5月14日(訳詩追加)

☆ マガジンのデビューアルバム『リアル・ライフ』の最後を飾る曲で,珍しくベーシストのバリー・アダムソンが詩を書き(ディヴォートが捕作している)デイブ・フォーミュラが曲をつけている。個人的にはこの曲をもって後のニュー・ロマンティックス(フォーミュラ,ジョン・マッギオーク,アダムソンの三人はそれに深く関わっている)につながるサウンド・プロダクションの原始的萌芽と捉えている。間奏部分のマッギオークのサックスが曲に深みを与えている(彼のような器用なプレーヤーがいなかったから,ニュー・ロマは広がりにかけたのかもしれない)。

Parede (Barry Adamson/David Tomlinson/Howard Devoto)


They will show me what I want to see
彼らはぼくが見たいと思うものを見せてくれるだろう
We will watch without grief
ぼく等は悲しみに沈むことなく見つめることになるだろう
We stay one step ahead of relief
ぼく達は安堵のためほんの一歩そこから歩み出すのだ

You tell me we've been praying
きみは教えてくれる,ぼく達が祈りの中にあるということを
For a bright and clever hell
輝かしく,賢い修羅場のための
I think we've been forced to our knees but I can't tell
ぼく達はたぶん無理やりそこに跪(ひざまず)かされている,だけど僕はそれを告げられない

Sometimes I forget that we're supposed to be in love
ぼくは時に忘れてしまうのだ,たぶんぼく達はお互いのことが好きだということを
Sometimes I forget my position
時にぼくは,自分のいる場所を忘れてしまうのだ

It's so hot in here
ここは何となく暑くないかい
What are they trying to hatch?
彼らは何を企んでいるのだろう?
We must not be frail, we must watch
ぼく達は挫(くじ)けてはいけない,ぼく達はその正体を見届けないといけない

Now that I'm out of touch with anger
今やぼくは,苛立ちを抑えきれなくなっている
Now I have nothing to live up to
今はぼくには,なす術は無くなってしまっている
And I don't know when to stop joking
それなのに,ぼくはいつこの取り止めもない話を止めればいいのか分からない
When I stop I hope I am with you
ぼくにそれをやめる時があれば,たぶんきみがその傍にいる時だろう

Sometimes I forget that we're supposed to be in love
ぼくは時に忘れてしまうのだ,たぶんぼく達はお互いのことが好きだということを
Sometimes I forget my position
時にぼくは,自分のいる場所を忘れてしまうのだ

What on earth is the size of my life ?
いったい全体,ぼくの人生ってものは何なのだ?

It's so hot in here
ここは何となく暑くないかい
What are they trying to hatch?
彼らは何を企んでいるのだろう?
We must not be frail, we must watch
ぼく達は挫(くじ)けてはいけない,ぼく達はその正体を見届けないといけない

Now that I'm out of touch with anger
今やぼくは,苛立ちを抑えきれなくなっている
Now I have nothing to live up to
今はぼくには,なす術は無くなってしまっている
And I don't know when to stop joking
それなのに,ぼくはいつこの取り止めもない話を止めればいいのか分からない
When I stop I hope I am with you
ぼくにそれをやめる時があれば,たぶんきみがその傍にいる時だろう

Sometimes I forget that we're supposed to be in love
ぼくは時に忘れてしまうのだ,たぶんぼく達はお互いのことが好きだということを
Sometimes I forget my position
時にぼくは,自分のいる場所を忘れてしまうのだ

Personnel
Howard Devoto – vocals
John McGeoch – guitar and saxophone
Barry Adamson – bass guitar
Dave Formula – keyboards
Martin Jackson – drums

2017年10月2日付記
NOTE: クレジット中,David Tomlinsonは,Dave Formulaの本名。彼が芸名を使った理由は本名と同姓同名の著名人(俳優)がいたため。本邦における同様な例として,ケラリーノ・サンドロヴィッチ(本名が著名実業家と同姓同名)がある。

☆ マガジンの歌詩の世界はハワード・ディヴォートの美意識に左右されているが,彼のそうした意識がマガジンというバンドを形成していたということもできる。この曲はアダムソンがクレジットされているが,曲のテーマは単純であり複雑でもある。人が誰かを意識し始め,どうやらそれが恋らしいと気付くにはどれほどの時間がかかるのか。それはもちろん一つ一つで異なる。この曲の主人公は,自分の気持ちに素直になれないまま,立ち止まっている。彼の目の前を通り過ぎていく「パレード」はもちろん彼にしか見えない幻想で,それは「輝かしく,賢い修羅場」であることを彼はじゅうぶん認識している。

☆ この曲がニュー・ロマンティックスの原型になったかどうかは評価が分かれる。ただ(ここまで過大評価するのも気恥ずかしいのだが)『クリムゾン・キングの宮殿』の「エピタフ」のような)そのアルバムを通して「その時代」を象徴する作品であることは疑いない。『リアル・ライフ』というアルバムが「ディフィニティヴ・ゲイズ」から「パレード」までの全曲が統一した美意識の中で創作されていることは「パンク/ニュー・ウエイブ」の時代が大きな曲がり角を曲がったことを何より雄弁に示している。「ショット・バイ・ボース・サイズ」は1978年のベスト・ロックンロール作品(「ローリング・ストーン」誌)かもしれないが,『リアル・ライフ』は偶然邦題が何気なしに使った「明日に撃て」のままのアルバム。つまり「ポスト・ニューウエイブ」の時代の号砲となったのだ。

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「You Never Knew Me」 (Magazine 1980年5月=アルバムリリース=)




You Never Knew Me
(Adamson/Formula/Devoto/McGeogh/Doyle)



I don't want to turn around
ぼくは別に物事をひっくり返そうと思ってる訳じゃないんだ
And find I'd got it wrong
ましてそれをより悪くしようなんて
Or that I should have been laughing all along
あるいはその事実にただ苦笑いし続けるような羽目になるなんて
You're what keeps me alive
君がいるから今のぼくがあるというのに
You're what's destroying me
その君が今やぼくの存在を壊し続けている
Do you want the truth or do you want your sanity?
君は真実って奴を知りたいのか,それともまともで居たいだけなのか?

You were hell
君は酷い状況だった
And everything else was just a mess
君の周囲にあった全てがメスのように君の心を切り刻んでいた
I found I'd stepped into the deepest unhappiness
ぼくは自分がとんでもないどつぼに嵌まりつつあるあることは分かっていた
We get back, I bleed into you
ぼく達は元に戻らなければ,君の心に息吹を吹き込まないと
Thank God that I don't love you
おお神様,ぼくは君のことが好きじゃないのさ
All of that's behind me now
いまぼくの背後にあるもののすべてが
Still seems to be above you
いまだに君の上に留まっているかのようだ

I don't know
ぼくは分からないよ
I don't know whether I ever knew you
自分が君のことをキチンと分かっていたのかどうか
But I know you
でもぼくは君のことが分かっている
I know you never knew me
ぼくには分かる。君がぼくのことを決して理解しようとしないことが
I don't know
どうしてだかは分からない
I don't know whether I ever knew you
ぼくが君のことをちゃんと分かろうとしていたのかどうか
But I know you
でもぼくには君のことが分かる
I know you never knew me
ぼくには分かる。君が僕のことを決して分かろうとしないことが

Do you want to
君はどうなんだ

Hope doesn't serve me now
望みの糸もいまや断たれてしまった
I don't move fast at all these days
ぼくはここのところ物事を急がせるような気持ちはすっかり消えてしまった
You think you've understood
君はたぶん分かっているつもりなんだろう
You're ignorant that way
でも君はそういうやり方については全くの無知なんだけれどもね

I'm sorry, I'm sorry, I'm sorry
ぼくが悪かったんだ,そうぼくのせいさ,本当に済まなかった
I'm sorry I can't be cancelled out like this
ぼくがすべての物事をこういうふうに帳消しにできなかったのは悪かった
We had to kill too much
ぼく達はあまりにもお互いを傷つけあってきた
Before we could even kiss
ほんの仲直りのキスをする前にさえ

I don't know
ぼくは分からないよ
I don't know whether I ever knew you
自分が君のことをキチンと分かっていたのかどうか
But I know you
でもぼくは君のことが分かっている
I know you never knew me
ぼくには分かる。君がぼくのことを決して理解しようとしないことが
I don't know
どうしてだかは分からない
I don't know whether I ever knew you
ぼくが君のことをちゃんと分かろうとしていたのかどうか
But I know you
でもぼくには君のことが分かる
I know you never knew me
ぼくには分かる。君が僕のことを決して分かろうとしないことが

Do you want to
君はどうなんだ
Do you want to
Do you want to
Do you want to
Do you want to
Do you want to

Songwriters
BARRY ADAMSON, DAVID TOMLINSON, HOWARD DEVOTO, JOHN MC GEOGH, JOHN E DOYLE
※DAVID TOMLINSONはDave Formulaの本名。

☆ イギリスのバンド,マガジン(Magazine)1980年発表の最高傑作『ザ・コレクト・ユース・オブ・ソープ』の頂点にある作品。「石鹸の正しい使い方」はアルバム内の別の曲に出てくる(笑)。石鹸が意味するモノは米国流の「ソープ・オペラ(昼メロ)」であり,その文脈からはこの曲が一番しっくりくる。

☆ このアルバムのコンセプトは「この時代に悩まされている人々」についての考察であると思われる。だからスライの「サンキュー」があったり,フョードル・ドストエフスキーの影響下にある「ア・ソング・フロム・アンダー・ザ・フロアボーズ」でLPが締めくくられていたりするのだが,この曲に焦点を絞れば「人が人と分かりあうことの難しさ」になると思う。それは単に冷めかけた恋人や夫婦の話ではなく,もっと普遍・一般的な感じがする。


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「Definitive Gaze」 (Magazine 1978年6月=アルバムリリース)



リアル・ライフ(紙ジャケット仕様)リアル・ライフ(紙ジャケット仕様)
(2007/06/27)
マガジン

商品詳細を見る


2009年3月19日
☆ マガジンという試みは,パンクの初期衝動とは無縁のものである。ハワード・ディヴォートはピート・シェリーと喧嘩別れしたわけではなく,ピートがピストルズのギグを見て脳天をかち割られたことを反復することを望まなかっただけのことだと思う。

☆ マガジンのセカンド・アルバムは当時のプレスに酷評された。曰く「労働者階級のピンク・フロイド」だとか。そのピンク・フロイドは「ウイッシュ・ユーワー・ヒア」から「アニマルズ」を経て「ウォール」に向かいつつあった。両者の比較には意味は無い。ただマガジンを結成するに当たってディヴォートの描いた音のありようは確かに「プログレッシヴ・ロック」の方向性を持っていた。

☆ ブリティシュ・ロックの歴史におけるマガジンの功績はパンクとニュー・ロマンティックスを結ぶ線上にある。前者は衝動的・反抗的・原始的であり,後者は商業的・耽美的そしてポップである。そこには「窯変」が必要であり,それを果たした原動力が,このアルバムであり,アルバムタイトルを歌詞に含むオープニング曲,つまりこの曲である。

2009年5月4日
☆ 3月に記事を書きかけて一時中断していたのだが,その前月に再結成ツアーが英国で行われていたようで,You Tubeにたくさん投稿がありビックリしている。オリジナルアルバムが出て31年経っているのだが,いまだにこの時代の最も重要な作品の一つだと確信している。そこで前回書きかけに戻り,レビューを行うことにする。

☆ マガジンという試みは,パンクの初期衝動とは無縁のものである。ハワード・ディヴォートはピート・シェリーと喧嘩別れしたわけではなく,ピートがピストルズのギグを見て脳天をかち割られたことを反復することを望まなかっただけのことだと思う。

☆ マガジンのセカンド・アルバムは当時のプレスに酷評された。曰く「労働者階級のピンク・フロイド」だとか。そのピンク・フロイドは「ウイッシュ・ユーワー・ヒア」から「アニマルズ」を経て「ウォール」に向かいつつあった。両者の比較には意味は無い。ただマガジンを結成するに当たってデヴォートの描いた音のありようは確かに「プログレッシヴ・ロック」の方向性を持っていた。

☆ ブリティシュ・ロックの歴史におけるマガジンの功績はパンクとニュー・ロマンティックスを結ぶ線上にある。前者は衝動的・反抗的・原始的であり,後者は商業的・耽美的そしてポップである。そこには「窯変」が必要であり,それを果たした原動力が,このアルバムであり,アルバムタイトルを歌詞に含むオープニング曲,つまりこの曲である。

☆ マガジンのデビュー曲「Shot By Both Sides」は,バズコックス時代のアウトテイクと言って良い作品だが,そこで聴かれるものは当時の米「Rolling Stone」誌が「この年発表されたロックンロールの最高作品」に選ぶだけの価値はある。この一曲でマガジンはポスト・パンクの方向性を示した。

☆ しかし,彼らが進めた「音楽」は,このシングルさえ凌駕する。それはパンクとプログレとの直接的な結合であり,アメリカン・ハード・プログレに対するオルタナティヴとしての「新しい波(New Wave)」であった。

2009年5月5日

☆ 英国で1980年のシーンをリードするのは,オルタナティヴとヘヴィ・メタルだ。この両翼の間にコマーシャルなムーブメント(例えばニューロマンティックス→ストック・エイトキン・ウォーターマン/ユーロビート)やインディーズ(例えばヴァージン,スティッフ,チズウィック,ラフ・トレード,ファクトリー,2トーン,クレプスキュールなど)が百花繚乱となった。

☆ マガジンには「弾倉」という意味があるが,パンク的な直線から歪んだキーボードとかき鳴らすギター,それを黙々と支えるベースとドラムス,そして個性の塊のようなヴォーカルが渾然一体となり,平坦な初期衝動の壁紙を打ち破って新たな地平を示した。この作品の価値はまさに1969年のキング・クリムゾンの登場と対を成すものである。



2009年5月6日

☆ アルバムヴァージョンはメッセージを簡略化するため,ギターとキーボードの作り出す渾沌は控えめになっている。ギターは時にバックでリズムを刻むかと思えば,いきなり正面に出てきてフレーズを弾く。キーボードはイントロでテンションを高めた後,一気に華やかに展開する。それをしっかり支えるベースと正確なドラムスが否が応でも散漫に成りそうなキーボードを引き締める。この1分余りの長いイントロに曲の世界が凝縮され,そこに抽象的な歌詞が短く添えられる。

Definitive Gaze(Howard Devoto, John McGeoch)




I've got this bird's eye view
and it's in my brain
clarity has reared
its ugly head again
so this is real life
you're telling me
and everything
is where it ought to be

I like your nerve
I like watching you
but I don't watch what I'm doing
got better things to do
so this is real life
you're telling me
now I'm lost in shock
your face fits perfectly

☆ 音楽の手法としては,パンク由来の極めてタイトな部分とプログレ由来の長く複雑な部分が絶妙にブレンドされている。間奏の展開が長く続いてもそれに続く歌詞は最早存在せず,そのままコーダへとなだれ込んでいく。それは「再現性のある音楽」としてのロック的な手法を駆使しながら,極めてデザイン的でもある。この音楽はパンクの領域から離れ,プログレッシヴ・ロックよりも同時代的で「モダーンな音楽」の態様を示し出した稀有な作品なのである。

☆ 2009年に「再生産」されたマガジンのステージを「YouTube」で見ることが出来たのは僥倖である(なにせ一度も来日しなかったから)。たぶんその半分はノスタルジイの類であっただろう。でも,30年経ってこの音楽がちっとも古びていないことを自分は確認できた。

2017年2月8日付記(英国版Wikipedia)
> Having toured much of the album through 1977 and early 1978, the group's then lineup of Devoto (vocals), McGeoch (guitar and saxophone), Adamson (bass), Formula (keyboards) and Martin Jackson (drums) recorded the album in sessions using the Virgin Mobile and at Abbey Road Studios between March and April 1978. The album was produced and engineered by John Leckie.

1977年から78年初めにかけて,ツアーを行いながらディヴォート(ヴォーカル),マッギオーク(ギター及びサクソフォン),アダムソン(ベース),フォーミュラ(キーボード)とマーティン・ジャクソン(ドラムス)のラインナップとなったグループは,78年の3月と4月にかけてファースト・アルバム制作のためのセッションをヴァージンの移動式スタジオやアビイ・ロード・スタジオを使いながら始めた。アルバムのプロデュースとエンジニアリングはジョン・レッキーが行った。

リアル・ライフリアル・ライフ
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マンチェスターことはじめ(2) 「Boredom」(バズコックス 1977年1月29日=EPリリース)


Spiral Scratch EpSpiral Scratch Ep
519円
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Boredom (Howard Devoto / Pete Shelley)



Yeah - well - I say what I mean
ああ,まあ,思ってること言うとすれば
I say what comes to my mind
思いついたら言うかもしれないけど
I never get around to things
そんなところまで辿り着きそうもないね
I live a straight - straight line
真っ直ぐに生きてるもんで,単純直線にね

You know me - I'm acting dumb
分かってるんだろ,ぼくが阿呆を演じてることが
you know the scene - very humdrum
そんな光景は見知っているだろ,酷い単調さを
boredom - boredom
それは退屈,退屈な人生ってヤツだ

I'm living in this movie
でぼくはこの人生って芝居に登場しているらしいんだが
but it doesn't move me
まったく感動のカケラってのもないぜ
I'm the man that's waiting for the phone to ring
目の前の電話が鳴り続けるのをじっと待ち続ける役さ
Hear it ring-a-ding-a-f***ing-ding
そいつがク*みたいにリンリン鳴り響くのを


You know me - I'm acting dumb
分かってるんだろ,ぼくが阿呆を演じてることが
you know the scene - very humdrum
そんな光景は見知っているだろ,酷い単調さを
boredom - boredom
それは退屈,退屈な人生ってヤツだ

You see there's nothing behind me
ぼくの後ろには何もないことなんて君だってお見通しだろう
I'm already a has-been
ぼくは既に終わった人であり続けるのさ
my future ain't what it was
将来なんてものはそうあってほしいものとは全然違ってて
well I think I know the words that I mean
ぼくは自分が口走っている言葉の意味はちゃんと分かってるぜ

You know me - I'm acting dumb
分かってるんだろ,ぼくが阿呆を演じてることが
you know the scene - very humdrum
そんな光景は見知っているだろ,酷い単調さを
boredom - boredom
それは退屈,退屈な人生ってヤツだ

B'dum - b'dum
タックツ,タックツ

I've taken this extravagant journey
ぼくはこうして壮大な人生の無駄遣いをしてるんだが
so it seems to me
ぼくにはそうとしか思えないんだが
I just came from nowhere
ぼくはどこから来たものでもなければ
and I'm going straight back there
元の場所に戻るものですらないらしい

You know me - I'm acting dumb
分かってるんだろ,ぼくが阿呆を演じてることが
you know the scene - very humdrum
そんな光景は見知っているだろ,酷い単調さを
boredom - boredom
それは退屈,退屈な人生ってヤツだ

So I'm living in this movie
それで僕はこの人生とかいう芝居に出ているらしいんだが
but it doesn't move me
まったく感動のかけらもない芝居にさ
so tell me who are you trying to arouse?
それなら誰が君をその気にさせるのか教えてもらいたいものだ
get your hands out of my trousers
で,きみの手がぼくのボトムスをずり下げてくれることにでもなるのならね

You know me - I'm acting dumb
分かってるんだろ,ぼくが阿呆を演じてることが
you know the scene - very humdrum
そんな光景は見知っているだろ,酷い単調さを
boredom - boredom
それは退屈,退屈な人生ってヤツだ

☆ 「Boredom」はディヴォートが歌って初期パンクスのアンセムのひとつになったが,歌自体はその後のピート・シェリーが歌い続けるバズコックスの曲の原型でもある。ディヴォートは言葉でシェリーは音とスピードで彼等の考える「パンク・ロック」のフォーマットを完成した。それはインディー盤という制約を超えて成功の域に達した数少ない作品であったが,このパンクというフォーマットはディヴォートの思惑の外にしかなかった。それで彼はバズコックスというよりパンクという刹那的シーンを「脱退」することになる。
(続く)※次回連載までしばらく間が空きます

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Author:deaconblue
「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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