2018-02

「The Queen Is Dead」 (ザ・スミス 1986年6月16日=アルバムリリース)




初出:2007年8月29日

The Queen Is Dead (Morrissey / Johnny Marr)


(Take me back to dear old Blighty)
(A.J. Mills / Fred Godfrey / Bennett Scott)
Oh ! Take me back to dear old Blighty,
おお,私を偉大なこの祖国に帰したまえ。
Put me on the train for London Town,
わたしを大ロンドンへ戻る列車に乗せたまえ。
Take me anywhere,
どこからでも拾い上げ
Drop me anywhere,
どこにでも戻したまえ。
Liverpool, Leeds or Birmingham
リヴァプールでもリーズでもバーミンガムでも 。
But I don't care,
だが私は気にしない。
I should like to see my ...
私が...

I don't bless them
あたしにはそんなこと祝福できないわ。

Farewell to this land's cheerless marshes
この陰鬱な沼地にさようなら。
Hemmed in like a boar between arches
去勢された雄豚のようにアーチのなかに閉じ込められて,
Her very Lowness with a head in a sling
彼女はまるで頭を三角巾で吊るしているように落ち込んでいる。
I'm truly sorry - but it sounds like a wonderful thing
まったく難儀なことで - でもなんだか素敵なことのように響くのはなぜ。。。

I said Charles, don't you ever crave
あたしは言ったの「チャールズや,そんなに出したいのかい。
To appear on the front of the Daily Mail
デイリー・メールの一面トップにその写真をでかでかと,
Dressed in your Mother's bridal veil ?
あなたのお袋様の結婚式のベール姿で。。。
Oh ...
ああ...なんて姿。

And so, I checked all the registered historical facts
そしてそう,あたしはすぐ調べたわよ。似たような歴史的事実がどこかに載っていないかって。
And I was shocked into shame to discover
あたしはそれがあったのを見つけて,ビックリして恥ずかしさで真っ赤になったの。
How I'm the 18th pale descendant
あたしったら18世紀の何だか知らないけど遠い親戚の末裔に名前が載っているのよ!
Of some old queen or other
同じくらい古い女王様(エリザベス1世)だかなんだかの。

Oh, has the world changed, or have I changed ?
ああ,世の中が変わってしまったの?それとも変わったのはあたし?
Oh has the world changed, or have I changed ?
世の中とあたしのどちらが変わってしまったの?
Some 9-year old tough who peddles drugs
9歳児が立派にも薬の売人をやっている国なんて,
I swear to God
あたしは神かけて誓うわ。
I swear : I never even knew what drugs were
神かけて誓う:あたしが9歳の頃には,そんな薬があったことも知りませんでした。
Oh ...
なんなの...

So, I broke into the palace
だからあたしは心を決して宮殿に忍び入ったの。
With a sponge and a rusty spanner
その辺にあったスポンジと錆びついたスパナを握り締めて。
She said : "Eh, I know you, and you cannot sing"
女王はおっしゃいました「あら,わたくしは貴方のことを知っておりますわよ。貴方がマトモに歌えないことも一緒にね。」
I said : "That's nothing - you should hear me play piano"
あたしは申し上げたの。「陛下,そんなことにはお構いなく,あたしの弾くピアノをお聴きになって」

We can go for a walk where it's quiet and dry
それからあたし達は少しだけ散歩をしたの。外は静まり返っていて,足もとは乾いていたわ。
And talk about precious things
そしてあたし達はちょっとした高貴な会話を楽しんだの。
But when you're tied to your Mother's apron
でも貴方がお母様の膝掛けを結ぶ時分には,
No-one talks about castration
だれも去勢された件については語らなかったわね。
Oh ...
まあ...

We can go for a walk where it's quiet and dry
それからあたし達は少しだけ散歩をしたの。外は静まり返っていて,足もとは乾いていたわ。
And talk about precious things
そしてあたし達はちょっとした高貴な会話を楽しんだの。
Like love and law and poverty
愛や法や貧困についての高貴な話だったわ。
Oh, these are the things that kill me
ああ,その事実だけでもあたしの魂は奪われてしまいそう。

We can go for a walk where it's quiet and dry
それからあたし達は少しだけ散歩をしたの。外は静まり返っていて,足もとは乾いていたわ。
And talk about precious things
そしてあたし達はちょっとした高貴な会話を楽しんだの。
But the rain that flattens my hair ...
だけど,あの嫌な雨があたしの髪の毛にかかって,あたしの気分を萎えさせたけれど,
Oh, these are the things that kill me
ああ,それまでの出来事はあたしの魂を奪ってしまったわ。
All their lies about make-up and long hair, are still there
メイクアップや長い髪についてのウソ偽りは,まだその辺に残っているでしょ。

Past the Pub who saps your body
パブで精力を使いきって,
And the church who'll snatch your money
教会に行けば有り金合切召し上がられて。
The Queen is dead, boys
女王は死んでいるのよ,テッドの坊や達。
And it's so lonely on a limb
孤独でのっぴきならない状態なの。

Past the Pub that wrecks your body
パブで身体を駄目にして,
And the church - all they want is your money
あんたのお金だけが目当ての教会にいそいそと出掛けるなんて 。
The Queen is dead, boys
テッドの坊や達,あの女王は死んだも同然よ。
And it's so lonely on a limb
孤独でのっぴきならないのは,皆同じなのよ。

Life is very long, when you're lonely
孤独を感じるほど,人生は長すぎるの。
Life is very long, when you're lonely
孤独な人生は,長すぎるの。
Life is very long, when you're lonely
孤独者には,人生は長すぎるの。
Life is very long, when you're lonely
あたしにもおまえ達にもあの女王にも,この人生は長すぎるのよ。

2018年2月16日付記
☆ エリザベス2世(Elizabeth Alexandra Mary)は1926年4月21日に生まれ,25歳の1952年2月6日に即位した。それから34年後の1986年にザ・スミスはこの傑作をナパーム弾のように大英帝国に炸裂させた。それからさらに6年を経た1992年11月24日にギルドホールで開催された戴冠40周年のスピーチにおいてその年(1992年)を「ひどい年(annus horribilis)」と称した。2018年はその「ひどい年」から四半世紀以上を経ている。

☆ 『ザ・クイーン・イズ・デッド』が10年前の『ホテル・カリフォルニア』とは違う意味でその国のその時代を表現し尽した曲であることは言を俟たない。それは『ホテル・カリフォルニア』のスター・システムの監獄が「ハウス・オブ・カード」の虚業を示すように,『ザ・クイーン・イズ・デッド』の無力な怒りの告発は権威というものが示すものに対する底無しの憎悪を,どれほど攻撃的かつ美しく描き切れるかという闘いの記録でもある。
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「やさしく歌って(Killing Me Softly with His Song)」 (ロバータ・フラック 1973年1月21日)


やさしく歌ってやさしく歌って
(2013/04/24)
ロバータ・フラック

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初出:2013年7月3日(訳詩追加:2018年2月14日)

☆ 1972年と73年。歌の神様はロバータ・フラックを見出した。最初に起こった奇跡は彼女が1969年のデビューアルバムに収録した曲「愛は面影の中に(The First Time Ever I Saw Your Face)」がクリント・イーストウッドの初監督作品『恐怖のメロディ(Play Misty for Me)』に取り上げられ全米No.1に輝いたことだった。「愛は面影の中に」は1972年度のグラミー賞でRecord Of The Year(最優秀レコード賞)を獲得した。

☆ その年,ロバータは偶然飛行機の中であるメロディーに出会う。それはロリ・リーバーマンという女性歌手が歌った曲でリーバーマンの経験を元にノーマン・キンベルが詩を書き,チャールズ・フォックスが曲を書いた「やさしく歌って」という曲だった。Wikipediaの解説によるとリーバーマンが見たのは無名時代のドン・マクリーンだったという。

☆ この曲を気に入ったロバータは自らレコーディングし,シングルとして発表するとその僅か4週間後に曲は全米No.1に輝いた(1973年2月24日から5週連続)。そして彼女はこの曲で73年度のグラミー賞の3部門(最優秀レコード,最優秀楽曲,最優秀女性ヴォーカル)を独占するのである。長いグラミーの歴史の中で最優秀レコード賞を2年連続受賞したのは他にU2がいるのみである。


Killing Me Softly With His Song (Charles Fox / Norman Gimbel)



Strumming my pain with his fingers
わたしの痛みをそっとつま弾いて
Singing my life with his words
わたしの暮らしをその言葉で歌ってくれる
Killing me softly with his song
彼の歌がわたしをそっと癒してくれる
Killing me softly with his song
彼の歌がわたしをそっと癒してくれる
Telling my whole life with his words
わたしの人生を彼の言葉は語り尽してくれる
Killing me softly with his song
そして彼の歌はわたしをやさしく癒してくれるの

I heard he sang a good song
わたしは彼が素敵な曲を歌っているのが聞こえた
I heard he had a style
わたしは彼はステキな歌い手だと思ったの
And so I came to see him
だからわたしはそこに行った
To listen for a while
ほんの少しの間,彼の歌を聴きたくて
And there he was this young boy
そして彼はほんの少年のようだったのに
A stranger to my eyes
わたしの目には全然違ったヒトに見えたの

Strumming my pain with his fingers
Singing my life with his words
Killing me softly with his song
Killing me softly with his song
Telling my whole life with his words
Killing me softly with his song

I felt all flushed with fever
その時わたしは自分の顔が火照っていることに気付いたの
Embarrassed by the crowd
大勢の人の中で気まずく感じてた
I felt he found my letters
彼がわたしの彼への手紙を見つけて
And read each one out loud
そして彼はそれを朗々と読み上げているように感じていたの
I prayed that he would finish
わたしは思わず彼がその歌を早く終わらせてって願ったわ
But he just kept right on
だけどその歌はまさにその時,歌い続けられていたの

Strumming my pain with his fingers
Singing my life with his words
Killing me softly with his song
Killing me softly with his song
Telling my whole life with his words
Killing me softly with his song

He sang as if he knew me
彼はまるで私を知っているかのようにその歌を歌っていた
In all my dark despair
わたしの絶望の奥底の中までも
And then he looked right through me
そのとき彼の視線はわたしを真直ぐ貫いていたの
As if I wasn't there
あたかもそこにわたしがいないかのように
And he just kept on singing
そして彼はその歌を歌い続けた
Singing clear and strong
ハッキリと力強く,その歌を

Strumming my pain with his fingers
Singing my life with his words
Killing me softly with his song
Killing me softly with his song
Telling my whole life with his words
Killing me softly with his song

[Break]

Strumming my pain with his fingers
Singing my life with his words
Killing me softly with his song
Killing me softly with his song
Telling my whole life with his words
Killing me

He was strumming my pain
Yeah, he was singing my life
Killing me softly with his song
Killing me softly with his song
Telling my whole life with his words
Killing me softly
With his song

2018年2月14日付記

☆ ソフト&メロウという言葉がポピュラー・ソングの流行語になる遥か前から,この歌は永遠の生命を得ていたと思う。女のヒトのキラー・センテンス(殺し文句)に「やさしくして」というのがあった頃の話だ。有り体に言えば "Killing Me Softly" って,この「やさしくして」そのものなので,邦題は歌の本質を衝いている。彼女のシンガーとしての力量は[Break]のところに如実に出ているにもかかわらず,全体的にそれを抑えた(控えたと言えるかもしれない)ところもこの曲の価値を上げている。単調なフレーズの繰り返しに堕することなく,曲の余韻を徐々に深めていく。そこには少しずつ継ぎ足されていく感情が交(まじ)り合い,主人公の女性の心裡(心の内側)を「言葉(歌詩)ではなく,歌そのもので」感じさせていくのである。

☆ 冬の寒い夜にホットココアの温もりは身体に染み渡る。ロバータのこの歌はそんな感じがしませんか?

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「The Edge of Heaven(エッジ・オブ・ヘブン)」 (Wham! 1986年6月18日)


ザ・ファイナルザ・ファイナル
1,836円
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☆ ワム!の事実上の最後のシングルで,発売直後(6月22日)に1週だけ全英NO.1になった(マドンナの「パパ・ドント・プリーチ」に1位を譲っている)。1986年は英国のポップ/ロック・シーンが転機を迎えた時期だろうと思う。ニュー・ウエイブの時代が本当に終わり,クラブ文化がチャートの主体となっていく。彼らの解散(というよりジョージ・マイケルの単独化)がその流れに棹差した(加速したという意味)ことは間違いない。

The Edge of Heaven (George Michael)



☆ ジョージ・マイケルの才能は全く衰えておらず,むしろピークはやりたいことを全部やってしまったソロ1作目にあるのだが,ワム!というある意味「能天気ポップ」な無邪気さが翳りを持ちながらも最後までキープされていることには一種の感慨を覚えてしまう。もっとも「フリーダム」(1984年9月13日:英、85年7月:米)以降の「作品至上主義」にエピキュリアンであるアンドリュー・リッジリーは「自分の居場所」を悩む(当時のリッジリーなら「悩みを忘れさせるものへの依存」だっただろう)ことになる。この「分裂」はボーイ・ジョージとは違った悩みだっただろうと思うが,この時期にデュラン・デュランは緩やかに,スパンダー・バレエは急激に下降線を辿ったことも「この時代」の終わりを意味していたように思える。

☆ 時代は賑やかな「ビート至上主義(ZTT⇒ストック/エイトキン/ウォーターマン⇒ユーロビート)」かオータナティブを抜け出した「クラブ・ミュージック」,もしくはアトランティック・クロッシングして来た「ラップ/ヒップ・ホップ」に席を譲っていくのである。

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僕の彼女を紹介します(どこの映画の題名寸借じゃ!)内容変更あり




Breakfast In America (Richard Davies / Roger Hodgson)
Supertramp Breakfast in America live en paris 1979 HD


Take a look at my girlfriend
ぼくの彼女を紹介します
She's the only one I got
かけがえのないたった一人の彼女だよ
Not much of a girlfriend
大した話じゃないかもしれないけど
Never seem to get a lot
ぼくには得難いことなのさ

Take a jumbo across the water
ジャンボジェットに乗って大西洋を一っ飛び
Like to see America
アメリカさんを見に行くために
See the girls in California
カリフォルニアの素敵な女の子達を見てみなよ
I'm hoping it's going to come true
こんなお嬢さんたちとお近づきになりたくってたまらないね
But there's not a lot I can do
だけどぼくに出来ることなんて,ほとんど有りはしないのさ

Could we have kippers for breakfast
ニシンの燻製(キッパー)を朝食に出してもらえたら
Mummy dear, Mummy dear
ねえホントに,お願いだから
They got to have 'em in Texas
テキサスだったらいっぱい手に入るんだろ,それ
Cos everyone's a millionaire
だから皆んな百万長者になっちゃうんだ

I'm a winner, I'm a sinner
ぼくは勝者で,とんだ罪作り
Do you want my autograph
ここに署名して欲しいんだろ
I'm a loser, what a joker
ぼくは負け犬,とんだ道化者
I'm playing my jokes upon you
いつだってきみのことを弄(いじ)り倒してるのさ
While there's nothing better to do
他にすることが何もない時にはね

.....

Don't you look at my girlfriend  (Girlfriend),
ぼくの彼女を紹介されたくないのかい (彼女ねえ...)
She's the only one I got
かけがえのない,たったひとりのさ
Not much of a girlfriend (Girlfriend),
大した話じゃないかもしれないけど (彼女ねえ...)
Never seem to get a lot  (What's she got? Not a lot)
ぼくには得難いことなのさ
(彼女がどうしたって? それも大したこっちゃないんだろ)

Take a jumbo across the water
ジャンボジェットに乗って大西洋を一っ飛び
Like to see America
アメリカさんを見に行くために
See the girls in California
カリフォルニアの素敵な女の子達を見てみなよ
I'm hoping it's going to come true
こんなお嬢さんたちとお近づきになりたくってたまらないね
But there's not a lot I can do
だけどぼくに出来ることなんて,ほとんど有りはしないのさ

.....

☆ 「Breakfast In America」(1979年6月)は同名アルバム(1979年3月29日)からのセカンド・シングルとしてカットされた。全米ではファースト・シングルだった「ロジカル・ソング(The Logical Song 1979年3月)」ほどのヒットでなかったが(ビルボード最高位:62位(ちなみに「ロジカル・ソング」は6位(キャッシュボックスは4位))),英国では最高位9位とヒットした。Wikipedia(英語版)には記載がないが,本邦では日立の(どの製品か忘れたけど)CMタイアップがあって「かなり」ヒットした。ちなみにこのシングルに関する英語版Wikipediaにはこんな解説がある。

> The lyrics tell about a person who has never been to the United States, and fantasizes about it.
> 歌詩はアメリカに行ったことがないくせに,そのこと(アメリカ行き)を夢見ている人物について歌われている。

なるほど。

PERSONNEL
Roger Hodgson: piano, lead vocals, harmonium, electric guitar
Rick Davies: harpsichord, backing vocals
John Helliwell: clarinet, backing vocals
Dougie Thomson: bass
Bob Siebenberg: drums
Slyde Hyde: trombone, tuba

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ロックのことば(2) あの娘,本当に彼と行っちゃったの? (1964年)



☆ パンク/ニューウエイブ史上最大の「問いかけ」は,1960年代のガール・グループが発した。シャングリラス(The Shangri-Las)1964年No.1ヒットLeader of the Packの冒頭の問いかけ "Is she really going out with him?" である。
Leader of the Pack (Dee Snider)


☆ 1960年代にアメリカにヘルズ・エンジェルスがいたように,日本にもカミナリ族という暴走族の元祖がいた。さすがに70代で旧車會をなさっているご機嫌なシルヴァー人材がどの程度現存しているかは,ぼくも寡聞にして知らない。ただ直訳の「暴走族のリーダー」では当時の世相や交通警察関係のリアクションを見るまでもなく邦題としては些(いささ)か不適切であったので,「黒いブーツでぶっ飛ばせ」というやや無難なタイトルに落ち着いている。

☆ この曲の直前(1964年10月31日~11月21日)のNo.1がスプリームス(シュープリームス)のセカンド・ナンバー・ワン曲「Baby Love」なので,ガール・ポップの競演の感がある。ただ今回はシャングリラスの話ではないので,曲の作者が80年代に(こちらも)カルト的人気を誇ったハード・ロック・バンドのツイステッド・シスターを率い,セルフカヴァーしているなんて話も含めてここまでにしておきたい。

☆ 十二支で一回りした1976年,この囁きは大西洋を越えてロンドン・パンクを発火させる。言うまでもなくザ・ダムド「ニュー・ローズ」(1976年10月26日)冒頭の囁きである。

New Rose (Brian James)


☆ ローズは言うまでもなく英国(イングランド)を指し,そこだけ拡張すると一種の革命歌やプロパガンダと曲解されそうだが,ブライアン・ジェイムズがやりたかったのは単なる破壊であって,そこから先のことはクラッシュだとかストラングラーズ(やや怪しいが)に任せておけという感じだったのだろう。それにしてもプロデュースしたニック・ロウの英断(笑)で一切手の入ってない一発録りが「パンク」の本質を遠慮なく示しているのだが,デイヴ・ヴァニアンは何の思い付きでこのセリフを口にしたのだろうか?そしてこの囁きを聞いてそれをそのまま曲にしてしまった(1978年9月/再発:1979年5月3日)者がいる。ジョー・ジャクソンだ。

Is She Really Going Out with Him (Joe Jackson)


☆ ジャクソンは曲のモチーフとしてこのセリフを使っているだけだが,彼の音楽履歴から考えてもシャングリラズスのオリジナルは間違いなく耳にしていると思う。しかし曲を書くきっかけはどう考えてもデイヴ・ヴァニアンの囁きでとしか思えない。こうしてこの「問いかけ」はジャクソンのデビュー曲名としてパンク/ニューウエイブ史にその名を刻むことになったのである。

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「Goodnight Tonight」 (Wings 1979年3月23日)


220px-Wings_-_Goodnight_Tonight.jpg

Goodnight Tonight (Paul McCartney)


Don't Get Too Tired For Love
ぼく達の愛にもうウンザリだなんて思わないで
Don't Let It End
終わりをつけようなんてしないで
Don't Say Goodnight To Love
愛にさよならをなんて言わないで
It May Never Be The Same Again
そんな情けないことまた言い出しちゃダメだよ
Don't Say It!
それ言っちゃダメ!
Don't Say It!
Say Anything But Don't Say Goodnight Tonight
今夜は何を言っても構わないけど
さよならだけは言わないで

Don't Say It!
Don't Say It!
Say Anything But Don't Say Goodnight Tonight

Don't Say It!
Don't Say It!
You Can Say Anything But Don't Say Goodnight Tonight

Don't Say It!
Don't Say It!
Say Anything But Don't Say Goodnight Tonight

Don't Say It!
Don't Say It!
Say Anything But Don't Say Goodnight Tonight

Don't Get Too Tired For Love
Don't Let It End
Don't Say Goodnight To Love
It's A Feeling That May Never End

Don't Say It!
Don't Say It!
Say Anything But Don't Say Goodnight Tonight

Don't Say It!
Don't Say It!
Say Anything But Don't Say Goodnight Tonight

Don't Say It!
Don't Say It!
You Can Say Anything But Don't Say Goodnight To

☆ ポールもついにディスコ(でかかる曲)やっちゃったのか!というのが当時のリスナーの素直な感想。特にイントロや間奏のスパニッシュ風のギターソロは思わず「サンタ・エスメラルダ!(爆)」という反応もあった(再爆)。でも彼の創る曲は本当に分かりやすいポップなものだった。

☆ PV見てると,なんだかサザンオールスターズがやりそうなことを先取り(サザンはこの頃新曲「いとしのエリー」をリリース)してたみたいな気がする(笑)。でもこの曲にはどこか「お遊び感」があって,どことなく軽さを感じる。たぶんそれはポールが「時代の音」を意識した音創り(流行)にこだわったからだと思う(その反対「不易」の代表曲は77年の「Mull of Kintyre(夢の旅人)」)。訳詩もそれを意識してあちこちの曲の邦題などをさりげなく流用したりしてそれなりに遊んでみますた。

PERSONNEL
Paul McCartney - lead vocals, acoustic and electric lead guitars, bass, drums
Linda McCartney - harmony and backing vocals
Denny Laine - backing vocals, lead guitar
Lawrence Juber - backing vocals, lead guitar
Steve Holley - backing vocals, percussion

最高位
1位:カナダ(2位のものもある)、4位:全米(キャッシュ・ボックス)、
5位:全米(ビルボード)、全英、6位:豪州、ニュージーランド
9位:アイルランド、ノルウェー、24位:蘭、ベルギー、36位:西独
77位:日本(オリコン?)

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The Motors 「Dancing The Night Away」 (1977年9月9日)




初出:2011年2月21日
☆ モーターズはパブ・ロック・ムーブメントのバンド,ダックス・デラックスのニック・ガーヴェイとアンディ・マックマスターが中心となり結成されたニュー・ウエイブ・バンドである。彼等はヘヴィ・メタルのバンドと一緒のステージに立っても何の違和感もないギター・ポップ・サウンドを引っ提げてシーンに登場した。彼等の登場はニュー・ウエイブに「パワー・ポップ」という新しいジャンルを確立させた。

Dancing The Night Away (Andy McMaster / Nick Garvey)


☆ これは「オールド・グレイ・ホイッスル・テスト」でのライブ演奏だが,アルバムヴァージョンと寸分たがわぬ長さで演奏し切っている所が凄い。これが「パブ・ロック」で鍛えられた演奏だと言わんばかりで小気味良い。最初のアルペジオを弾いているのがガーヴェイで後のソロを弾いているのがブラム・チャイコフスキーである。

2018年2月2日追記
☆ ニューウエイブになった頃に「パワー・ポップ」というサブカテゴリがあった。モーターズはこのカテゴリの先駆者である。パワー・ポップという言葉は90年代にも音楽ジャンルとして存在したが,モーターズからスタートするこの時代のパワー・ポップはエルヴィズ・コステロのアトラクションズにしてもジョー・ジャクソン・バンドにしてもフォーピースのギター・ポップ・バンドと言った方が良いと思う。ただモーターズの音を作っていたアンディ・マクマスターは優れたキーボーディストでもあったので,モーターズ自身の代表曲はギターポップではない。それがバンドの寿命を縮めてしまったことは非常に残念なことであった。


☝ アルバムヴァージョンです。「オールド・グレイ・ホイッスル・テスト」での彼らの演奏が完全に「この音を再現しきっている」ことが良く分かると思います。(差し替え:2018年2月3日)

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「Come Back and Stay」 (Paul Young 1983年)




初稿:2008年12月1日

Come Back and Stay (Jack Lee)
※ 曲が始まるまで約40秒あります。


Since you've been gone
君が出て行ってしまってから
I shut my eyes
僕は自分の殻に閉じこもり
And I fantasize
あの日のことを思い出しているだけ
That you're here with me
君と一緒に暮らしていた日々
Will you ever return?
僕の元に戻って来てくれないか
I want be satisfied
君との満ち足りた暮らし
'Till you're by my side
僕には必要なんだ
Don't wait any longer...
もうこれ以上待つことは出来ないよ

Why don't you come back?
僕の元に戻ってきてくれないだろうか?
Please hurry, Why don't you come back?
お願いだから今すぐ,僕の元に戻ってきてくれないだろうか?
Please hurry...
お願いだから今すぐ...


Come back and stay for good this time
僕の元に戻って来て,あの楽しかった日々にもう一度
Come back and stay for good this time
僕の元に戻って来て,あの楽しかった日々にもう一度

When you said goodbye
君がさよならを告げた時
I was trying to hide
僕は何とかしてこの現実から逃れようとした
What I felt inside
僕の中で崩れていったもの
Until you passed me by
君が僕の元から去ってから
You said you'd return
君は戻って来ると言ったよね
You said that you'd be mine
君は私はあなたのものと僕に言ったよね
'Till the end of time
あれが最後だった,そしてそれからずっと僕は
Don't wait any longer!
まだ待ち続けるなんてもうこれ以上出来ないよ!

Why don't you come back?
僕の元に戻ってきてくれないだろうか?
Please hurry, Why don't you come back?
お願いだから今すぐ,僕の元に戻ってきてくれないだろうか?
Please hurry...
お願いだから今すぐ...


Come back and stay for good this time
僕の元に戻って来て,あの楽しかった日々にもう一度
Come back and stay for good this time
僕の元に戻って来て,あの楽しかった日々にもう一度

Since you've been gone...
君が出て行ってしまってから
I opened my eyes
僕は目が覚めた
And I realize
そして本当に分ったんだ
What we had together
僕達が積み上げてきたものの大きさが
Will you ever return?
だから戻って来てくれないか?
I'll have you change your mind
今なら君の心を変えてみせるから
If you won't stay mine
もし僕と一緒にいられなかったとしても
Just love me forever!
僕だけをずっと愛していて欲しいんだ!

Why don't you come back?
僕の元に戻ってきてくれないだろうか?
Please hurry, Why don't you come back?
お願いだから今すぐ,僕の元に戻ってきてくれないだろうか?
Please hurry...
お願いだから今すぐ...
Why don't you come back?
僕の元に戻ってきてくれないだろうか?
Please hurry, Why don't you come back?
お願いだから今すぐ,僕の元に戻ってきてくれないだろうか?
Please hurry...
お願いだから今すぐ...


Just come back and stay for good this time
僕の元に戻って来て,あの楽しかった日々にもう一度
Come back and stay for good this time
僕の元に戻って来て,あの楽しかった日々にもう一度
Come back and stay for good this time
僕の元に戻って来て,あの楽しかった日々にもう一度
Don't ever leave me...
どうかもう僕の元から去らないでくれ..

2013年4月26日
☆ 最初にポール・ヤングの名前を見たのは,Q-Tipsというバンドで1970年代末から80年代初めにかけての2Toneブームがデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズに代表されるノーザン・ソウルの復権とストレイ・キャッツやシェイキン・スチーブンスなどのネオ・ロカ(ビリー)・ブームを呼び込む時代だった。おそらくザ・ジャムの最終盤の活動もこれに影響を与えていたが,ダイアー・ストレイツの「悲しきサルタン」でマーク・ノップラーが描写したロンドンの「管楽器の入っているバンド」のシーンはその曲のヒットの頃には一つの潮流となっていた。

☆ とはいえQ-Tipsはデキシーズほどの成功を収めることなく解散し,ポール・ヤングはソロ活動を始め,ほどなくマーヴィン・ゲイのカバー「Wherever I Lay My Hat (That's My Home)」で1983年7月23日に全英No.1に輝く。この曲はそれに続くシングルとして発表され,全英最高位は4位。

2018年1月31日追記
☆ 音楽の流行も服飾やデザインの流行に似ていて,一定の周期を繰り返すという特徴があるように思う。その理由は温故知新ということで,自分の親の時代に流行っていたものが逆に目新しく感じるということだろう。そしてそこにはゼネレーションの差(進化と言うかどうかは評者次第だと思う)があるので当然アップ・トゥ・デイトされることになる(昨年の山中千尋によるセロニアス・モンクの音楽の解析のように)。

☆ そういう視点から70年代末の英国シーンを見た時,パンクはロックンロールの初期衝動(エルヴィスが自然と腰を回したようなこと)に回帰し,2Toneは60年代後半のカリプソ~レゲエ・ブームを再来させ(ほぼ同時期に米国ではサルサとマイアミ・サウンドがこの動きに同期している),ロックンロールへの本家返りはネオロカビリーになり,プログレッシヴ・ロックとグラム・ロックはニュー・ロマンティックスとネオ・グラムになり,電子音楽はテクノ/エレ・ポップを経てオータナティヴに至る。さらに言えばネオ何とかの類はネオ・モッズブームにまで呼び込んで,こういう状況を百花繚乱というのだろうが,とにかく面白いほど混とんとしていたのが当時の英国シーンだった。

☆ ケヴィン・ローランドが初期のデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズで提示したノーザン・ソウルの復権(New Soul Vision)も,彼らが出てきた2Toneの枠を超えて広がった。あとは2013年の解説に書いている通りで,マーク・ノップラーが「悲しきサルタン」で歌った「トランペットが演奏しているバンド」が全英No.1になったこと(デキシーズの「ジーノ」を指す)がポール・ヤングという英国の80年代を代表するブルー・アイド・ソウル・シンガーのひとりをシーンに押し出したのだから,ブームというものを甘く見てはいけないのである(個人的には彼とシンプリー・レッドのミック・ハックネルがこの時代の双璧であると思うし,この二人は間違いなくこの時代の「ブルー・アイド・ソウル」をアップデイトさせることに成功したと思う)。

最高位
No.1:ベルギー,西独,ニュージーランド,スイス、第2位:蘭
第3位:墺,アイルランド,ノルウェー、第4位:英国、第5位:仏
16位:スウェーデン、18位:豪州、22位:米国(ビルボードHot100)、29位:米(キャッシュボックス)、42位:カナダ

テーマ:Musically_Adrift - ジャンル:音楽

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「音楽っていいですね。そこには常に理屈や論理を超えた物語があり、その物語と結びついた優しい個人的背景がある。この世界に音楽というものがなかったら、僕らの人生は(つまり、いつ白骨になってもおかしくない僕らの人生)もっともっと耐え難いものになっていたはずだ。」(引用元:村上春樹「ポケット・トランジスタ」(『村上ラジオ』2001年6月8日所収))

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