2009-07

弔意なんかない,ただ思うだけだ。

☆ マイケル・ジャクソンの訃報は,午前7時に飛び込んだ。NHKのニュースだった。その時点で彼の死亡を確認したわけではなかったが,ぼくは確信した。これは訃報なんだと。

☆ これから便乗商売や著名人無名人音楽ファン業界人芸能人そのほかのコメントが花束代わりに手向けられることだろう。日本のどこかに献花台ができるかもしれない。それはそういうことだから仕方ない。彼はマイケル・ジャクソンとして生まれ,親の引いた(強いた)スター・システムに乗っかり,やがて独立し有能なプロデューサーと組み「世界を一時制した」。その代償として,彼は人生を奪われ,人格と私生活を奪われ,レゾン・デートルを奪われた。

☆ マイケル・ジャクソンが「マイケル・ジャクソンに所属する全てのもの」から,自分自身を遠ざけさせていたことは,ありがちなスター・システムの悲劇として類型化されるだろう。かつてフランキー・ライモンが辿ったように,あるいはジミ・ヘンドリックスやジム・モリソンやジャニス・ジョップリンやエルヴィス・プレスリーが辿ったように。そしてお決まりの「悲劇の伝説」が偶像化を極大させるだろう。

☆ そんなことではない。と叫ぶのは簡単だ。だが反面,等身大の彼など彼自身が捨て去ろうともがいていたものを探し回って穿(ほじく)り出しても,そこには風すら吹かないだろう。骨もなければ乾燥した砂粒すらないだろう。

☆ ぼくはただ思うことしかできない。彼はもうここにいない。それが彼にとって夢だったのか夢から覚めたことだったのか,ぼくには遂に分からないだろうが。

☆ あとはほかの人が勝手に騒いでいても,背を丸め,その脇をすり抜けていくだけのことだ。やがて次の「ニュース」が持ち込まれるまでの間。。。。。

テーマ:Musical_Adrift - ジャンル:音楽

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☆ アルバムヴァージョンはメッセージを簡略化するため,ギターとキーボードの作り出す渾沌は控えめになっている。ギターは時にバックでリズムを刻むかと思えば,いきなり正面に出てきてフレーズを弾く。キーボードはイントロでテンションを高めた後,一気に華やかに展開する。それをしっかり支えるベースと正確なドラムスが否が応でも散漫に成りそうなキーボードを引き締める。この1分余りの長いイントロに曲の世界が凝縮され,そこに抽象的な歌詞が短く添えられる。



I've got this bird's eye view
and it's in my brain
clarity has reared
its ugly head again
so this is real life
you're telling me
and everything
is where it ought to be

I like your nerve
I like watching you
but I don't watch what I'm doing
got better things to do
so this is real life
you're telling me
now I'm lost in shock
your face fits perfectly

☆ 音楽の手法としては,パンク由来の極めてタイトな部分とプログレ由来の長く複雑な部分が絶妙にブレンドされている。間奏の展開が長く続いてもそれに続く歌詞は最早存在せず,そのままコーダへとなだれ込んでいく。それは「再現性のある音楽」としてのロック的な手法を駆使しながら,極めてデザイン的でもある。この音楽はパンクの領域から離れ,プログレッシヴ・ロックよりも同時代的で「モダーンな音楽」の態様を示し出した稀有な作品なのである。

☆ 2009年に「再生産」されたマガジンのステージを「YouTube」で見ることが出来たのは僥倖である(なにせ一度も来日しなかったから)。たぶんその半分はノスタルジイの類であっただろう。でも,30年経ってこの音楽がちっとも古びていないことを自分は確認できた。それは良い事の少なかったこの連休の数少ない慰めになったような気がする。

テーマ:Review_Premiere - ジャンル:音楽

「Definitive Gaze」 (Magazine 1978年)=2=

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☆ 英国で1980年のシーンをリードするのは,オルタナティヴとヘヴィ・メタルだ。この両翼の間にコマーシャルなムーブメント(例えばニューロマンティックス→ストック・エイトキン・ウォーターマン/ユーロビート)やインディーズ(例えばヴァージン,スティッフ,チズウィック,ラフ・トレード,ファクトリー,2トーン,クレプスキュールなど)が百花繚乱となった。

☆ マガジンには「弾倉」という意味があるが,パンク的な直線から歪んだキーボードとかき鳴らすギター,それを黙々と支えるベースとドラムス,そして個性の塊のようなヴォーカルが渾然一体となり,平坦な初期衝動の壁紙を打ち破って新たな地平を示した。この作品の価値はまさに1969年のキング・クリムゾンの登場と対を成すものである。



=続く=

テーマ:Review_Premiere - ジャンル:音楽

「Definitive Gaze」 (Magazine 1978年)=1.01=

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(2007/06/27)
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☆ 3月に記事を書きかけて一時中断していたのだが,その前月に再結成ツアーが英国で行われていたようで,You Tubeにたくさん投稿がありビックリしている。オリジナルアルバムが出て31年経っているのだが,いまだにこの時代の最も重要な作品の一つだと確信している。そこで前回書きかけに戻り,レビューを行うことにする。

☆ マガジンという試みは,パンクの初期衝動とは無縁のものである。ハワード・デヴォートはピート・シェリーと喧嘩別れしたわけではなく,ピートがピストルズのギグを見て脳天をかち割られたことを反復することを望まなかっただけのことだと思う。

☆ マガジンのセカンド・アルバムは当時のプレスに酷評された。曰く「労働者階級のピンク・フロイド」だとか。そのピンク・フロイドは「ウイッシュ・ユーワー・ヒア」から「アニマルズ」を経て「ウォール」に向かいつつあった。両者の比較には意味は無い。ただマガジンを結成するに当たってデヴォートの描いた音のありようは確かに「プログレッシヴ・ロック」の方向性を持っていた。

☆ ブリティシュ・ロックの歴史におけるマガジンの功績はパンクとニュー・ロマンティックスを結ぶ線上にある。前者は衝動的・反抗的・原始的であり,後者は商業的・耽美的そしてポップである。そこには「窯変」が必要であり,それを果たした原動力が,このアルバムであり,アルバムタイトルを歌詞に含むオープニング曲,つまりこの曲である。

☆ マガジンのデビュー曲「Shot By Both Sides」は,バズコックス時代のアウトテイクと言って良い作品だが,そこで聴かれるものは当時の米「Rolling Stone」誌が「この年発表されたロックンロールの最高作品」に選ぶだけの価値はある。この一曲でマガジンはポスト・パンクの方向性を示した。

☆ しかし,彼らが進めた「音楽」は,このシングルさえ凌駕する。それはパンクとプログレとの直接的な結合であり,アメリカン・ハード・プログレに対するオルタナティヴとしての「新しい波(New Wave)」であった。

=続く=

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